戯作三昧(1)
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和歌一首…芥川⑯戯作三昧
馬琴翁眇に毒され失調し崋山と和して孫に回生す
詞書:芥川とは比較にならないアマチュアの三文作家ではありますが、同業者としてとても興味深く読ませてもらいました。そのう、何と云うか主人公・馬琴(畢竟芥川)の有り様と心模様がまるで我が事のように感ぜられるのです。眇ばらや和泉屋市兵衛への嫌悪と軽蔑は私が普段ストーカーどもに抱く感情そのものですし、この手の輩に毒されて心の平衡を失うことハンパではありません。顔を顰め、彼奴等と同じレベルに落ちては悪口雑言の類をついつい返してしまう。しかしそのあと自己嫌悪に陥ってしまい、そうすると戯作三昧、すなわち小説の執筆など思いも寄らないこととなってしまうのです。
それは負の類似点なのですが、他方で作中の渡辺崋山に象徴された高邁な人士との交流を願う気持ちも私には常にあるのですし、そしてこちらも文中にあるところの、道徳的自己と芸術的自己との葛藤を危ぶむ思いも確かに私にはあるのです(卑近な例で申しわけないが例えば我が拙作「わが心なぐさめかねつ」と「バー・アンバー」との間にある執筆心理の違い等のことですね)。
畢竟繰り返しになりますがこの馬琴(畢竟芥川)の有り様と心模様がまるで我が事のように感ぜられてしまうのであって、それはもう可笑しいくらいです。それと、孫に癒され諭されて(?)執筆に乗った時の件などはこちらも同業者として実によく分かります。ペンが止まらなくなり一種神がかりとなって一気に作品を仕上げてしまう。そういう不思議帯が確かに小説家にはあるのです。作中、お寺参りから家族と共に戻って来た孫が、スランプに陥り精神失調に陥っていた馬琴にこう云います(畳の上に仰向けに横たわっていた彼の身体に馬乗りになって)「あのねえお祖父ちゃん、観音様がねえ…」「うむ、観音様が…?(何だって…?)」




