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93  ナーディアの真意

ナーディアとイレーヌの横にアーニデヒルトが姿を現した。


「アーニデヒルト様」

二人の声が揃った。


『久しぶりですね』

アーニデヒルトが笑みを浮かべ、状況を話す。

『北の方から欠片を感じられて、探しに行ったのですが、遠くに行くのは思ったより力を消費するようで、貴方達に姿を現すこともできなくなっていたの。

あの時、アルチュールに届ける声も力のないものになってしまいました。

貴方達が無事で良かったわ』


「アーニデヒルト様の知らせで、アルチュール達が助けに来てくれたのです。

ありがとうございました」

「あの時の私達には抵抗する力もなく、助けが遅れていれば、ここにはいなかったと思います」

あの三人が来なければ、隠れ場所はそのうち見つかっただろう。

ナーディアとイレーヌが交互に御礼を言う。


ナーディアは、ずっと気になっていた事をアーニデヒルトに告げる。

「私は、テトや多くの民を殺したダルトン子爵を公開処刑に望んでいます。

アーニデヒルト様はお気に障るかもしれません」

イレーヌは知らないが、アーニデヒルトは冤罪で公開処刑されたのだ。

夢でみたナーディアは、処刑の恐怖が忘れられない。


アーニデヒルトは首を横に振った。

『ナーディアは優しいのね。

罪を償わせるのは当然のことです。

ナーディアがあえて公開処刑にこだわるのは理由があるの?』


「ダルトン子爵は、多く民の命を(もてあそ)び、家族や友が目の前で殺されるという恐怖と悲しみを植え付けました。

だから、罪を犯した者は裁かれる場を見せたい」


アーニデヒルトがナーディアにそっと触れる。

アーニデヒルトは姿はあっても実体はないので、触られている感触はない。

『私が公開処刑を嫌がると思ったのね?

私は冤罪で処刑されました。

私に罪を被せた彼らは、生きながらの地獄を経験したでしょう。

罪は裁かねばなりません、ナーディアの思うようにしていいのですよ』


ナーディアとアーニデヒルトの話で、イレーヌは察したようだ。

この美しいアーニデヒルトは、冤罪で公開処刑されて亡くなったのだと。

だが、死してこれだけの力のあるアーニデヒルトだ。

アーニデヒルトの言うように、冤罪を被せた人間は、(むく)いを受けたのだろう。


「私はテトを殺した人間が憎い。この憎しみを終わらせるのは、ダルトン子爵が刑に処せられたと知ること。

野蛮な事だとわかってます。けれどダルトンはあまりに多くの命を奪いました。

自分より身分が低く抵抗のできない弱い人間を狙って」


『ナーディア、正直ですね』

アーニデヒルトの言葉に、ナーディアは笑顔で返した。


イレーヌは、ナーディアが(まぶ)しかった。

ナーディアの言動は、高位貴族の令嬢としては失格だ。

けれど、誰よりも誠意を感じるし、精気にあふれている。

美しいと思う。

かつて、王太子の婚約者として凛とした姿は令嬢達の憧れであった。

イレーヌもそうである。

それが正しい姿と思っていた。


それも一つの姿で間違いではない。

けれど、幸せな姿かと問われれば疑問になる。

ナーディアは自分のために、一歩を踏み出したのだ。

「イレーヌ」

ナーディアがイレーヌを手招きすると、イレーヌも笑みを浮かべて、アーニデヒルトとの会話の輪に入った。


図らずしも女子会となった寝室である。


読んでくださり、ありがとうございました。

アーニデヒルト復活です。

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