113 開戦
世帯交代にあたり、イースデン公爵達は様々な状況を考慮して対策を立てていたが、デセウス王国の兵士達が威力の大きい武器で装備されていることは予想外であった。
大型の武器も拡充されていて、大砲の飛距離はアトラス王国の大砲より大きいだろうと見てとれる。
デセウス王国に、軍備を増強する資金が豊富にあるとは考えられない。
考えられるのは、偽造紙幣とすり替わったアトラス王家の私財である。
「ここで足止めをせねばならない。数はこちらが上だが、厳しい戦いになるだろう」
ユークリッドは、国境の砦からデセウス側を見ていた。
王都は宰相に預けて、状況を観察に来ているのだ。
「諜報から、バーミリオン王太子がデセウス王宮にいると報告が届いてます」
司令官の報告に、驚く者はいない。その可能性が一番高いと考えられていたからである。
「今を持って、バーミリオン王太子を国賊として、王太子の地位を剥奪する」
元々、王が交代となるとバーミリオンが王太子でなくなることは決定していた。それが早くなっただけである。
ユークリッドの通達は、すぐに周知されるだろう。
ヴィステン侯爵家長子としてアルチュールも砦に来ているが、バーミリオンの動きが気になっていた。
前線にでてくるだろう。
自分も出陣したい。
トレファン侯爵に交渉して、バーミリオンの姿が確認できたら、アルチュールは前線に出る事を許された。
お互いが睨み合いのような状態が崩れたのは、3日後であった。
デセウスの砲弾が、アトラスの砦に撃ち込まれた。
それを合図に、デセウス軍が国境を越えて来た。
あがる土煙、剣の討ちお合う音、怒声、馬の嘶き。
戦場となった国境地域は、血の匂いが充満していた。
両軍に大量の負傷者、死者が出ている。
前線を走る一頭の馬に、目が行く。
圧倒的に強い。
それがバーミリオンだと分かると、アルチュールは馬を前戦に向けて駆け出した。
バーミリオンは、自分に向かって来る馬がアルチュールが騎乗していると分かって、口角をあげる。
待っていた。
お互いがこの瞬間を待っていた。
カッキン!!
火花が散るほど、刀が討ちあわされる。
ここが戦場だというのを忘れたかのように、お互いに勝つことだけに剣を振るう。
バーミリオンにとっては、文官は軟弱だと認識していたため、宰相補佐官のアルチュールがこれだけやれるのは意外であった。
アルチュールは、バーミリオンが王太子の職務の軍総大将に成るべく剣技に力を入れているのを知っていたが、負けはしないと思っている。
だが、そんなことは二人にはどうでもいいことである。
相手に勝つ、そのためにだけ剣を振るう。
勝った者がナーディアを手に入れる。
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