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53 激務の宰相執務室

王宮の宰相室は深夜であるのに灯りが消える事はなく、来客を迎えてさらに(あわ)ただしくなっていた。


来客のゼグウェイ・イースデン公爵は椅子に深く腰掛け、対面に座る宰相を見ていた。宰相の手には、イースデン公爵が持って来た小さなメモがある。

宰相の隣の席に座る宰相補佐官アルチュール・ヴィスタル侯子は、すでに宰相からメモの内容を聞いていて、頭を押さえている。


「公爵、ガナッシュの港街の代官の横領の件で、宰相室は連日の徹夜です。裏帳簿という証拠がありますが、照らし合わせだけでも膨大な件数です」

代官の横領の件で、忙しいのがさらに忙しくなっている。これ以上仕事が増えるのは、ありがたくない。

アルチュールはナーディアがグランデの街に行ってるのは、テトの仇を討ちにダルトン子爵を引き落とすためだというのは知っている。

平民を集めていると言うから人身売買の可能性で、イースデン公爵家の権力で収まると考えていた。

まさか、また宰相の案件になるとは思ってなかった。

「偽紙幣ですか・・」


「連絡鳩が、息子のエルフレッドからの緊急連絡を運んできたのが、お渡ししたメモです」

連絡鳩はどこにいても、巣のある公爵邸に戻って来る。馬よりも早い連絡方法だが、鳥が運べるのは小さなメモだけなので、最低限のことしか書けない。

「詳細の手紙を持った当家の護衛がすでにこちらに向かってます。途中で代え馬をして走り続けているはずですから、朝までには到着すると思われます」

イースデン公爵は、朝までここで待つつもりである。


「トレファン侯爵は学者として名の通った方だ。彼がそういうのなら、見間違いということはないだろう」

宰相は、室内にいる補佐官達に軍の要請をするように指示をする。

「手紙が届いたら、すぐに王に謁見ができるよう手配しよう。そこには公爵も同席願いたい」


「分かりました」

返事をした公爵がお茶を手に取るのを確認して、アルチュールは席を立つ。


「軍と共に、僕がグランデの街に行きます」

公爵と宰相に一礼すると、準備すべく自分の執務机に向かった。


「公爵」

宰相は、イースデン公爵に向き合う。「ガナッシュの街といい、グランデの街も共通しているのは、公爵令嬢です」


「そうですね。

宰相、今は何ともお答えできません」

イースデン公爵は首を横に振った。



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