12 小さなふれあい
翌朝は母親のロザンヌの小言と舞踏会の衣装合わせで、河原に着いたのはずいぶん遅くになってからだった。
小さな赤茶色の石が並んでいるのが目についた。
誰かが集めて置いてくれたようだ。
護衛が指さす方をナーディアが見ると、小さな子供がいる。
「ここに連れてきてちょうだい、丁寧にね」
いつも覗いている子供だ。ナーディアが来るのが遅かったから、石を集めてくれたのだろう。
だが、赤茶色の石ではあるが、ナーディアが探している石は一つもない。
やはり、アーニデヒルトとシンクロしているナーディアだからこそ見つけられるのだと確信する。
護衛に連れられて来たのは、痩せた子供。
「あなた、お名前は?」
ナーディアが屈んで聞くと、子供は頬を染めて答えた。
「テト。お姫様。きれい」
「まぁ」
お姫様って、私のことよね? とナーディアは笑顔を見せる。
「石を集めてくれたの?」
テトがコクンと頷いて、掌を開くと、そこにも小さな石があった。これもアーニデヒルトの石ではないが、ナーディアが「ありがとう」と言うと、テトは嬉しそうな顔をした後、俯いて照れているようだ。
チョン、チョン、テトが石を横一列に並べる。
そういうクセなのか、子供がそういうものなのかは分からない。
ナーディアの横に居座ると、小さな手で石を集めだした。
子供にしては、テトは無口なのだろう。黙々と石を集めては、ナーディアの前に並べる。
「テトー!」
若い女性が走って来て、ナーディアと護衛に頭を下げる。
「申し訳ありません。弟が御無礼なまねをしました」
震えているのは、貴族が恐いのだろう。
「弟は知能が低くって、どうかお許しください」
ナーディアが何も言わないでいると、テトの姉はさらに頭を下げるとテトの手を引き連れ帰った。
次の日もテトが来て、ナーディアの横で石集めを手伝う。テトは無口で几帳面に石を並べる。
名前を聞いた時の話し方も単語だった、と思い出して、ナーディアはテトを見た。
平民は貴族に近寄らないけど、テトにはそういうのは関係ないのかもしれない。
テトが一番本質を見ているのかもしれない、
護衛達もテトはナーディアに危害をくわえないと認識している。
その日は、河原に行く道が騒々しく人が集まっていた。
「お嬢様、前方で貴族の馬車が事故を起こしたようです」
護衛の言葉に、ナーディアは窓から顔をだして前方を見ると、眼に入ったのは見覚えのある顔が叫んでいた。
テトの姉だ!
それを確認した時には、ナーディアは馬車を飛び出していた。
パシーン!
男が馬車の馭者の鞭でテトの姉を打った。テトの姉は何かを庇うように身体で覆っている。
「なにをしているの!」
ナーディアが声を荒げると、振り返った男はナーディアの顔を知っているらしく舌打ちをする。
「子供が飛びだしたんだ」
「違う、馬車が道を歩いていたテトを跳ね飛ばしたんです」
テトの姉は身体の下にぐったりしたテトを庇っていた。
「だまれ! 平民のくせに貴族に逆らうな!」
男がもう一度鞭を振り上げると、ナーディアの護衛がその手を抑え付けた。
「放せ!」
男は暴れて護衛から身を離すと、馬車に乗って発車させるた。
「テトー!」
テトの姉が名を呼ぶが、血まみれで倒れているテトはピクともしない。テトの姉はナーディアの方を見上げて睨みつける。
「貴族なら、何をしてもいいんですか!?」
ナーディアは身を屈め、テトの姉に語りかける。
「テトを医者にみせないと。それに貴女も鞭打たれて、背中に傷を負っているわ」
ナーディアの目配せに、護衛の一人がテトを抱え上げて診療所に向かう。その後をテトの姉がついていく、その足取りは痛々しい。
「お嬢様、エルファンがあの男の馬車を追ってます」
護衛のガビドーは仲間の名をだして、ナーディアに報告する。
ナーディアは頷くと、呟いた。
「貴族って恥ずかしいわね」
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