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89 王と王太子

「陛下、宰相を変えるべきです」

バーミリオンが王に直談判しているが、王の反応は薄い。


「バーミリオン、お前は文武共に優れていて優秀な王太子と言われていたが、政務は机上の空論ではない。

宰相は、全ての情報を統括している。

そしてイースデン公爵が退いた後も、宰相が貴族と王家のバランスを取っているのだ」

王の言う意味をバーミリオンも分かっているが、宰相室で自尊心を傷つけられたバーミリオンは怒りが先立ち冷静に考えることが出来ない。


「臣下が王家に歯向かうなど許せるはずがない。

そんなだから、ナーディアが思い上がったことを言うのですよ」


「ナーディア嬢と言いなさい。もう婚約者でもない公爵令嬢だ。しかも他の男性と婚約をしている。

王太子も婚約者がいても側妃にと望んだ令嬢がいるだろう」

王は、バーミリオンが王の認可もないうちに公表した側妃にいい印象を持っていない。


「ルシンダに王太子妃は無理だ。正妃がいてこその側妃だ」

高位貴族なら当然のように教育されていることが、ルシンダは身に付いていない。ナーディアという障害があるうちはそれも可愛かったが、いろんなことが目につくようになった。


「バーミリオン、王家が模範とならなかった時に、臣下からの信頼は失うのだ。

王家だけでは政務はできない。貴族の協力が必要なのだ。

ましてや、イースデン公爵家の納税が無くなるのに、王家の金庫にあるのは偽造紙幣だ」

バーミリオン


「ナーディアがダルトン子爵に公開刑を望んでいる。しかも偽造紙幣を公表するつもりだ。

それに宰相が同意している」

バーミリオンの言葉に、王は衝撃を隠せない。


「王妃が関与していることは隠し通さないとならない」

宰相が同意しているなら、すぐに王妃弾圧の声があがるだろう。

それは、王妃だけでなく王家に飛び火する。

王は頭を押さえてしまった。

「宰相を呼べ」

王は部屋に控えている侍従に指示を出す。



ほどなく宰相が王の執務室を訪れたが、一人ではなかった。

ユークリッド・トレファン侯爵が一緒にいた。

「陛下、どうやらダルトン子爵のことらしいので、私も同席します」

ナーディアはイレーヌに任せて、屋敷に帰した。ナーディアの言う事は、当たり前の事だ。

民を守らない国は、崩壊する。


ユークリッドは王と王太子に視線をそらさないまま、応接セットのソファに座った。

姪であるナーディアにあれだけ言われれば、ユークリッドも前向きに向き合うしかないと思っていた。

「お呼びは、ダルトン子爵の処刑方法についてですよね?」

ユークリッドは王に向き合うと、ゆっくりと笑みを浮かべた。



読んでくださり、ありがとうございました。

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