勝利
これはこの物語の最後のエピソードです。皆さんが楽しんでいただければ幸いです。
世界中のインターネットに、アメリカ合衆国議会が核兵器生産の増加を承認したニュースが流れた。
政府の決定は静かに、しかし確実に、全人類の未来に影響を及ぼしていた。
数十年前、1945年のあの恐ろしい日に、ゼンタイは、遠く離れた場所からその流れを見つめていた。
――あの日、広島と長崎に投下された爆弾が、すべての始まりだった。
その瞬間に生まれたのは、単なる破壊の痕跡ではない。
地獄との間にできた、微かで危険な裂け目だった。
今まではわずかな隙間しか開いていなかった。だから、ほんの少数の下位の悪魔しか地上に降りられなかった。
しかしその悪魔たちは、人類の社会の奥深くに潜み、世界の力を巧みに操っていた。
ジョン・オーホーソーン――かつての人間の顔をした存在も、そのひとりだった。
彼らの目的はひとつ。
世界中の核兵器の数を、ある「特定の数字」に到達させること。
ゼンタイはそれを、あの時すでに見越していた。
広島と長崎の空に立ち上るきのこ雲を、地球の未来を、そして裂け目の行方を。
日常の中の小さな幸福――安友やすとも、アナ、そしてその両親たち。
彼らの微笑み、会話、友情、愛情。
それを守るために、ゼンタイは動く。
世界を救うのではない。
救うべき人間だけを、光のもとへ連れ去るのだ。
ある朝、ゼンタイはそっと彼らの前に現れた。
「行こう。君たちは選ばれた。安全な場所へ――」
安友は目を見開き、アナは手を握り返す。彼らの両親はそばにいました
その瞬間、周囲の空気が震え、光が降り注いだ。
世界の終わりを告げる鐘の音のように、遠くで爆発音が連なり、裂け目が広がる。
しかし恐れることはない。
彼らの心には希望が満ちていた。
ゼンタイが導く光は、暗黒を切り裂く白銀の光。
ゼンタイは彼らを抱き上げ、天へと舞い上がる。
白きマントは月光のように輝き、風が舞い、まるで一幅のバロック絵画の中を進むかのようだった。
地上には悪しき人間だけが残された。
悪魔たちが待つ地獄で、彼らの魂は永遠に責め苦を受けるだろう。
だが、それもまた、世界の摂理である。
ゼンタイの目に映るのは、救われた者たちの顔。
安友やすとも、アナ、そして二人の両親たち。
彼らはまだ笑い、話し、互いを愛している。
その光景を見つめ、ゼンタイは静かに、確信する――人間の美しさは、絶望の中でも失われないのだと。
物語はこれで最終回です。読んでくださった皆様、この道のりを支えてくださり、本当にありがとうございました。ライトノベル作家になるという私の夢が、ついに叶うかもしれないと気づかせてくれました。希望を与えてくださった皆様に、心から感謝しています。




