25 アルチュールへの信頼
婚約解消を確認するって、そういうこと?
この人、自分の顔の利用価値をわかっていてする人だった。私の反応で楽しんでいるんだ。自惚れたことを考えた、とナーディアは顔をそむけた。
顔を赤くしたナーディアが視線を反らしたから、アルチュールは追いかけて覗き込む。
「明日から港の街に療養に行くと聞いた。その準備で出かけるの?」
アルチュールは話を変えて聞いてくる。
「いえ、ダルトン子爵邸に」
アルチュールが護衛として付いて来るなら、ごまかしても無駄だとナーディアは正直に言う。
「テトを轢き殺したのがダルトン子爵なの。他にも余罪があるけど、事故だと押し通されれば、貴族のダルトン子爵を処罰できない。
絶対に許さないから、状況を確認しようと思って」
「そうか・・」
アルチュールはナーディアが馬車に乗ると、続いて乗り込み向かいの席に座る。
「ナーディア嬢が我が家で怪我をしたせいで、頭を打ったのではないかと責任を感じて、ナーディア嬢がいるという河原に行ったんだ。
ナーディア嬢の雰囲気が以前とは変わっていたけど、気が触れたという噂のようではないと思った。
それが気になって、何度も河原に行くうちに街の様子も見えきたんだ。
王宮の補佐官をしていては知らない、生きた街だった」
ナーディアはアルチュールを見つめた。
この人は、同じ事を感じていたのだ。
だから、ナーディアはアルチュールに見せる事に決めた。
袋を取り出し、石を見せる。
「この石は、河原で集めた石です。
アルチュール様はご存知でしょう? 私が小さな石を探して集めていたのを。
小さな石は、引っ付いて大きくまとまったのです」
アルチュールの目が石に釘付けになる。
「これは、引っ付いた状態じゃない。溶けた?融合したと言うべきか?
完全に一つになっている」
河原で集めていた赤茶けた石を知っているだけに、目の前にある石は同じ色でも大きさが違う。
「海で石を見つけたら、引っ付くところをお見せできます。
港町に行きたいのは、河から海に流れ込んだ石を探すためです」
港町に行っても石を探す術はないが、アーニデヒルトは少し力が戻ってきたと言ってた。それで何とかなるのではと思っている。
「そんな特別な石とは思ってなかった。気が触れたと言われても黙っているのは、この石の秘密なんだね?
どうして僕に教えてくれたの?」
アルチュールの単純な疑問だった。
「同じだと思ったから。
私も石を探しに行って、初めて王都の街の底辺を見た。
でも、そこには生活があって、活気があった。
私のドレス一つで、きっと何か月も食べて行けるのだろう、と初めて考えたの。
アルチュール様もそうではなくて?」
アルチュールが苦笑いをして頷いたころ、馬車はダルトン子爵邸の近くに着いた。
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