⑥
天之川想太(16)高二。本作の主人公?少なくとも中心人物。ヲタクでありおしゃべり。
御法川愛(16)高二。想太の恋人だったが、突然有名になり、二人は微妙な関係に。
四乃森朱里(17)高三。生徒会長。実は想太の恋を邪魔するために来た未来人。
槍ヶ岳ヒカリ(15)高一。インフルエンサーとしてフォロワー獲得に執念を燃やす。
小山内里菜(16)高二。イラスト絵師として、かなりの収入を既に得ている。
多賀康朗(17)高二。通称ガロ。想太の悪友。
⑥
「キリがないなぁ…飛ぶ鳥を落とすっていうか、昇竜っていうか、絞り込んでも絞り込んでも、新たなやつが湧いて出る…」
「実は会長、口悪いですよね」
想太が言うと、
「そう?まぁ、親が口悪かったからなぁ。ママは普通だけど、パパは興奮するとほんと、口悪くって」
「そうなの?アカリン会長とっても育ちが良さそうな感じなのに」
ヒカリはどうしても下の名前をもじりたいらしくアカリとヒカリって、ちょっとかぶってますよね♡と言って新たなあだ名を会長につけたようだ。
「アカリン会長の家庭ってどんな感じなの?てか、両親心配してません?娘が1人で過去に留学?するなんて。それとも未来では結構一般的なのかな?」
「うーん、まぁうちは自由主義だから…過去に行くのは一般的ではないかなぁ。未来でもまぁ、ハードルは高いっていうか」
普段歯切れがいい朱里も未来の話はあまりしたがらないようだ。話を畳むように、
「そういえば想太くんの方はどうなの?なんか怪しい人影はあった?」
想太の方を向く。
「それが…結構困ってるんですよね…パパラッチ風の男がひっきりなしに何人も出没したりしてて…見分けがつかないっていうか」
言いながら、保存した画像をいくつか画面に映していく。おかげで2時間どころか4時間もかかってしまった。
「ちょっと待ってね」
朱里は何やら操作をして、画像をAIに読み込ませると、
「なるほど…そうね…うん、身元がしっかりしてるのは除外しましょう…これでよし、と」
そうやって残ったのは1人の男だった。
つばのある帽子を被り、黒眼鏡をして、軽装だが手持ち三脚にスマホをつけている。
「こいつは、いわゆる迷惑系ね…たぶんストーカーとは違うんだけど…」
男のチャンネルを出すと、煽り常套のタイトルでサムネが埋められている。
・知らない奴は馬○!国民的アイドルの知られざる素顔!
・実はヤラセ?激辛ラーメン店で○○キンが撮影してるところに凸してみた!
「あー、こいつ知ってる…再生乞食で有名な奴なんだよね。ハーシーとかいう奴。たぶん学生なんだけど、有名人とかって煽りながら、実は遠くから盗撮してボカしてるだけのゴミ動画あげてるやつ」
「それにしては再生されてるような?」
「サムネで騙して、ある程度の秒数まで引っ張るんだよね、そうしたら再生回数は回ってるように見えるから。んで、ブーストでもしてんじゃないかな?バンされないギリギリで」
「ブースト?」
「再生数を買うことですよ。ちょっとグレーなプログラムとか回して再生数とかフォロワー売ってる業者がいるんすよ」
さすがヒカリは現役インフルエンサーだけあって、この手の話に詳しい。
「じゃあ、やっぱ除外して大丈夫かもね」
朱里が言うと、ヒカリは首を振って、
「いや、分かんないっすよ?最近行き詰まり感じてる奴って何するか」
「あ、ちょうど今、校門前うろついてますね」
それを聞いた想太は皆の制止も聞かずいきなり廊下に飛び出した。
「おい!」
校門前を怪しげな格好でウロウロしてるハーシーの肩を掴む。
「お前ここで一体何してるんだよ」
想太は意外と喧嘩っぱやいのだ。
ハーシーは一瞬怯えたような表情を見せたが、相手が高校生の想太だと分かると態度を一変させた。
「君こそなに?俺はただ普通に立ってるだけだぜ」
「じゃあ、なんでスマホ持ってんだよ、撮影してんだろ」
「君、年上に対して口の利き方も知らないの?頭悪いガキはこれだから。あ、あと生配信してるから変なこと言わない方がいいよ」
「高校の入口で生配信とか完全盗撮じゃないかよ、気持ち悪い奴だな」
「なんで?別に犯罪じゃないでしょ?」
言い争う2人に後から追いかけてきたヒカリが割って入る。
「犯罪ではないけど、肖像権・プライバシー権の侵害で損害賠償請求できるわ。あと、アカウント停止の申立ても可能よ」
「あれ?君見たことあるな。君も配信してたりするよね?だったら分かるでしょ?そんな迷惑かけてないじゃん」
「私がこの学校通ってるってバレたじゃん。十分迷惑よ!ほんとあんたみたいな迷惑系配信者がいるせいで、いつまで経っても配信者の地位が上がんないのよ」
「いや、自分から映りに来てそれはないでしょ。俺はただ春の日の穏やかな1日を配信したかっただけなんだから」
「な!なんて図々しい奴なの…」
ヒカリが呆気に取られていると、想太がスマホを奪おうとハーシーの持つ三脚に掴みかかる」
と、そこへゆっくり歩いてきた朱里が苦笑を浮かべながら手を叩く。
「はいはい、そこまで。想太くんてほんと短気なんだから。ヒカリちゃんも大丈夫よ。生配信できてないから」
そう言って手に持ったデバイスをヒラヒラ見せる。
きっと未来の端末で何かをしたのだろう、想太とヒカリは察して少し落ち着きを取り戻したようだ。
遠巻きに学校の生徒たちが騒動を聞きつけて集まってきている。
「おいおい、俺がそんなミスするかよ…?あれ?なんで?」
画面を見て配信されていないことに気づいたハーシーは混乱しているようだ。
「えっと、タイトルが『御法川愛の秘密の登下校に密着。バレるまで尾行します』ですって?ずいぶん穏やかな春の1日ね。一人の女子高生尾行して盗撮しようなんて、これ、ちゃんと訴えられるやつよね」
「なんの実力もないのに、いきなり有名になったんだ。少しくらいプライベート晒されても文句言えないだろ」
ハーシーはうそぶきながら、想太の方を見て、
「もしかしてお前、御法川愛の彼氏かなんか?必死だったもんな、さっき…知ってるか?あんだけ忙しいのもテレビ局のプロデューサーとか、大物芸能人と会食に連れ回されてるのが大半なんだよ。売り出すための仕込みで、枕営業だって…」
ガツンッ!
言い終える間もなく想太はハーシーのことを殴っていた。
「お前になにがわかる!御法川の頑張りを…」
続けて殴ろうとする想太を、朱里が背中から蹴っ飛ばす。
ドシーン!
想太もろともハーシーが地面に倒れ込む。
「バカ!ほんと考えなし!」
手を組んで仁王立ちになりながら、朱里が想太の背中を踏みつける。
「ちょ、何すんだよ」
喚くハーシーを無視して朱里は想太を見下ろしながら、
「想太くん、君は本当に分かってないね。こういうことしたら、逆に御法川さんに迷惑かかるの。これで、このくだらない配信者が逆恨みして、根も葉もないこと言い出したらどうするの?」
周りに集まった生徒たちがどよめいてるのを見て、
「チッ…場所変えるわよ」
舌打ちをして、朱里は足をどける。
立ち上がりざま、
「あんたも一緒に来なさい、さもないと…」
他の者には聞き取れない声で何かを囁くと、ハーシーは一瞬驚いたように目を見開いたが頷き、一緒にその場を去ることに合意をしたのだった。




