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20 婚約解消の序曲

公爵家に向かう馬車の中で、ナーディアは母を見ていた。味方に付けるべきは父ではなく、母だ。

王太子の婚約者として相応の教育を受け、外交の為の会話術も習った。

だが、さっきのようにバーミリオンが(いきどお)って声を荒げると(すく)んでしまい、思うことを言えなかった。なさけない。


それに、ルシンダ嬢が階段を踏み外した時も、ルシンダ嬢を(かば)い、一方的に自分を糾弾(きゅうだん)してきたではないか。

ナーディアはバーミリオンの言動を思い出して、冤罪をかけられてギロチンが落ちてくる恐怖に震えた。


「ナーディア?」

娘の様子がおかしいことに気がついて、ロザンヌが向かいの席からナーディアの横に移動してきた。

「殿下はずっとあの調子だったのね? 浮気だけでなく貴女を悪者にして追い詰めてたのね?」

ロザンヌは兄のユークリッド・トレファン侯爵に相談する算段をする。

独身の兄はロザンヌの子供達を可愛がっており、ナーディアが王太子の婚約者でなければトレファン侯爵家を継がせるのにと(なげ)いていたほどだ。

そして著名な学者であり、その人脈は国内外に広い。


「はい」

ナーディアが(うなず)くと、ロザンヌは息を吐き出すように小さく言葉を繋いだ。

「王家と貴族の(しがらみ)と、イースデン公爵のプレッシャーで言い出せなかったのね?」


それもあるが、父親を説得しようとしなかったのは自分だ。

イースデン公爵家を見限って家を出ていく予定なら、今は石探しを優先して父親に逆らうこともないと思っていた。

「諦めてました。お父様は私が嫌がっても、無理やり嫁がすつもりでしょう?」

「それは違うわ。イースデン公爵家の立場もあるけど、貴女が殿下を好いていると思っていたの」

ロザンヌはナーディアの手を握りしめる。


馬車が公爵邸に着くと、ロザンヌはナーディアに自室で休むように言うと、イースデン公爵の執務室に向かった。


「今日は石を探しに行けなかったわ。河の下流に行きたかったのに」

部屋に入ったナーディアはドレスの隠しから、袋を取り出した。その中には、アーニデヒルトの砕け散った石が入っている。

石は一つにひっついていて、掌の上でコロンと転がった。


ふー、とナーディアは息を吐く。

「なんなの、あれ。私はまだ婚約者で公爵令嬢なのよ。私があの女を階段から落としたと決めつけて」

泣きたくないのに、涙がこぼれる。

「何年王太子妃教育に費やしたと思っているのよ! 昔は君だけを大事にするって、言ってたくせに!

浮気者! 嘘つき!」

石をベッドのクッションに投げつけると、ボフンと重たく跳ねて転がることもなくベッドの上で停まった。

「あの女もわざとぶつかってきて、大げさに3段しかない階段をおちて王太子に可哀そう振りをしてたわ。

あんなのにひっかかる王太子もバカだわよ!

最低男、クズ、節操なしと王太子を(ののし)って、石の横に寝転がった。

変わりたい。もっと変わって王太子を見下したい。あんな女より、私の方が良かったって後悔させたい。


「もしかして、アルチュール様は河原で待っていたかなぁ」

あんなに綺麗なのに、河原でこけちゃって泥だらけに・・

思い出し笑いが出てくる。泣き笑いである。



夕食の時間に食堂に行くと、両親がすでに揃っていて、父であるイースデン公爵は咳ばらいをしてナーディアの方を見る。

「ロザンヌから聞いた。殿下はイースデン公爵家をなめているようだ。

ましてや、向こうからぶつかってきたのに、お前を犯人のように扱ったと?」

ナーディアが何も言わないので、公爵は肯定と取り話を続ける。

「王家とイースデン公爵家が婚約を交わしてから短くない年月だ。婚約解消にあたり相応の慰謝料を払わせる。それとは別に、殿下が公然と女性を連れ歩くようになって2年余り。それと同等の期間をイースデン公爵家は納税を拒否する」

「慰謝料はともかく、納税の拒否は王家にとって痛手でしょうね」

ナーディアがもろ手を挙げて賛成すれば、ロザンヌが静かに微笑んだ。


読んでくださり、ありがとうございました。

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