102 新体制への会議
軍が出動して、街は落ち着きを取り戻した。
火を点け略奪をしていた人間は捕らえられ、火事は街の住人達の協力で消し止められた。
「初動が早かったので、犯人が逃げる前に確保できました」
現場で指導していた司令官戻って来て、ユークリッド達に説明している。アルチュールが正確な場所と状況を確認していたことで、効率良く対応できた。
「人民を煽り陽動していたのは、テクスチャ伯爵家に雇われた人間でした」
テクスチャ伯爵家と聞いてイースデン公爵は眉をひそめた。
王妃と懇意の貴族の一つである。
「混乱に乗じて、王妃を逃がす算段だったのか?」
会議に参加している面々から疑問が出される。
「関与しているのは、テクスチャ伯爵家だけではあるまい」
「陽動していたのは、我が国の人間か?」
「すでにテクスチャ伯爵拘束の為にテクスチャ伯爵家に向かわせたので、今後わかるだろう」
司令官は息を吐いて、椅子に深く腰掛けた。
この会議には、アルチュール、エルフレッドを含め、若い世代も出席しているため、先ほどより大きな部屋で行われている。
「高位貴族と下位貴族の間に溝があるのは確かだ。
平民を擁護すると共に、この溝も取り除かねばならない」
ユークリッドは言葉を続ける。
「だが、仲良しごっこができるなど思ってもいないだろう?」
ははは、と笑いながらイースデン公爵が答える。
「テクスチャ伯爵は、見せしめになるかもしれないな。それだけの事をした。
王家の存在が、高位貴族と下位貴族の溝を深めた。それも無くなる」
イースデン公爵令嬢ナーディアと王太子バーミリオンの婚約が解消され、王家と高位貴族を調停しようとする動きは弱まり、新たな体制が模索されていた。
イースデン公爵家に賛同する者達が集まり、様々な状況を模索して検討されていた。
高位貴族としての多くの権力と情報をもちより、有効に使う術を準備していたのだ。
体制刷新の影響で、内乱、暴動、他国の介入、対応を想定されていたから、今回も軍の配置などスムーズに指揮系統を動かせたのだ。
竜神が現われたことにより、ユークリッドの擁立が急遽になってしまったが、人民の協力が大きくなった。
「トレファン侯爵、あの竜神は?」
誰もが聞きたかった事を尋ねるのは、ヴィスタル侯爵である。
「私もあの姿を見るのは初めてであるが、私もよく知らないというしか答えられない。
過去に一度だけ、別の姿を見たことがあるだけなので、情報をもっていないのです」
ナーディアが集めている石というのは、内密にした方がいいとユークリッドは判断した。
声なら何度か聞いたが、竜の姿は知らなかった。
ナーディアが呼びかけなかったら、あれがアーニデヒルトとは思いもしなかっただろう。
アルチュールとエルフレッドも、アーニデヒルトについては寡黙で通すつもりだ。
アーニデヒルトを狙ってナーディアに危険が増える可能性があるからである。
「深くは話せない、ということは理解しました。
あの奇跡を見れただけで僥倖ということでしょう」
ヴィスタル侯爵も答えをもらえると思ってなかった。
それより戴冠式など、決めなければならないことが山積みである。
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