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天之川想太(16)高二。本作の主人公?少なくとも中心人物。ヲタクでありおしゃべり。
御法川愛(16)高二。想太の恋人だったが、突然有名になり、二人は微妙な関係に。
四乃森朱里(17)高三。生徒会長。実は想太の恋を邪魔するために来た未来人。
槍ヶ岳ヒカリ(15)高一。インフルエンサーとしてフォロワー獲得に執念を燃やす。
小山内里菜(16)高二。イラスト絵師として、かなりの収入を既に得ている。
多賀康朗(17)高二。通称ガロ。想太の悪友。
「小山内ちゃん、SF好きだねぇ。私たち未来人も、古代文明についてはまだまだ分かってないことが多いんだけど…」
「え?会長、未来人なんですか?!」
大事なことをサラリと明かされて戸惑いながらも、すぐに受け入れてるのは、さすがヲタク脳というか創作に携わるものなんて、だいたい皆そうだろう。
なんなら、現実そうだったらいいのにな、と日々願望しながら生きているくらいだから、飛びつくくらいまである。
「うん、私は未来から来て、この学校に潜入しているの。だから、小山内ちゃんも生徒会入って私のミッション手伝ってね♡」
「はい、それはもちろん。ワクワクしますね。で、古代文明はなんで滅びたんですか?」
引っ込み思案なくせに自分の興味あることに邁進するところもあるらしい。小山内里菜は少し極端な部類に属しているのかもしれない。
「うん、小山内ちゃんはセンスあるなぁ。実は古代文明が滅びたのと、今回の私のミッションも関係があってね…シンギュラリティって知ってる?」
「最近言われ始めましたよね、AIとかで、技術特異点、でしたっけ?」
「うん、そう。技術特異点。でも、それはAIに限ったことじゃないの。AIが人間の知性を越えることで特異点に到達するってのは正しいの。でもね、他の技術でもそれは起こることなのよね。この世界ではAIの氾濫が特異点への近道だっただけの話。他の世界では、バイオだったかもしれないし、ナノマシンだったかもしれない」
「世界は無数にあるんですか?」
「さすが小山内ちゃん。想太くんには前にちょこっと説明したけど、世界は無限の【ゆらぎ】によって派生し続けるマルチバースなのよ」
そこで、今まで大人しく黙って聞いていた槍ヶ岳ヒカリが小首を傾げる。
「結局どういうこと?」
「もちろん、私たち未来の時代でも分かってないことはまだたくさんあるわ。でもね、なんとなく確かなこととして定説化されたのが【ゆらぎ】によるマルチバース理論なの。私たちが現実として認識している世界は、【ゆらぎ】が確定されることで分岐していくの」
「難しいなぁ、、」
「そうね、イメージするのは慣れないと難しいかも。今はまだシュレディンガーの猫レベルだもんね」
「文明レベル低くて申し訳ないですね」
想太が反抗すると、
「ううん、ごめん、そういうつもりはないの。ただ、受け入れてしまえば、しっくりくることでも、新しい学説は受け入れがたい、イメージしがたいものだから。地動説が一番いい例よね。今私たちがいるこの部屋が動いてるって、言ったら誰が信じるの?って」
これは宇宙に関する定説だが、自分たちのいる場所が、つまり地球が光よりも高速で移動し続けていることを普段から意識することは難しい。もちろん自転、公転という意味でも動き続けてはいる。
「確かに地動説が真実であることは理解していても、この教室が動いているって言われてもイメージできないかも」
と里菜。
「そのとおり。【ゆらぎ】によって、なんとなく世界が分岐するのは感覚的に分かるでしょ?みんな選択しながら生きていくんだから」
まるで講義を受けるかのようにみんな聞き入っている。
「でも、その選択によって確定した世界と別の選択をした世界は、宇宙的視点から見たら、どっちも同じ世界なの。結局重なってゆらいでいる元の状態と変わりないというような… もうちょっと分かりやすく言うと、私たち人間も量子からできていて、量子は常にゆらいでいるでしょ?その【ゆらぎ】がどんなことになろうとも、私たち人間は変わらないかのように存在している。世界も同じことなのよ。
だからね、文明が滅びるってことも、今日滅びようが一万年後に滅びようが、宇宙的視点から見たら誤差の範囲にすぎないの」
「そう言うと、俺らなんてなんの価値もないような気がしちゃうな…」
「宇宙的視点からはね、意味ないの。でも、私たち人間は生きてるもの、だから1人1人の世界は【ゆらぎ】ながら一つ一つ確定しながら進んでいくの。そうね、一人一人が人生っていう物語を描くっていうのが一番しっくり来るかもしれないわね。書かれた物語は世界自体にはさして影響がない【ゆらぎ】にすぎないけれど、一人一人にとっては特別な物語っていう」
「なんだか、美しい理論ですね…」
「全部は分からないけど、なんとなくしっくりくる気がする…」
「で、古代文明滅亡の理由はなんだったんですか?」
小山内里菜はある意味ブレない。
「そうそう、それがシンギュラリティによるものって話。技術特異点を超えると、そこからの進歩のスピードに人類はついていけなくなるってさっきも話したけど、ムー大陸とかレムリア大陸が滅亡したのは、エネルギー制御の失敗と思われてるわ」
「なんで失敗したんですか?」
「失敗の原因は分からないわ。ただ、状況証拠的にも洪水が原因なのは間違いないのよ。そしてそれは地殻変動とか災害とかではなく、科学技術の暴走によって引き起こされたものだというのも間違いないわ。だって、そこまで進んだテクノロジーを制御できていたら災害程度で文明が跡形もなく滅亡するってことは考えられないもの」
「レムリア大陸実在するとか胸熱すぎるな…え、会長、もしかしたら生徒会にいたら、レムリア大陸の場所に連れてってもらえるとかの特典あります?」
想太が興奮すると、
「どーだろーねー?」
四乃森朱里は小悪魔のように笑みを浮かべるのだった。




