第14話 大崎凛の悶々1
はぁい、私立丸木戸学園の四大S級女子、気さくなお姉さん系担当、大崎凛でーす。
って、誰よ、こんな恥ずかしい称号を付けたのは!
男子ぃいいっ!
そんな訳で、この私、大崎凛は学校でモテまくっている。
どのくらいモテるかと言えば、毎週のように後輩男子から告白されるくらいモテると言えば理解できるでしょ。
憧れのお姉さんキャラって感じかしら。
ちなみに、四大S級女子の残り三人は、更にキャラが濃い。
先ず一人、『孤高の女王様』こと、万里小路瑛理子。
絵に描いたような黒髪ロングストレートのお嬢様だ。
どの角度から見ても完璧な超絶美人。近寄りがたいオーラを出していたり、ドSっぽい言動が多いためか、男子からは女王と呼ばれているわ。
私は正直なところ苦手なんだけどね。
そして二人目、『金髪ボーイッシュ』こと、黒森芽亜莉。
アメリカ人ハーフとのことで、ひと際目立っているブロンドヘアーの美少女だ。
そこらの男子より高い身長と、ムチムチとしたド迫力の肉体で、一部のファンから絶大な人気を誇っているわね。
よく男子が『恵体さいこー!』とか『おっぱい』とか『巨尻に踏まれたい』とか話題にしているようね。
そして最後に、『天使のお姉さん』こと、望月真美。
私の親友よ。
おっとりした雰囲気と優しい性格で、男女問わず幅広い人気があるわね。
真美とは幼い頃からの幼馴染で、よく弟の俊と三人で遊んでいたの。
ただ……普段は優しくて良い子なのに、俊のことになるとガチでヤバくなるんだけど。
「ねえ、凛ちゃん。ねえねえ」
ハッと我に返ると、目の前で真美が両手を合わせてお願いしているところだった。
そうそう、今日は私の部屋で真美と遊んでいるのよね。
「ねえ、凛ちゃん聞いてる?」
「えっと、何だっけ」
「だからね、俊くんの私物が欲しいなって」
ん!?
何を言っているのだ、目の前のマイフレンドは。
「あのね、使い古したシャツとかでいいんだけど」
ああぁ、前からヤバい女だと思ってたけど、いよいよ危険水域に入ってしまったのか、マイフレンドよ。
普段は本当に良い子なのに。
「えっと、因みに聞きたいのだけど、それ何に使うの?」
恐る恐る聞いてみた。
いや、聞くべきじゃなかったんだ。それを聞いたら後悔することになるのに。
しかし真美は悪びれる様子もなく、真顔で答えるのだった。
「えっとね、いつも寝る時とかに、俊くんを感じていたいな♡ な、なんてね♡ でも本当は下着が欲しいけど……きゃっ♡」
ああ、マイフレンドよ。キミはどうしてド変態なんだい。
前から怪しいと思ってたんだよ。
俊を見つめる目がネットリしてたし。ジッと凝視しては舌なめずりしてたし。たまに敏感な場所を押さえながら身震いしてたし。
それ完全に危ない人だよ!
「ねえ、ダメかな? 凛ちゃん」
真美が上目遣いになる。
その顔に弱いんだよ。こんな可愛い仕草されたら、誰だってイチコロだろ。
女の私でもグラッてきそうになるのだから、男子だったら百発百中だよね。
「う、うん、探しとくね」
「ありがとう、凛ちゃん。好きぃ」
「わ、私も好きだよ。真美」
「それでね……」
モジモジと前で指を合わせ始めた真美が、チラチラと私の顔を伺う。
「できたら未洗濯が良いな♡」
「ブフォッ!」
やっぱりド変態だった。
使用済み衣類をクンカクンカするくらいなら、直接本人に告白しろよって思うけど。
正直なところ、俊は誰にも渡したくない。だって、俊は私のモノだから。
ちょっと待て、決してブラコンじゃないからね。
でも、真美なら俊と付き合っても良いかなって思ってたのよ。
子供の頃から仲が良い親友だからね。
でも…………。最近の真美を知ると心配になる。俊の貞操が……。
だって真美ってさ、女の情念とか性欲を濃縮して百倍くらいにした感じがするんだよ。
胸が大きくてエッチな体してるけど、性格も絶対エッチだよね。
パッと見は清純派なのにさ。
「そういえば万里小路さんとはどうなったの?」
私が彼女の名前を出すと、真美の雰囲気が一瞬で変わった。ドロドロとダークオーラが漏れ出ているように。
「聞いてよ、凛ちゃん。この前ね、万里小路さんが俊くんを部屋に連れ込んでたんだよ」
「へ、へー」
背筋が凍った。真美の目がマジだから。
「許せないよね。私の俊くんを部屋に連れ込むなんて」
「で、でも、文芸部の活動でしょ」
「うん、執筆道具を貸してくれるって話だった」
「なら問題無いよ。万里小路さんって男嫌いだし」
それとなく穏便に済まさねば。真美が暴走したら血の雨が降りそうだから。
「でもでもぉ、ズルいよね。俊くんと一つ屋根の下なんて。私だって二人きりになれてないのに。子供の時は除いてさ」
そう話す真美の目が据わっている。ヤンデレヒロインかな?
「ほら、今度は真美が誘えば良いじゃん」
「えへへっ♡ じゃーん! 実は今度、俊くんとデートするのです」
真美が両手を広げ、大袈裟なリアクションをした。
「へえ、良かったね」
「一緒にケーキを食べに行ってね。それでね♡ ほ、ホテル……とか? きゃっ♡」
おいおい、頭の中がピンクだよ。真美さんよ。
「勝負下着で行かなきゃ。俊くんって、どんな下着が好きかな?」
「何でも好きだと思うよ。綿パンからTバックまで」
「困るよぉ♡ Tバックで踏んだらモロだよぉ♡」
ギクッ!
「ま、真美、踏むって?」
「万里小路さんが言ってたの。俊くんは踏まれるのが好きだって」
「ああ、そっちのこと……」
「そっちって何?」
「なな、何でもない」
私が毎朝踏んでることかと思ったじゃない!
てか、万里小路さんも俊を踏みたくなるの?
「もしかして、万里小路さんは踏んでるのかな? 俊くんを踏むなんて許せないよね。早く抹殺しないと」
真美の一言で私の体に戦慄が走った。
待って、待って、待ってぇええ!
私が俊を踏んでるのを知られたら抹殺されちゃう!?
大丈夫だよね? 親友だし!
でも、先日も学食で万里小路さんに詰め寄ってたし。彼女のことを話す真美の目がガチだし。
ああぁ、俊! もう真美と付き合ってあげてぇ!
振り回されて私の胃が痛くなるんだけど!
「あのさ、真美、さすがに抹殺はヤバいと思うよ」
「やだなぁ、冗談だよぉ」
「だよね。抹殺はしないよね」
「うん、撲殺はしちゃうかもだけど」
それもダメぇええええええええ!
そもそも俊が真美の気持ちに気づいてあげないのが悪いのよ! 何年も前からずっと真美はスキスキオーラを出してるでしょ!
何で分からないかなぁ! あの鈍感男!
人の気も知らないで彼女つくるとか言ってたし!
あんたが他の女と仲良くすると、私の周りが修羅場確定になっちゃうんだからね!
こうして、今日も今日とて、私は真美が暴走しないようになだめているのだった。
「はぁ♡ 俊くん食べちゃいたいな♡ デート楽しみぃ♡ それには他の女を駆除しないとね♡」
真美ぃいいいいぃ! ストップぅーっ!




