表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/56

9 石集めの障害

やはり頭を打ったに違いない。

アルチュールは自分の杞憂が当たったと確信した。

公爵令嬢が河原で穴を掘っている。それを毎日しているなど、自分の目で見て、報告書通りだと確認しても信じられないぐらいだ。

まともな貴族令嬢のすることではない。

護衛をつけているということは、イースデン公爵が知っているということだろうが、許可を出しているのだろうか?


一歩踏み出したアルチュールの足が河原の砂利に埋もれる。

「うわっ!」

あわてて足を砂利から引き抜くと、靴も服も泥に汚れ、濡れて気持ちが悪い。

「今日はシャンタンなのに、僕が汚れるなど許されることではない」

王都の高級テーラーの名前を挙げて、アルチュールは悲壮感を漂わせた。



「ごめんなさい、侯子。そこは昨日掘った所で、地面が緩くなっているかも」

後出しのようにナーディアが言うから、アルチュールは片眉を上げる。

「何度も言いますが、こんな所はご令嬢がいる場所ではないんです」

自分が汚れた為に、機嫌が悪いのが言葉にでている。

侯爵家嫡男で美しく知性の高い青年。それがアルチュール・エレセ・ヴィスタルであるが、高すぎる自意識が令嬢達から疎遠にされる理由である。

『鑑賞にはいいけど、横に立つのは遠慮したい』


そっと風が頬をなでた。

「アルチュール様、こんな気持ちのいい風、屋敷では感じられませんわ。

それに、もうすぐ日が暮れます。夕焼けの綺麗さを観てください」

アルチュールの不機嫌を無視して、ナーディアは河原の良さをアピールするが、それがかえってアルチュールをいらだたせた。

「暗くなるまで、こんな所にいるつもりですか!?」

そして他家の護衛とわかっていても、声をあげずにいられない。

「お前達は、主家の令嬢が危険になる可能性が高いのに何故に止めない!

主人の意に反しても安全を優先するのが忠義だろう!」

ナーディアを無理にでも連れ帰ろうと前に進んだアルチュールは、昨日か一昨日かその前かに掘り返した所に踏み出し、緩んだ砂利に足を取られて転んだ。

「僕の顔に傷が!!!」

石でちょっと顔をかすっただけなのに、アルチュールの叫びが河原に響いた。


自意識過剰のナルシストの認識だったけど、ここまで幼稚だとは思っていなかったわ、と声を出さずにナーディアはため息をついた。

そういう点では、王太子もそうよね。

結婚したら遊べなくなるから、今のうちに遊んでおくってことよね?


「もうちょっと大人になったら?」

ナーディアの呆れた声に、アルチュールは立ち上がり泥を払いながら、冷静さを装う。

「それは、こちらのセリフです。

やはり、馬車寄せでの事故の衝撃が残っているのですね。

今までのナーディア嬢と言動が違いすぎる。まるで魂が黄泉で入れ替わったかのようだ。

我が家での事故ならば、僕が必ず以前の慈愛に満ちたご令嬢に戻してさしあげましょう」

アルチュールの言葉にカチンと来たナーディアは変な対抗心を燃やす。

慈愛の令嬢、それで冤罪をかけられたらどうしょうもないじゃない。

 

その時に茜色の光が周りを照らす。

アルチュールもナーディアも光の先に視線をおくる。

夕陽が河をてらしながら、山に沈んでいく。

美しいのは間違いない。アルチュールもそれは認めた。


申し訳ありません。予約ができず、予定より早く投稿になってしまいました。

読んでくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ