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誰にも媚びない孤高のS級ヒロインが、最近なぜか俺にだけ優しいのだが ~ドS級美少女の瑛理子先輩は、俺が好きすぎてデレを隠し切れない~  作者: みなもと十華@3/25二作同時発売
第1章 瑛理子先輩は誰にもなびかない

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29/41

第29話 急展開

 学校に着いて席に座ると、すぐに小説投稿サイトを開いて、自作の評価ポイントを確認するのが俺の日課だ。

 何度もスマホを覗き込んでは、緩みそうになる頬を引き締めながら。


 フォロー58人、星が26、PVが1020か。

 ランキング常連からしたらたいした数字じゃないかもしれないけど、初めて書いた小説にしては良い方だろ。

 なにより、俺の書いた小説を読んでくれる人がいたのが嬉しい。


 最新コメントの通知もあった。


『不遇だった主人公が幸せになる展開に期待できます。次回も楽しみです』


 やった! 初コメントだ!

 返信しておこうか。


「ふあぁ……大崎、最近良い感じらしいじゃねえか」


 眠そうな顔の長瀬が、大きなあくびをしながら近づいてきた。


「まあな、初投稿の小説が、けっこう読まれててな」


 俺は長瀬にスマホの画面を向ける。


「ほう、意外と良い感じじゃねえか。まあ、俺が聞いたのは先輩女子のことなんだけどよ」

「お前、女のことばかりじゃねーか」

「人生の最重要項目だろ」


 長瀬は胸を張る。


「大崎、お前も素直になれよ。彼女欲しいんだろ?」

「ま、まあ、そうだけど」

「だろっ」


 長瀬は俺の耳に顔を寄せる。


「それで、万里小路先輩や望月先輩とはどうなったんだよ?」

「どうもなってないけど」

「お前なあ、せっかくのチャンスを……」


 長瀬が呆れた顔になった。

 まあ、俺も彼女が欲しいけど、瑛理子先輩は高根の花っていうか、手の届かない孤高の女王って感じだし。

 真美さんは、幼馴染のお姉さんから抜け出せてないんだよな。何か最近は、めちゃくちゃ過保護だし。


「大崎」


 ふと視線を上げると、長瀬が少し真面目な顔になっていた。


「やっぱり文芸部に入部して良かっただろ」


 その長瀬の顔には、『瑛理子先輩と出会えて良かっただろ』という意味と、『また執筆の情熱が戻って良かったな』という、二つの意味が込められているように感じた。


「まあな。何かに夢中になるのは良いよな」

「その調子で彼女作りにも精を出せよ」

「うるせえよ。そっちはマイペースでやらせてもらう」

「ははっ、そういや体育祭が近いな。出る種目を決めとけよ」


 そうだ、体育祭があるんだった。


 ガラガラガラ!

「お前ら早く席に着けー! ホームルームを始めるぞ」


 担任のたきみさお先生が入ってきた。今日もボディーラインがバッチリ出たスーツを着て、ムンムンとしたフェロモンで迫力満点だ。


「次のロングホームルームで出場する種目を決めるからな。覚えておけよ」

「「「ええーっ!」」」


 操ちゃん……じゃなくて、瀧先生の一声でクラスが騒然となる。

 文化系生徒の『えー!』と体育会系生徒の『よっしゃー!』とで。


 体育祭か。なるべく足を引っ張らない種目にしよう。



 ◆ ◇ ◆



「こんにちはー」


 部室のドアを開けると、長い黒髪を垂らしてうつむく瑛理子先輩の姿があった。


「えっ、ど、どうしたんですか、瑛理子先輩!?」

「あ、大崎君……」


 瑛理子先輩の表情は暗く沈んでいる。

 先日は書籍化の打診を受け、大喜びしていたはずなのに。


「何かあったんですか? 俺で良かったら相談に乗りますよ」


 俺は瑛理子先輩の近くの椅子に座る。

 創作者としての憧れでもあり、再び創作の切っ掛けを与えてくれた瑛理子先輩なんだ。何かの力になりたい。

 俺じゃ頼りないかもしれないけど。


「大崎君……どうしよう……」


 いつになく瑛理子先輩が自信なさげだ。はかなげな少女のように。

 それでも瑛理子先輩の瞳は、息を呑むほどに美しい。


「先日の打診だけど……先方から新たなメールが来たの」

「そ、それで」

「書籍化するには、紹介料として百万円を振り込むようにって」

「は!?」


 それって詐欺じゃないのか?

 SNSなどでフリーの編集者を装って、実際は編集でも業界関係者でも何でもないんだ。書籍化したがってる人にDMを送って、言葉巧みに金を要求する。

 ネットの噂で聞いたことがあるぞ。


「瑛理子先輩、それは振り込まない方が……。先方の身元を確認しないと」

「そうよね……」

「どのレーベルに関わっているのか聞いて、直接出版社に確認した方が良いです」

「それが……小説サイトや出版社経由じゃないの」


 瑛理子先輩がうつむく。


 やっぱりそうか……。出版社からや小説サイトを経由してなら安心できるけど、直接SNSのDMだと厄介だな。調べるにも調べようがないし。


「瑛理子先輩、ここは慎重になりましょう。大事な作品を任せるのなら、ちゃんと身元が確かな人でないと」

「そう……よね」


 瑛理子先輩は震える手でスマホを操作する。先方に確認のメールをしているのだろう。


「その人が例の人ですか?」

「ええ」


 俺は瑛理子先輩のスマホを覗き込む。


 SNSのプロフィール欄には、確かに『悪魔転生』や『幻想のアグリスタ』など、有名作品に関わっていると書いてある。

 だけど、アカウント名が本名じゃないから、実際に関わっているのか確認のしようがない。それに、フォロワー数も極端に少ないし。

 これは困ったな……。



 結局その日は解散となった。瑛理子先輩のメンタルが不安定だから。


「大丈夫ですか?」

「ええ、心配をかけたわね」


 俺に気丈な顔を見せる瑛理子先輩。しかし、その肩は小さく震えている。


「瑛理子先輩……」


 俺は誤解していた。

 凛として強い女に見える瑛理子先輩だけど、本当は一人の女の子なんだ。

 辛いことや悲しいことがあれば落ち込むし、一人きりじゃ前に進めないことだってきっとある。

 一人で戦えるほど強い人間なんて、いるはずがないのに。


 昇降口を出たところで、ひと際目立つ金髪女子が目に留まった。

 水泳部員から逃げているのか、辺りをキョロキョロしながら走っている。


「メアリー先輩、また部活をサボってるのかな?」


 俺がつぶやいたところで、メアリー先輩と目が合った。

 ニマニマと顔を緩ませたメアリー先輩が、こちらに走ってくる。


「やあやあ、二人揃って放課後デートかい? あたしも一緒したいところだよ」


 手をブンブン振って駆け寄る大きな女子を見ていると、この人も落ち込むことがあるのだろうかと考えてしまう。

 ちょっと失礼だったかな。


「って、どうしたんだい? 瑛理子の元気がないみたいだけど」

「今はあなたとふざけ合う気分じゃないの。お先に失礼するわね」


 そう言って、瑛理子先輩は一人で歩いていってしまう。

 俺は瑛理子先輩の背中に視線を送る。


「瑛理子先輩、俺も……」

「ここでいいわ。一人で考えてみたいの」

「そうですか……」


 瑛理子先輩が去ってしまい、ここには俺と気まずそうな顔をしたメアリー先輩だけが残った。


「えっと……あたし、何かしちゃった?」


 空気を察したのか、メアリー先輩は困った顔で頭を掻いた。


「先輩は悪くないですよ。ちょっと色々ありまして」

「そうだったのかい。早く元気になってほしいね」

「はい」


 メアリー先輩って、一見めちゃくちゃに見えるけど、実は良い人だよな。


「よし、ライバルが居なくなった隙に、あたしと放課後デートしようか?」


 ん? 良い人……なのか?


「って、ちょっと待った! やっぱり瑛理子が落ち込んでる時に、あたしだけ楽しんでるのは気が引けるよな」


 やっぱり良い人だった。


「あたしってさ、敵に塩を送る信玄公だからさ!」

「それ上杉謙信です。逆ですよ」

「えっ、そうだったの? 武田信玄だと思ってたよ!」


 おバカな人だった。メアリー先輩。



 ◆ ◇ ◆



 帰宅し、夕食と風呂を済ませた俺は、部屋でパソコンと睨めっこしていた。

 執筆しようにも、瑛理子先輩が気になって筆が乗らない。


「はぁ、大丈夫かな、瑛理子先輩……」


 さっきからずっと瑛理子先輩のことばかり考えてしまう。もう重症だ。

 俺の中で瑛理子先輩の占める割合が、こんなにも大きくなっていたなんて。


 ピロロピロロピロロ――


「うわあっ! って、電話か」


 突然鳴り響いた電話の音に驚いた俺だが、画面を覗いてもう一度驚いた。


「瑛理子先輩!」


 電話の主は瑛理子先輩だった。

 俺は慌てて画面をスワイプする。


「は、はい、大崎です」

「大崎君……もうダメ……私、書けない……」


 電話の向こうの瑛理子先輩は、今にも消えてしまいそうな声だった。


「せ、先輩! 今、家ですか? すぐに行きます!」


 俺はスマホを片手に家を飛び出した。

 なりふり構わず、一直線に先輩のマンションへと。



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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

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ブレイブ文庫 第1巻
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