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51 エルフレッドとユークリッドの疑惑

手を繫いで食堂に現れた二人に、エルフレッドとユークリッドが立ちあがり、席を用意する。


ダルトン子爵家での成果の話は食後になるのだろう、と思いながらナーディアは兄がひいた席に座る。

隣のイレーヌの席はユークリッドがひき、イレーヌは礼をして座った。


「ここでは出来ない話なので、一部屋用意した。早めに食事をきりあげて欲しい」

ユークリッドがナーディアとイレーヌに告げた。エルフレッドは手配した側なので、妹の様子を確認しながら食事をしている。

豪華な食事だが、あまり味を感じないのは、緊張しているせいかもしれないと考えながら、ナーディアは食事を進める。

隣のイレーヌを見れば、会話をすることもなく黙々と食事をして、全員が緊張した空気を(かも)しだしていて、楽しい食事時間とは違っている。



そして4人で用意してあった部屋に入ると、エルフレッドは誰もついて来ていないのを確認して扉を閉めた。


「4人が無事に戻ってこれた事に祝杯をと言いたいところだが、状況は深刻だ」

ユークリッドが椅子に座ると、テーブルを取り囲むように3人が椅子に座った。

エルフレッドに目配せをしてからナーディアに視点を定める。


「見たままを短く言うと、紙幣を偽造していた」

ユークリッドの視線はナーディアから動かない。


一方のナーディアは、思いもしないことに驚きを隠せない。イレーヌも両手を口元に当てて、目を見開いていた。

アーニデヒルトから屋敷に平民を集めていると聞いた時に、ダルトン子爵が平民の命をまた奪うかもしれないと焦って特攻のようにこの街に来たけど、想像もしてなかったことだった。


「紙幣は人体に害を及ぼす金属製のインクで印刷されていて、ダルトン子爵が平民達を集めているのは、その補充にだろう」

ユークリッドも高位貴族として重要視するのは、平民の命より偽紙幣作りの方だ。


だが、ナーディアは違う。

「人体に害ですって?」

思わず声を荒げてしまい、落ち着かせるように(てのひら)を握りしめる。


「話し声は聞こえていたが、姿を確認することはできなかった。こちらの姿を見られる訳にいかないからな。平民だろうが、何人いたかは分からない」

ユークリッドの話を繋いだエルフレッドの視線もナーディアで留まっている。

「ナーディアが見取り図に描いた隠し通路は、何年も何十年も使っていないようだった。

ナーディアは、どうして隠し通路の存在を知っていたの?

見取り図を描けるほど、始めて来る街の他人の屋敷の様子を知っているの?」


「ナーディア、どうしてダルトン子爵邸に平民が攫われて集められていると知ったのだ? 最初から疑問だらけだった。それが、姉上から話を受けた時に興味をひかれたことだ」

ユークリッドは静かに言葉を(つむ)ぐ。


ナーディアは、ユークリッド、エルフレッド、イレーヌを順番に視る。少し目をつぶって姿勢を正した。

皆が疑問に思うのも当然のことだし、いつまでも隠しておけるとは思っていない。


コトッ。

ナーディアは袋から石を取り出して、机の上に置いた。ただの赤茶けた石だ。


3人の視線が一斉(いっせい)に石に集まる。

「これが河原で拾っていた石? 1個だけ?」

何日も河原で石を集めていて人目につき、噂されるようになったぐらいだ、一つだけではあるまい、とエルフレッドがナーディアに尋ねる。


「今は手元に石がないからお見せ出来ないけど、お父様にはお見せしたの。

この石は拾い集めたいくつもの石が集まって、一つになった石なの」

ナーディアはテーブルから、自分の(てのひら)に石を移す。


「集まって、って? いくつもの石をひっつけたようには見えない、(なめ)らかな一つの石にしか見えない」

エルフレッドは言葉に気を付けながら、ナーディアに問いただす。


ナーディアはエルフレッドには答えずに、石に語りかけた。

「アーニデヒルト様、この様子をご覧ですよね? お姿をお見せいただいてよろしいでしょうか?」


石が淡く輝いて、薄いもやが立ちあがった。

それはだんだんと鮮明になり、アーニデヒルトが姿を見せた。



読んでくださり、ありがとうございました。

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