23 ナーディアの思惑
イースデン公爵邸では、公爵が夫人と娘に婚約解消を説明していた。
母と娘は手を取り合って、慰謝料と納税免除の話になると歓声をあげている。
「私に見せびらかすように、恋人を取っ替え引っ替えして連れてくるの」
今まで言えなかった、とナーディアが憤ったあまりに涙がこぼれる。
公爵は密かに調べさせていたので報告を聞いていたが、娘が泣きながら言うと響きがちがう。
「悪かった」
公爵家の娘としての責務だと、ナーディアに押し付けたのは自分だと公爵も分かっている。
王太子への怒りのあまりナーディアは涙が出たのだが、公爵は娘が辛い思い出で泣いていると思ったらしい。
「お父様、お願いがあるのです。少しの間でいいので王都を離れていいでしょうか?
海の街でしばらく過ごしたいの」
ナーディアはチャンスとばかりに、婚約期間で傷を負った娘を演じる。
河原で砕け散った石は、長い年月で河原に埋もれたが、河の流れで海に流された破片もあるはずだと思っている。それを探しに行きたいのだ。
公爵が難色を示していると、ロザンヌが援護する。
「ナーディアと私が先に行ってますから、公爵はお仕事のきりがついたらいらして。
気分転換も必要ですわ」
「そうだな、2~3日なら仕事を調整できるだろう。領地でない地方に行くのもいいだろう」
二日後にナーディアとロザンヌが港の街に1週間の予定で行くことになった。
公爵はナーディア達が出発してから二日後に追いかけて行き、一緒に帰ってくることになった。
だが、ナーディアは港に行く前にしたいことがあった。
ダルトン子爵。
テトを轢き殺した人間である。
貴族という地位で平民をいたぶるなら、その貴族という地位を奪ってやる。
貴族で無くなれば、復讐は多くの者がするだろう。
すでに手は打ってある。
王太子宛にダルトン子爵の名で献上品を送ってあるのだ。
王太子バーミリオンは剣を集めるのが趣味である。
それは、河原に通うようになって偶然見つけたものだった。
ずいぶん前に王家の宝物室から行方不明になった宝剣。
刀は錆び、宝飾類は輝きを無くしている。
だが、その柄には触れば皮膚がただれる薬を、塗ってある。
きっと王太子本人が確認に来る。
従来の王太子は優秀である。女性関係以外は。
そして、ダルトン子爵邸で手の者が隠した大量の毒を発見するだろう。
それを、どうとられるのは王太子次第だ。
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