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41 ダルトン子爵の疑惑

王都に戻ると、アルチュールは王宮に缶詰め状態で裏帳簿の裏付け作業をしている。宰相補佐菅という職位であるが、ヴィスタル侯子であることで他の補佐官より使える駒も多く、以前から重用されていた。

それが今回、王家直轄地を預かる代官の横領を発見し、その証拠まで入手するという功績で、アルチュールは筆頭補佐官に任命された。


ナーディアはダルトン子爵家を見張っている。

アルチュールはナーディアの父親のイースデン公爵と連絡をとっているようだが、ナーディアには最初に手紙が来ただけだった。

なので、ナーディアはアルチュールに相談することもなく、一人で見張っている。もちろん、イースデン公爵家の護衛は隠れて厳重についている。

見張りの為にカフェに通えば、すっかり定位置の席が決まってしまう。


「たしかに馬車の出入りが多いわね」

以前アルチュールが言っていた通りだと、ナーディアも思う。

護衛に馬車の後をつけてさせて、様子を見る事にする。


「平民を馬車に乗せて運んでました」

馬車を追った護衛が戻って報告するのを聞いて、ナーディアは違和感を覚えた。

平民を蔑んでいる子爵が、平民を自家の馬車に乗せるのは不思議である。

「国境を越えた馬車もあります」

こうなると、貴族の家の護衛が探れる範疇(はんちゅう)を超えている。


アーニデヒルトに頼むと、翌日には詳細を探ってきた。

力が戻ったアーニデヒルトは、遠くても一瞬で行き来ができ、実体がないので姿が見えす、秘密に調べるにはもってこいなのだ。

『王都を出て、グランデの街に子爵の屋敷があるようだったわ。

多分、地方から連れてこられた平民が何人もいた』

「どうして地方の平民だと?」

『言葉に(なま)りがあったわ。みんな痩せて、ケガをしている人もいたの』

その平民がまともな方法で連れてこられた気がしない。

そのケガは(さら)われて、抵抗してできた傷ではないだろうか?

「ダルトン子爵は、きっとテトみたいに、平民を人間と思っていないのよ」


『私も、もっと探ってみるわ』

そう言うとアーニデヒルトの姿が闇に消えていく。


ナーディアがベルを鳴らすと、メイドが部屋に入って来る。

「お父様がお戻りか、聞いて来てちょうだい」

すでに夜遅くになっているが、最近の公爵は王宮からの帰宅が遅い。


トントン。

公爵が戻って来ていると聞いて、ナーディアは部屋を訪ねる。

「ああ、ナーディアか、どうしたのだ?」

部屋の扉を開けたのは母親のロザンヌで、父の公爵は部屋で(くつろ)いでいるようだった。


「お父様にお願いがあります。お母様も聞いてください」

ナーディアは部屋に入ると両親の向かいの席に座り、使用人をさげるように言う。


ナーディアの真剣な表情に、公爵は先手を打つ。

「ガナッシュの港町でのようなことは、許せないぞ。

ヴィスタル侯子がいたとはいえ、危険なことをするべきではない」

公爵も直轄領での補助金横領を発見したのは賛美するべきことだと思っているが、娘となると心配が先に立って、誉めることはできない。

ガナッシュでの話を聞いた母親のロザンヌは、倒れそうになったほどだ。


「今度は、グランデの街に行きたくって、護衛を貸してもらいたいと」

父親から釘を刺された直後に、ナーディアは言う。

「気になることがあって」


公爵は、いつからこんな行動的な娘になった、とナーディアを見つめた。

「気になる事とは?」

反対だが、それでも理由を聞かずにはおれない。



読んでくださり、ありがとうございました。

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