プロローグ
・人生はサッカーであり、サッカーこそが人生。
by マラドーナ(元アルゼンチン代表)
「マイボール!」
「ボイ! ボイ!」
「パス! 早く」
いろんな人の声が響き渡るフィールド。その中では一つのボールを奪い合っていた。
実力が均衡するチーム同士の試合のためか、どちらもゴールが中々奪えずにいた。そんな試合をしてる最中、俺は出番を待ち、ストレッチを入念にする。
すると突然、俺は監督に呼ばれ、その声に反応して俺は監督の方へと向かった。
途中、同じように出番を待っている仲間に肩を叩かれる。
「頑張ってこいよ!」
「期待してるぜ!」
そんな短い言葉が心地いい。俺は、はい、と短く答える。
監督のところまで行くと、やはり選手交代のようだ。もちろん俺が出る。
ピッチ内の審判に声をかけ、丁度ボールが外に出たのをきっかけに、試合を止め交代を指示された選手を外に出るように促す。
俺は出ていくチームメイトとタッチをする。すると出て行くチームメイトは息も絶え絶えに俺に声をかけてくれる。
「後は…、任せた…」
その声からは悔しさが滲み出ていた。表情を見なくても分かるくらいに。ただ俺は、はい、と答える事しか出来なかった。
そして思いを受け止めた俺はピッチに足を踏み出す。
---ドクンッ
瞬間、心臓が高鳴り、体中を駆け巡る血液が沸き立つような感覚が襲う。
足が思うように動かない。心臓の鼓動も休まる事を忘れたようだ。
このままではいけない。そんな事を思えば思うほど、思うように動けなくなっていく。
「大丈夫か~?」
そんな声がしてくる。
「やってやろうぜ! 隼ちゃん!」
また他の奴が声をかけてくる。
不思議とその声が聞こえてくると、体の緊張が解れてくる。
仲間の声が俺を一人じゃないと教えてくれて、不安が無くなっていく。
「はい!」
心の底から出した声は、思いのほか大きな声となった。
相手選手の困惑したざわつきと、仲間達の笑い声が聞こえてくる。
俺は少し恥ずかしくなった。
---でも、もう大丈夫。
審判が笛を鳴らし、試合が再開される。
途中からの出場だから、俺に残された時間は少ない。それだけは残念だ。
でも今はこうやってサッカーが出来る事が嬉しい。
すると俺の足元にボールが早速転がってくる。同時に迫ってくる相手の選手の声や気配も感じた。
---邪魔するなよ。今俺は嬉しいんだ。
でも俺はそんな事気に留めず、ボールを止めて指示を待つ。
「隼! そのまま~!」
声が聞こえすぐに足を振り上げる。そしてそれをそのまま声のする方に振りぬいた。
ボールは気持ちのいい音を立てて飛んでいく。