47 ダルトン子爵邸
「ここから地下に入る階段があるの」
ナーディアは見取り図に指をさして言い切る。
エルフレッド、ユークリッド、イレーヌは疑問を抱きながらも、ナーディアを信じるしかない。
「間違いないのか?」
それでもユークリッドが確認をすると、ナーディアは頷いて肯定する。
ダルトン子爵の屋敷に潜入して隠し部屋を暴いて、囚われている平民達を解放するつもりである。
決行当日は、ダルトン子爵が在中しているのは確認ができている。
馬車の出入りが多く、何かの取引きがあるようだ。
ユークリッド・トレファン侯爵が学術研究の為に助手3人と鉱物採集に向かう途中で、ナーディア達を乗せた馬車に不備があり、近くにあるダルトン子爵の屋敷で休ませてもらうという計画だ。
イースデン公爵家の名前は出さない。
王太子の婚約者として顔を知られていたナーディアと知られるといけないので、ナーディアとイレーヌは装飾のない簡素なドレスでダルトン子爵と目を合わさないようにして俯いている。
「申し訳ないね。私達は馬車の修理を依頼してくるので、女性達をその間休ませてくれるとありがたい」
ユークリッド達がダルトン子爵邸の応接室に案内されると、子爵が対応に出て来た。
ユークリッドは最低限の社交しかしないがトレファン侯爵であるので、ダルトン子爵にとって断れない相手である。
「マルクス・ダルトンです。馬車が壊れたとか、それは難儀でございました」
「ダルトン子爵の屋敷でしたか。馬車の修理の手配をするので、その間助手の女性達を休ませたい」
ユークリッドは、ここがダルトン子爵邸とは知らなかった振りで話をすすめる。
「もちろんです。有名な学者である侯爵の助手ならば、さぞ優秀な方なのでしょう。ここには女性が好まれるスイーツはございませんが、お茶をすぐに用意させます。どうぞ、ゆっくりなさってください」
イレーヌがナーディアの前に立ち、ダルトン子爵に礼をいうと、本や資料をテーブルに広げて、ナーディアと二人で研修準備をしているように見せかける。
ユークリッドは屋敷を出て馬車に戻ると、馬車で待機していたエルフレッドと合流し、こっそりとダルトン邸の裏にまわる。
そこには、ナーディアが見取り図に使用人の通路と書いた扉がある。
急な来客で、屋敷の使用人達は慌ただしく動いていた。
元々、使用人が少なく、ここでは貴族の接待など必要のない客ばかりだったから、準備に手間がかかっていた。
音を立てずに扉を開け、周りの様子をうかがいながら中に入る。
エルフレッドとユークリッドは、身をかがめ人目につかないように、ナーディアが記しをつけた隠し通路の部屋に向かう。




