グロテスク
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
核兵器生産を巡る議論の余韻がまだ議会を漂う中、アメリカ合衆国国防長官ジョン・オーホーソーンと、その弟子である副長官ミルトン・ウィルソンは、沈黙のまま議事堂を後にした。
若きミルトンは、ジョン・コットンを崇拝し、「マニフェスト・デスティニー」の理念を熱烈に信奉していた。そして、愛読書『風と共に去りぬ』の世界に浸りながら、現実の政治に胸を躍らせていた。
オーホーソーンは、政治討論以外ではほとんど口を開かず、冷たくも静かな存在感を放つ。歩むたびに、石畳の音がかすかに響くのみ。
ミルトンは、その背後から息を切らせながらも、心からの称賛を口にした。
「あの卓越した演説のあとなら、邪魔な平和主義者どももきっと消し去れるでしょう。」
オーホーソーンはただ、薄く微笑み、前方へと歩みを進める。
だが、ミルトンが知る由もない――オーホーソーンの喉奥には、何千もの人ならざる笑いが、密やかに蠢いていることを。
それは冷たく、獰猛で、時を待つハーピーの群れのように、解き放たれる瞬間を渇望している笑いであった。
世界の光に触れることのない暗黒の深淵から、静かに、しかし確実に、その牙を研いでいるのだ。
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