⑤
天之川想太(16)高二。本作の主人公?少なくとも中心人物。ヲタクでありおしゃべり。
御法川愛(16)高二。想太の恋人だったが、突然有名になり、二人は微妙な関係に。
四乃森朱里(17)高三。生徒会長。実は想太の恋を邪魔するために来た未来人。
槍ヶ岳ヒカリ(15)高一。インフルエンサーとしてフォロワー獲得に執念を燃やす。
小山内里菜(16)高二。イラスト絵師として、かなりの収入を既に得ている。
多賀康朗(17)高二。通称ガロ。想太の悪友。
「ねぇねぇ、想太先輩?」
報告会後に廊下でヒカリが想太を呼び止める。
「なんだよ、槍ヶ岳」
「ヒカリって呼んでくださいよ〜。名字だとなんか距離あるもん」
「あぁ、分かった分かった。で、ヒカリどうしたんだ?」
「想太先輩、私との約束覚えてます?動画撮影手伝ってくれること」
「え?俺そんな約束したっけ?」
「そりゃそうですよ〜、私がなんで先輩の元カノさんのことで手助けしてると思ってるんですか?そこはそれ、give and take ですよ」
妙に発音良く交渉をしてくる。
いつの間にか里菜もいて、なぜかちゃっかりコクコク頷いている。
言われてみればそれもそうではあるのだが。
「で、動画撮影ってなんかアイデアあるの?」
「まぁ、そこはそれ、ちょっと今からファミレスで作戦会議としけ込みませんか?もちろん先輩の奢りで」
そうしてなぜか2人に奢らされることになる想太なのだった。
ファミレスの席で、なぜか2人に挟まれるように座らされた想太は、なんとも落ち着かない気分でいた。
どうも想太は誰であれ、女の子の尻に敷かれるタイプらしく、控えめな里菜でさえ、
「小山内は向いの席に座ったら?」
「ヒカリちゃんが天之河くんの隣なら、私もこっちに座るね」
と有無もないのだ。
「そうか、里菜先輩もかー」
「そうだよ、ヒカリちゃん」
女子2人が何やらアイコンタクトをしている。
「まぁ、黙っていれば想太先輩は結構カッコいいと思いますよ」
「そうかな?私は天之河くんのおしゃべりなところも良いと思うな?」
「えーっと、なんの話かな?」
「いや、傷心の先輩を慰めてあげようかと思って」
「別に傷心じゃねーし、フラれてもないし、なんなら付き合ってすらなかったっぽいけどな…まぁ、今は生徒会長の言うとおり、御法川のこと守ることに集中するっきゃないよな…それより、ヒカリの交換条件について話そうぜ。バズる動画撮りたいんだよな?」
「さすが先輩、話が早い!まぁ、色々企画してるのはあるんだけど、やっぱ現役女子高生ってことを活かしてフォロワーと再生回数増やしていきたいわけですよ」
「そういえば、小山内は画像投稿サイトとかで結構人気あるよな?描いてみた動画とかも再生回数かなりあったような?」
「うん、私バイト代以上には稼いでると思う」
「マジ?それなのに俺の奢りなの?トホホ…」
「先輩、器がちっちゃいなぁ…私だって、それなりのインフルエンサーだから、収益はそこそこ上がってるよ」
「なんだよ、それならもう充分じゃないか、俺が手伝えることなんてあるのかよ」
するとヒカリは指を立て、
「チッチッチッ!お遊びの収益なんて続かないの!私は高校のうちにインフルエンサーとしての確固とした地位を築きたいの。それにはフォロワー100万人はやっぱり目指していかないと」
「今何人なんだ?」
「今は5万人」
「5万人!?それ、すごくないか?」
「まぁ、そこそこではあるかなぁ。でもそのくらいは結構ザラにいるよ。真面目な話、流行り廃りで何年かでアカウント廃れちゃったりするから」
「で、ヒカリはどんなことしたいんだ?」
「私はね、やっぱり本物志向でありたいの。最近の切り貼りしたような、みんな同じネタをフォロワーに向けてするような内輪に向けたのじゃなくって」
「それにしては現役女子高生を利用するって言ってなかったか?」
「もちろん、使えるものは使うよ。だけど、それはどっちかって言うと逆の意味。女子高生がこんなこと本気でやってます的なのがいいの。てか、みのりんの演技動画だって、そこのギャップでしょ?」
「たしかにそうだな」
「私、スゴい!してやられた!て思ったもん。で、本題なんだけど、、先輩!お願い!わたし、廃墟めぐりがしたいの!」
ヒカリが手を合わせて頼み込む。
思わぬ方向性に虚をつかれたところはあるが、
「廃墟…いいね…センスある…廃墟には夢がある、よね」
口を挟んだのはチョコレートパフェを黙々と食していた里菜だった。それに合わせて想太も、
「夢は、あるよな…たしかに、俺も好きだ…でも、ちょっとニッチ過ぎるんじゃないのか?」
「そんなことないよ、先輩。廃墟だって色々あるんだから。近所の空き家だって廃墟だし、ギリシャの神殿だって廃墟でしょ?」
「な、なるほど?そこまで広く廃墟を捉えているのか…」
「そうなんだよ、廃墟には生活やストーリーもあれば、歴史的側面もある。オカルトだって、そこに至るまでの考察とかを本気でしていけば、そこには民俗学的な意味もあるかもしれない」
「たしかに、それは面白いな…ていうか、ぶっちゃけそういうのかなり好きだ…」
「でしょー!しかも里菜先輩も絶対好きだと思ったんだ。イラスト絵見た時、絶対廃墟とか好きだって」
「うん、イラスト描く人で廃墟にロマン感じない人はいないよ…設定画とか、世界観とか出てくる道具とか衣装まで、考えていくから」
「でしょ!?わたし、運命だと思ったの!想太先輩がいて、里菜先輩がいて、そして未来人の生徒会長がいる。わたしが取組むテーマはこれしかない!って」
目を輝かせながら、身を乗り出して熱弁を奮っている。
「すごいな、ヒカリは…何かに一生懸命になれるって…
よし分かった。御法川のこと最優先だけど、できる限り協力するよ」
「ありがと〜先輩♡もちろん、みのりんのこと最優先で」
「ヒカリちゃん、私も協力させて?」
里菜はそう言って持っていたスケッチブックを片手に、嬉しそうに設定の参考にしたことについて話し始める。
「やれやれ、長くなるな…」
想太はそれを横で聞きながら、自分もワクワクした気持ちになるのを抑えることに必死だった。漠然とした未来への不安が、この時ばかりは薄れたのだった。




