54 王都からの援軍
陽が昇る前に早馬の護衛が到着した。偽紙幣が運び出される前に捕縛する為に、少しでも早く宰相に手紙を届ける必要があったので、かなり無理をしたようだ。
使者になった護衛の騎士は、途中で新しい馬に変え不眠不休で走り通して、グランデの街から半日で王都に着いた。
届けられたトレファン侯爵の手紙には、隠し通路で見た偽紙幣製造の様子が書かれていて、宰相はすぐに動くことが来た。
すでに待っていたイースデン公爵も援護をしたため、宰相は王の任命書を取り付けて、第一部隊の出動を命じたのだった。
大軍を動かしてダルトン子爵に悟られ逃げられないように、少数の精鋭だけでダルトン邸に乗り込む予定だ。
王太子がナーディアとの婚約を解消したために、王家と貴族間のパワーバランスは均衡が崩れ、王は議会の指示を得られず宰相が采配を取る形になっている。
ダルトン子爵が紙幣を偽造していると聞いて、王は相次ぐ不祥事に頭を抱えたが、紙幣偽造の実体を暴くことが最優先である。
地煙をあげて数頭の馬が街道を駆けて行った。
先頭を走るのは、第一部隊長アッシュフォード・ベンベルグ。その後を第一部隊の10人の精鋭達とアルチュール・ヴィスタルが続く。
身体が大きく体力のある軍馬なので、グングンとスピードがあがっていく。
彼らはダルトン子爵の紙幣偽造を知らされ、国の根本を揺るがす事態と強い使命をもって向かっている。
夜の闇に隠れて、グランデの街に男達が宿に入った。
「家主、私達が来たことは他言無用だ、いいな」
アシュフォードが、宿屋の主人に金貨を握らせて、奥に入っていく。
宿の主人は、ユークリッドから来客があると言われていたので、さほど驚くことなく、彼らが宿の奥に消えて行くのを見送った。
ナーディア達が街に着いた時は、この宿も客でいっぱいだったが、空いた部屋を順次押さえていったので、現在はナーディア達が貸し切っている状態だ。
コンコン。
扉をノックして、第一隊長は名前を名乗った。
「アシュフォード・ベンベルグです」
すぐに扉が開き、立っていたのはエルフレッド・イースデンであった。
「待っていました」
エルフレッドが彼らを招き入れるも、全員が入れば部屋はいっぱいになる。
「この宿は借り切っている。食堂の方が広いから、そちらに行こう」
ユークリッドが彼らを先導して食堂に向かう。
途中で、ナーディアとイレーヌの部屋をノックして、エルフレッドが扉の外から食堂に来るように伝えた。
部屋の外の騒々しさで、ナーディアとイレーヌは、返事の結果が王都から来たのだとわかったので、急いで食堂に向かった。
宿の食堂には、軍服を着た男達とユークリッド、エルフレッドが席に着いていた。
その中には、アルチュールの姿もある。
アルチュールは二人を見て立ち上がった。
ナーディアの手を取ると、その手にキスをする。
婚約者としての振る舞いだが、ナーディアは紅くなり、それを見たイレーヌは青くなっている。
「お兄様が普通の紳士に見える」
ひどい言われようであるが、有能だが女性を見下す面があるのがアルチュールなのだ。
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