98 王家というもの
王を警護する近衛兵は、貴族出身の騎士で構成されている。
近衛の一人が前に出た。
「我々は王に忠誠を誓い、司令官の指示を受けて動いている。
司令官がそちらにいるというのは、王を裏切ったということでよいか?」
司令官が答えようとしたのを、宰相が止める。
「君達は王宮にいたので見てないが、竜神は国を憂い新たな王を選んだ。
トレファン侯爵が啓示を受け、我々は竜神のお姿を処刑場で見た」
「竜神だと!?」
反応したのは王である。
「偽りで王の座を奪うと言うのか!」
「陛下」
今度は司令官が前に出て来た。
「広場にいた全員が目撃しています。それは貴族も平民も分け隔てなく全員です」
司令官の言葉を肯定するように、司令官に帯同している騎士達が頷く。
王太子とイースデン公爵令嬢の婚約解消は、王家と高位貴族の間の亀裂が深くなり、王太子が側妃と選んだのも低位貴族の令嬢だ。
イースデン公爵家に高位貴族各家の代表が集まり、話し合いが続いていた。
宰相も司令官もそのメンバーである。
そこに届いた知らせは、イースデン公爵令嬢が婚約者と共に、直轄領の代官が補助金を横領していたのを突き止めたという。
災害支援の補助金がでているのに、民が暮らす場所が復興されていないことに不審を抱き、探ったのだと言う。
その処理も終わらないうちに、イースデン公爵令嬢の保養先で偽造紙幣製造を発見した。
これは平民が攫われて捕らえられているのを調べたらしい。
イースデン公爵令嬢の婚約者は宰相補佐官の一人である、アルチュール・ヴィスタル侯子。
事後処理の為に、ヴィスタル侯子が事情を説明した。
宰相と司令官も当事者として、その話を聞いていたが、竜神のことは聞いていないので、広間で見た時は驚きで言葉が出ないし、心臓が大きな音をたてていた。
イースデン公爵令嬢が何か言ったのを、トレファン侯爵が確認するように言った。
宰相も司令官も、イースデン公爵令嬢だけが竜神を知っていると確信したが、令嬢を表舞台にださせてはいけないと思えたのだ。
そして宰相は内乱を避けるために、トレファン侯爵が竜神の啓示を受けかのように行動をした。
「竜神が現われた?」
王を守っている護衛達が手にした剣を鞘に納めて、膝をついた。
「不必要な血が流れるのを望んでいない」
ユークリッドも、宰相の機転にのって内乱を避けるために動く。
警護が役に立たないとふんだ王は、玉座から王太子を叫ぶように呼ぶ。
「バーミリオン。バーミリオンどこだ!?」
すでに王宮を出ているバーミリオンが答えるはずもなく、王の声が王宮に響くだけである。
「失礼する」
司令官は王の腕に手を回して拘束をする。
「やめろ!私が王だ!!」
どんなに暴れても拘束が緩むことはなく、部屋に軟禁する為に連れ出されていく。
司令官が王を連れて出て行くのを見送って、ユークリッドは宰相に向き直った。
「もうこの部屋に用はない。実技のできる部屋に行こう」
ユークリッドは豪華な玉座に振り向きもせず、宰相と騎士達を随伴させて出て行く。
読んでくださり、ありがとうございました。
かなり説明ばかりになってしまいました。




