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60 生還

隠れていた破落戸(ならずもの)達はすぐに見つかった。

傷があったため、血の跡が残っていたからだ。


ザンっ!!

エルフレッドが振り上げた剣で、賊の腕が斬り落とされた。

「ギャアア!!」

血が吹き出す傷口を抑えて男が床をのたうちまわる。


ダン!

エルフレッドは男の頭を踏みつけて尋ねた。

「もう片方の腕も斬ろうか? ここで何をしてる?」


「頼まれたんだよ!

この宿にいる娘を連れて来いって」

いてぇよ、と呻きながら男が答える。その顔は血の気が引いていて、出血が多い事をものがたっている。


「誰に頼まれた?」

エルフレッドが男の顔を覗き込んだが、男は答えられる状態ではなかった。意識が朦朧(もうろう)として、ぶつぶつ声を出しているが、それも力を無くしていく。


「ダルトンだよ」

後ろから声がして、エルフレッドが振り向くとアルチュールが立っていた。

「この間、イレーヌに目を付けたらしい」

その言葉で、全てを理解する。


イレーヌは美しい令嬢だ、手に入れようとして破落戸(ならずもの)を雇ったのだろう。

しかも、トレファン侯爵がいるということで大勢の人数をかき集めたにちがいない。

「あっちで二人捕まえた。侯爵が尋問している」

アルチュールは親指てたてて、背後の部屋を指す。


「イレーヌ」

「ナーディア」

大声で呼ぶと、小さな音が聞こえた。


それは、兄の声に答えたナーディアとイレーヌだった。


「あっちだ」

二人は賊達がイレーヌ達を探して荒らした部屋にたどり着いた。

棚の後まで探したのだろう、傾いて倒れている。


「ナーディア」

「イレーヌ」

もう一度呼べば、頭の上から音がした。

兄達の声を聞いて、ナーディアとイレーヌが知らせている。


見上げると、天井の板に取っ手が付いていて、倒れた棚を足場にして登り、取っ手に手をかける。

ナーディアとイレーヌが重しに乗せた家具をどかしていると、力任せに板が下から押し開けられた。


「きゃああ!!」

後ろにのけぞるように倒れ込むナーディアとイレーヌ。


開いた板から顔を出したアルチュールとエルフレッドは、倒れている二人を見つけて屋根裏に 登り上がると駆け寄った。

「大丈夫か?」


板が開くのに驚いただけで、ケガはない。

それでも、ここに隠れる時にできた擦り傷、汚れたドレス、勇気を出して頑張った(あかし)である。


「頑張ったな」

アルチュールがイレーヌの頬に手を添えて微笑んだ。

「お兄様」

イレーヌは、安心したのか涙が止まらない。

ナーディアは力尽きたように座り込んで、エルフレッドに抱きかかえられた。

「お兄様の声が聞こえて、嬉しかった」

「よく耐えた」

「怖かった、怖かったの」

ナーディアはエルフレッドにしがみついて泣いた。


エルフレッドもアルチュールも、妹の存在を改めて感じていた

今までで一番、近くにあった。


屋根裏にあった梯子を降ろして、ゆっくりとナーディアとイレーヌが降りる。

ユークリッドが来ていて、二人を見て喜びの声をあげた。

「よくぞ無事であった」


ナーディアとイレーヌはお互いの顔を見合わせて、声を上げて笑った。


ああ、生きて戻ってきたんだ。



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