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新しい青空

数週間という短い時間が、地球をまるで別の惑星に変えてしまった。

かつて灼熱の地獄と化していた地表は、奇跡のように25度前後に安定し、焼け焦げていた大地に、最初の緑が芽吹き始めていた。


雨だ。


ある朝、国家サチの街に冷たい雨が降った。最初は誰もが幻だと思った。

しかし雲は確かに空を覆い、雨粒が土と頬を叩いた瞬間、人々は声にならない叫びを上げた。


「雨が……! 本物の雨だ!」

老人は震える手で天を仰ぎ、子どもたちは泥だらけになって地面を跳ねた。

母親は幼子を抱きしめ、「これは奇跡よ、あなたが生きて見ることができた奇跡よ」と涙を流した。


雨はすぐに川を作り、乾ききっていた海へと流れ込んだ。やがてその海は静かに揺れ、ゆっくりと息を吹き返すように満ちていった。


人々は瓦礫と化した街に木を植え始めた。

かつて高層ビルが立ち並んでいた廃墟の広場に、一本、また一本と若木が植えられていく。

「この木は、私の父のために」

「この苗は、亡くなった友のために」

人々はそれぞれの想いを込めて、土を押し固めた。


子どもたちは裸足になり、まだ柔らかな土の上を走り回った。笑い声が響き、瓦礫の隙間に花が咲いたかのように、街には久方ぶりの生命の音が広がっていった。


その光景を、国家サチの丘の上からカイトは静かに見つめていた。

頬を撫でる風は、もう焼けるような熱ではなく、心地よく涼しかった。


彼は深く息を吸い込み、その匂いを確かめるように呟いた。


「これが……俺たちが守りたかった地球だ」


その声はかすれていた。何度も諦めかけ、何度も死を覚悟した。けれど今、その全ての苦難の先に広がっているのは、青く澄んだ空と蘇りつつある大地だった。


彼の隣に立つ妻が、微笑みながら答えた。

「ええ。そしてーー」

彼女はゆっくりと、瓦礫の街に木を植える人々の姿を指差した。

「これからみんなで作り直す地球よ。誰かひとりのものじゃない、人類みんなの星として」


カイトはその言葉を聞き、しばし沈黙した。胸の奥に重く積もっていたものが、ようやく解けていくようだった。

彼は妻の手を握り返し、呟いた。

「ならば俺たちの役目はまだ終わらない。未来を……あの子どもたちに渡すまで」


彼らの頭上には、新しい青空が広がっていた。

それは、幾千年の人類史が失いかけたもの。

そして、全てを失った人々が再び見上げることを許された、希望そのものだった。



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