消えた凶器、脱衣所殺人事件
「し、死んでる!」
血まみれの床を見つめる者達。横たわる男。
「触らないで!」
「あんたは……?」
「私は布無丸葉探偵だ。犯人はこの中にいる。この事件、私が丸裸にしてやりますよ!」
タイトル【消えた凶器、脱衣所殺人事件】
「ガイシャは露出狂人、死亡時刻は昨夜0時8分……語呂合わせで言うとまっパ……か」
被害者を囲み集まる容疑者達。偶然居合わせた丸腰刑事がその場の人を止め、応援が到着するまでに出来る限りの調査を進めていた。
「丸腰刑事、死因は分かりましたか」
「出血多量……だが」
「凶器が、無いと」
被害者の下には大量の血が流れており、ひと目で致命傷に至るものだと分かった。だが、肝心の凶器がそこに無い。
「じゃあ、凶器が見つかれば証拠としては十分ですね」
「見つかれば、な。こりゃあ、1人ずつ聞き込みが必要か」
1人目の容疑者は従業員。第1発見者である。
「私が見つけた時にはもうこの状態で……見てのとおり凶器は持っておりません。確かに被害者は清掃時間にも関わらずダラダラ長湯して注意しても一向に出る気配が無くちょっと口論になり、諦めて一旦出て戻ってきた時にこんな事になっていた感じですが、私はやってません!」
「動機は割とあるが……」
「他の人にも聞いてみましょう」
2人目は被害者の友人。直前まで一緒にいたが、部屋に物を取りに行っている間に事件が起きたという。
「確かに友人には借金をしていて、死ねば踏み倒せると思ったこともありますが……奴は大事な友人です、そんな事をする訳ないでしょう!」
「温泉旅行する金があるんだったら借金を返せ」
「今回の旅も全額出して貰ってます」
「クズだな……だが、決め手に欠ける。最後の容疑者に聞いてみよう」
本当はもっと出すはずだったが、尺の都合上最後となってしまった3人目の容疑者は騒ぎを聞きつけてやってきた、偶然脱衣所に居ただけの男。
「私はただ居合わせただけで……確かに、何の偶然か彼はうちの親の工場を潰し、婚約者まで寝取った男だ。ですが元々工場は上手く行ってなかったし、私が立ち上げた新規事業が大成功して、その婚約者もただの結婚詐欺だったのでプラマイゼロですよ」
「うーむ、偶然居合わせたにしては出来すぎているが動機が微妙だな」
「なるほど、分かりました」
「もう分かったのか?!」
「ええ。文字数の都合で。この事件……逮捕されるべきはあなただ、頭にパンティを被ってブラジャーとブルマを着用し、亀甲縛りの被害者の友人!」
「?!」
「なんてこった、そんなに怪しい格好をしていたなんて……全然気が付かなかった」
「証拠は何処にあるんだ!」
「事件の発端はこうです。被害者と友人は金の貸し借りを超えた間柄……そう、変態仲間でした。2人は男湯と女湯が切り替わる隙を狙って女湯に侵入しようとした。ですが友人が装備を忘れて部屋に戻っている間に従業員と口論になりました。恐らく彼は隠れる事はせず、堂々と切り替わり時間も居座り、何か問題でも? と乗り切ろうとしたのでしょう」
「それなら、犯人は第一発見者では」
「いえ、犯人は……露出さん、貴方自身です」
「ああ。そうだ」
むくりと起き上がる露出に一同驚愕した。
「い、生きていたのか! というかその出血は」
「あまりに昂りすぎて鼻血がえらい事になってしまい気絶していただけです。だが刑事さん、探偵さんの言うように我々は女風呂を堂々と覗こうとした変態です。さぁ、逮捕して下さい」
「狂人、お前……」
「どこまでも一緒さ、友人だろ」
「ああ!」
こうして、凶器も殺人も無い事件は2人の変態の逮捕によって幕を閉じた。丸腰刑事が手錠を忘れた為、友人の被っていたパンティを二人の手にかけて連行していったそうな。




