92 時代の王
ユークリッドはエルフレッドを伴って内務大臣室を訪れていた。
ゼグウェイ・イースデン公爵は内務大臣である。
「宰相が緊急会の招集をかけました、公爵も出席をお願いします。
その前に、事情を説明します」
王と王太子との会談、ダルトン子爵の処刑を説明すると、ゼグウェイとエルフレッドは考え込んでしまった。
「それをナーディアが言ったというのですね?」
先に口を開いたのは、エルフレッドである。
「僕も留学をしていたので我が国での平民の扱いが、他国に比べ厳しいと思っていました。
だが、他国を知らないナーディアが自分で感じたというのなら、これが転機なのかと思う」
「ああ、ダルトン子爵の処刑については一刻を争う」
ユークリッドが時間がないと焦るのは、王家がすぐにでも内密に処刑をしてしまう可能性があるからだ。
「ユークリッド・トレファン侯爵」
イースデン公爵が改めてユークリッドの名前を呼ぶと、ユークリッドがゆっくりと振り返る。
「私と宰相の意見は同じだ」
足音を立てて、イースデン公爵がユークリッドの横に並ぶ。
「今の王家では我々が仕えることはできない」
並び立つイースデン公爵が堂々としていて、まるで王のようだとユークリッドが苦笑いをする。
「これから国を変革できるのは、君しかいない。
ユークリッド・トレファン侯爵。
王家の縁戚で、周りから尊敬される深い知識と諸国との繋がりがある」
「善人であることを求めないのですか?」
自分を王にと言われて、ユークリッドは聞き返した。
「王に必要なことではありません」
両手を背中で組み、イースデン公爵が背を向けた。
その姿をエルフレッドが追う。
父はナーディアの婚約が無くなった時から、王となる人物を探していたのだろう。
ユークリッドのグランデの街での機敏な動き、冷静な思考と冷徹な判断。
そして、人々が敬うのにちょうどいい年齢。
堅物だが、それは我らがフォローすればいいのだ。
エルフレッドも次の王と考えて、バーミリオンではなく、伯父の方がふさわしいと思える。
「私の意思は確認なしにですか?」
「王位を喜ぶ人間ではないと、分かっている。だが、自分より他に適役はいないと、君は分かっているじゃないか」
「内乱になりますね」
「ああ、膿を出さねばならない」
父と伯父が会議室に向かう後を、エルフレッドが着いて行く。
宰相に執務室では、アルチュールをはじめ、補佐官や事務官に説明がされていた。
ダルトン子爵の処理、代官の処理。
それらすべてが、王妃に関わっている事。だが、王は王妃の罪を表面化させないために、ダルトン子爵を内密に処刑しようとしていること。
そして自分達の手で、次代の王を擁立しようとしていること。
アルチュールには、宰相の次の言葉が分かっていた。
王はユークリッド・トレファン侯爵だ。
数日、行動を共にしただけでも彼の有能さが分かった。
代官の横領、偽造紙幣製造、王権交代。
また、ナーディアに会いに行く時間が減ったと思って、アルチュールは自分の考えにビックリしていた。
読んでくださり、ありがとうございまいした。




