青い空の住人
その日、夜空は再び「人類の空」となった。
かつては赤黒く燃え盛り、恐怖の色に染まっていた大気。だが今はーー澄み渡る群青に、無数の星々が宝石のように瞬いていた。
そして、世界中の街で同時に花火が打ち上げられた。
破壊と絶望に覆われていた都市の上空に、赤、青、緑、黄金……色とりどりの光が咲き乱れる。爆ぜるたび、人々の顔が照らされ、その頬を流れる涙が光を反射した。
「見て……夜空に色が戻った!」
子どもが叫び、母親が抱きしめながら泣いた。
「やっと……やっとここまで来たのね」
老いた兵士が拳を握りしめて言った。
「守るべきものは……確かに残っていたんだ」
その横で、かつて避難民として国境で絶望していた若者が、空を仰ぎながら声を震わせた。
「俺たちは生き延びただけじゃない……未来を勝ち取ったんだ」
花火はただの祝祭ではなかった。それは世界全体の「再生の証」だった。
かつて互いを罵り、裏切り、攻撃し合った国々の人々が、同じ空の下で同じ光を見上げ、同じ歓声をあげていた。
国境という線は、あの日の炎と共に消え去ったかのようだった。
「地球は死ななかった、、、」
国家サチの丘の上で、カイトが小さく呟いた。
その隣で妻が頷く。
「ええ。でも、それ以上よ。地球は“生まれ直した”のよ。あなたと、そして人類みんなの手で」
二人の言葉を背に、国家サチの市民たちは互いに肩を抱き合い、笑い、泣き、未来を語った。
「これからは奪い合いじゃなく、分かち合いの時代だ」
「科学は兵器のためじゃない。子どもたちの未来の笑顔のために使うんだ」
「もう二度と、この星を裏切らない」
ーーそう、人々は再び「青い星の住人」として歩み始めた。
あの青空は約束だ。過ちを繰り返さぬための誓いであり、新しい物語の始まり。
この物語はーー滅びかけた星と、それを救った一つの小さな国の物語である。
だが同時に、これは未来へと続く全人類の物語でもある。
そして、青空の下で子どもたちの笑い声が響くたび、その証は新たに刻まれていくのだった。
「地球のはみ出し者」〈短編〉に続く




