表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/100

79 次へと進む時

ナーディアは与えられた部屋で石を取り出していた。

たくさんの欠片を吸収して大きくなったはずだが、一回り大きくなっただけで重さもほとんど変わらない。

だから小さな袋に入れて、持ち運べる。


「アーニデヒルト様、先ほどはありがとうございました。

まだ力が戻ってないのに、会いにきてくれたのですね」

寝る前に石に話しかけるのが、ナーディアの毎日の習慣だった。アーニデヒルトが返事をすることもあれば、今日のように無言の事も多い。

ナーディアは石を袋に入れると、袋の(ひも)を首から下げる。どんな緊急事態でも離さないようにする為だ。

ベッドに横になったナーディアは、すぐに深い眠りについた。


『おやすみ、ナーディア。良い夢を』

アーニデヒルトの声は届かない。



イレーヌはうなされていた。

「いや、止めて、許して」

首を振り、涙を流している。

「助けて、お母様、痛い!」


イレーヌの手をそっと握ったのは、屋敷に帰って来たユークリッドである。

「大丈夫だよ、もう怖くないよ。アイツはもういないよ」

トーマスに拘束された事で、昔のトラウマに囚われたのだろう。

「大丈夫だよ、イレーヌ」

名を呼ぶと、イレーヌはユークリッドの手を握り返してきた。

手からイレーヌの体温が伝わる。

「誰にも言えずに苦しんでいたのだね。よく頑張ったね」

ユークリッドはイレーヌの寝息が整うまで手を握っていた。


イレーヌを(むしば)む根深い恐怖。

表面上は(つくろ)っていても、心に残る傷は未だに血を流している。

ユークリッドは、イレーヌの手にそっと口づけをする。

「ゆっくりでいい、これからは二人で過ごす時の中で、過去は置いていこう」



イースデン公爵邸では、公爵とエルフレッド、アルチュールが密会をしていた。

「遺体は、王都を抜けて河に投げ捨てるように指示をしてあります」

アルチュールの報告に、公爵は頷く。


「ところで、ヴィスタル侯子から見て、トレファン侯爵はどう思う?」

ゼグウェイ・イースデン公爵の質問の意味を取り違えてはいけない、アルチュールはゆっくりと考える。

「信頼に値する人物だと思います。

そして、冷酷な面をお持ちであらせられる」


「そうか」

一言だけ言って、公爵は満足したようだった。


「ヴィスタル侯子、宰相から手紙がきていてね。

偽造紙幣、その取引先に王妃の母国があるそうじゃないか?」

ダルトン子爵邸から押収した資料の中に、取引先とみられるものがあった。

「偽造紙幣は、王家の国庫から発見されるかもしれないな」

王妃には母国から、多額の献上金が奉納されている。


王太子はナーディアに不誠実であった。それが王太子とイースデン公爵令嬢の婚約解消の原因で、アトラス王家と高位貴族の縮図でもある。

「さて、ナーディアの婚約解消の、慰謝料の支払いは本物の紙幣でされるだろうか?

偽造紙幣の鉱物インクは、水で変色するらしい。

宰相が立ち会うことになっている」

王国の紙幣は特殊な顔料を使っているため、独特な青色を出している。

その顔料に似た色を出すのが鉱物のインクなのだろう。


もし、王家の慰謝料が偽造紙幣であったら、局面は大きく変わるだろう、とアルチュールは思っていた。

偽造紙幣製造を知っている王と王太子が、紙幣のチェックをせずに支払うとは考えられない。


読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ