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97 王の意義

読んでくださり、ありがとうございました。

ユークリッドは力で押し通すことはしません。

バーミリオンは単騎で馬を走らせていた。

並走するのは、護衛を兼ねた側近が一人。

バーミリオンが側妃を娶ると公言した時に、ただ一人反対をした側近である。

しばらく側を離れていたが。ナーディアとの婚約が解消されて、バーミリオンが頭を下げて戻ってきてもらった。

バーミリオンが唯一信頼する人間である。


「あれば龍神であった」

バーミリオンは。側近のゾーテック・ホフマン伯子に話しかける。


「はい、各国で龍神伝説がありまが、先ほどのはまさに伝説に伝えられる龍神でした」


「トレファン侯爵は、研究のために各国の鉱山をまわっていた。

そのどこかで、龍神の加護を受けたのかもしれない」

「その可能性は高いと思われます」

ゾーテックもバーミリオンに同意見だ。


「代官の横領、子爵の偽造紙幣製造、全ての発覚にトレファン侯爵が関与しているのなら、それは龍神の託宣かもしれないし」

そんな人物に対峙して勝てるか?バーミリオンは自答する。

王家と高位貴族が対立していて、民は王家に不信を抱いている。

軍資金となるべき王宮の資金には、偽造紙幣が混じっていて信用がない。

勝てるはずがない、バーミリオンは結論つけて、王宮を抜け出し王妃である母の祖国グルストフ王国にむかっているのだ。


事実とは異なるが、あの状況ではバーミリオンと同じように、ユークリッドが龍神の加護と思った人間が多い。


伝説になるほどの昔、アーニデヒルトがこの世界の空に現れた時、砕け散った河原にたどり着くまで跳んでいた姿を見られていたのかもしれない。それが龍神伝説として残ったのかもしれない。


あれほど寵愛していたルシンダは捨てるように、王宮に置いてきた。

それどころかルシンダの身の振り方など考えもしないで、自分が王宮を逃げ出すことしか考えてなかった。




司令官が先払いをし、近衛の精鋭に守られてユークリッドは王宮に入った。

目指すのは王の執務室。


そこにいたのは、王と数人の側近。王太子バーミリオンの姿はない。

「なんだ!?お前たちたちは!」

王は宰相とトレファン侯爵の姿を見て、軍が宰相の拘束に失敗したと理解した。

王とユークリッド・トレファン侯爵は従兄にあたる。それが宰相と一緒にいる意味を理解しようとする。

王は室内にいたので、空に竜体にアーニデヒルトが現われたのを見てないし、まだ報告もない。


「陛下」

ユークリッドは言葉を途切った。少し息をして、心を落ち着かせる。

「陛下、王の座から降りていただきたい」


自分の地位が失墜しているなど認めたくない王は、声を荒げて護衛の兵に自分を守るように指示をする。

「謀反である! 宰相と侯爵を捕らえよ!」


王の護衛も近衛であるが、司令官が同行させているのは近衛の中の精鋭兵だ。王についている護衛達もそれが分かっているため、王の指示に躊躇(ちゅうちょ)している。


「私はこの国はこのままでいいと思えない。君達はどう思う?」

ユークリッドが王の護衛達に語りかける。

「私が言うからといって良くなるかはわからない。だが、問題があることを理解している」



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