ロサンゼルスの朝、新たな出会い
これはこの物語の新しいエピソードです。皆さんが楽しんでくれることを願っています。
ロサンゼルスの朝は、ニューヨークよりも乾いていて、空がやけに広く感じた。
そしてその空の下を、ひとりの少年が全力で走っていた。
「うわ、もうこんな時間!? 初日から遅刻とか勘弁してくれよ……!」
ジャケットを片手に、リュックを揺らしながら駆ける少年の名前は、速見安友。
十六歳。両親は日本からの移民で、彼自身はニューヨークで生まれ育った。
そして今日から、ロサンゼルスの高校に転校することになっていた。
見慣れない住宅街、ヤシの木の並ぶ通り、朝の光に照らされたローカルの店。
すべてが新しくて、まだ馴染んでいない。
「Googleマップだとこの先だけど……っ!」
角を曲がったその瞬間──
彼は誰かと正面衝突してしまった。
「うわっ!」
「きゃっ!」
二人とも歩道に倒れ込む。
慌てて体を起こした安友は、衝突した相手を見て一瞬、言葉を失った。
金髪で肌の白い少女。
体格は豊かで、ふんわりとした雰囲気。アメリカ映画に出てくる“優しい隣人”のような印象で、制服のシャツが軽く乱れていた。
「だ、大丈夫!?」
安友が声をかけると、彼女は少し笑ってこう言った。
「ううん、私こそごめんね。走りすぎちゃって……遅刻したくなくて。」
「……俺も。転校初日なんだ。道に迷って……」
少女が手を取り、安友を立ち上がらせる。
制服を見る限り、どうやら同じ学校のようだ。
「それじゃ、急がなきゃね。じゃあまた、どこかで。」
「うん、ありがとう。」
そうして、二人はそれぞれ別の方向へ走っていった。
学校の門をくぐったときには、すでにチャイムが鳴り終わっていた。
受付の前で教師に止められ、遅刻者リストに名前を書かされる。
「遅刻者は10分、教室前の廊下で待機だ。」
仕方なく案内されたベンチに腰を下ろすと、背後から足音が聞こえた。
そして──隣に座ったのは、さっきの少女だった。
「……あっ」
「……あっ、また会ったね!」
驚いたような、でもちょっと嬉しそうな表情。自然と笑い合う二人。
「俺、速見安友。ニューヨークから引っ越してきたばかり。今日が初日。」
「私はアナ・ウェックヴィック。ロングビーチ出身だけど、この学校は今年から。ちょっと遠いから、よくギリギリになるんだ。」
「アナ……ウェックヴィック。なんか映画のキャラみたいだな。」
「そう? 君の名前も好きだよ。“安友”って、なんか落ち着く。」
「……へぇ、ありがとう。」
アナの微笑みに、安友は自然と肩の力が抜けた気がした。
数分後、先生が戻ってきて二人を呼ぶ。
彼らは立ち上がり、同じ教室へと向かって歩き出した。
──それが、二人の新しい物語のはじまりだった。
皆さんがこのエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードをすぐにアップロードします。