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一章①

天之川想太(16)高二。本作の主人公?少なくとも中心人物。ヲタクでありおしゃべり。

御法川愛(16)高二。想太の恋人だったが、突然有名になり、二人は微妙な関係に。

四乃森朱里(17)高三。生徒会長。実は想太の恋を邪魔するために来た未来人。

槍ヶ岳ヒカリ(15)高一。インフルエンサーとしてフォロワー獲得に執念を燃やす。

小山内里菜(16)高二。イラスト絵師として、かなりの収入を既に得ている。

多賀康朗(17)高二。通称ガロ。想太の悪友。

爽やかな風が夕日に染められた教室のカーテンを揺らす。

窓の外からは部活動に勤しむ学生たちの声がどこか遠くから聞こえている。


御法川愛は天之河想太の前で瞳を閉じ、ファーストキスを受け入れようとしていた。


お互い初めてできた恋人で、まだ付き合いたてということもあり、どこか動きはぎこちない。


天之河想太は、こういう時肩に手をやるのか、腰に手を回すのか、などと余計なことを考えていた。


瞳を閉じた御法川愛はまるで天使のように可愛い。


それもそのはず、学園随一の美女というだけではなく、最近は女優としてもデビューして活躍の幅を広げているところなのだ。


想太はそっと目を閉じ唇を近づけていく・・・その時、


ドーーン!!


ん?凄まじい爆発音とともに疑問を挟む間もなく、想太は勢いよく弾き飛ばされ、あろうことか四階の窓から放り出されていた。


え?え?


走馬灯のように御法川愛との馴れ初めから今に至るまでの恋愛の記憶が想太の脳を駆け巡る。


俺は死ぬのだろうか?

どちらにしても念願のファーストキスを目前にして死に向かっているなんて不幸には違いない。

神様もあと2センチ、あと1秒せめて待ってくれたらいいのに。

この1秒の差で死ぬにしても幸福度が一万倍も違う。


想太は考えながらまるで周りがスローモーションになったかのように想太の脳は並行処理的にいくつかの疑問を導き出す。


人間の脳は本来のスペックの10分の1しか使ってないというのは本当なのかもしれない。


御法川愛は無事だろうか?

窓から放り出された時の驚きに満ちた彼女の目。

その瞳に自分のことを心配する色を見て、心は彼女への愛情で満たされる。

なんて優しい彼女なんだ!

俺はこんな子と付き合えて幸せもんだ!

もう死んでもいい!

いや、確かにこれから死ぬかもしれないのだが。


俺は何によって吹き飛ばされたのか?

教室の中には2人きりだったし、俺は2人きりになれる絶好の機会を捉えたつもりだったのだから間違いないはずだ。

何かが爆発した?

いや、俺の制服が燃えていないことを考えると爆発ではなく空気が破裂した衝撃波のような音だったのかもしれない。

右脇腹への強烈なアッパーカットをくらったようなもので、俺は明日のジョーよろしくリングの外に吹っ飛んで落ちていくところなのだ。


1番の疑問は俺は四階から落ちて助かるのかということだ。確か衝撃を逃がすには落ちた瞬間、身体を丸めてなるべく頭を丸めてゴロゴロ転がり続けるんだよな。

格闘漫画から得た知識だが、きっと役立つに違いない。


想太がチラとこれから放り出される校舎の下を見るとそこは中庭になっていて、いくつかのベンチで友だちグループが喋っている。


おいおい、これ無事でも晒し者になるパターンのやつか。集団行動苦手な俺としてはあまり目立つのは勘弁してもらいたいのだが。


そんなことを考えていたら、1人でスケッチブックに何やら書き込んでいた女の子とバッチリ目が合ってしまう。

少し地味っぽいが、顔立ちも整っていて、なかなか綺麗な顔をしている。物静かな瞳に反して、校舎から人が落ちてきたことへの好奇心が見て取れる。実は芯の強い子なのかもしれない。

そして制服の上からでも分かるくらい胸が大きい…


これから死ぬかもしれない時に、いかんいかん。

せっかくだから辞世の句でも考えるか。

古池や かわず飛び込む いやいや、飛び込んでない、飛び込んでない

名月や 夢は枯野を いやいや、そりゃ盗作だ

剣に生き、剣に斃れ カッコいいけど、これも盗作だ

自分には詩の才能はないらしい。

まさか死ぬ間際に自分の才能の限界に気づかされるとは・・・


想太がそんなことを考えていたのが地上2階に差し掛かろうかというところ、あと3メートルほどで地上に激突だ。


思わず目を瞑りそうになった瞬間、もう1人の女子と目が合う。

御法川が美人タイプだとしたら、その子はクルクルとした愛嬌のあるタイプで、男子からの人気も高い。たしか名前は、どこかの山の名前だったような?


その瞬間、


ドーーン!


再びの衝撃と共に、想太は意識を失ったのだった。

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