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再起をかけて


ーーーーーーーーーーーーーーーー

名:加瀬蒼汰

年齢:25

スキル:身体強化Lv.4

派生スキル:身体能力上昇Lv.4

      耐久力上昇Lv.1

ーーーーーーーーーーーーーーーー



「上がってるわけないよな」


 ダンジョンから切り上げる前に一度ステータスを確認した加瀬は小さくため息をついた。

 探索者育成学校で3年、クランに就職してから5年。

 それでようやくレベル4になったスキルが、今さらダンジョン低層で1年と少し活動した程度で上がるわけはない。


 加瀬は、わかってはいても毎回確認してしまう自分を嗤いながら地上を目指した。



 ダンジョンから出た加瀬は魔石や素材ーーダンジョンが生み出した敵、「魔物」を倒すとドロップするーーの査定・換金中に、なんとなく掲示板を眺める。

 ここには、特定の素材を企業に直接納品する依頼など、探索者に対しての単発の依頼が張り出されている。


「単発:深層でのポーター依頼、か」


 深層でのポーター、すなわち荷物持ちの依頼は今まで加瀬が受けてこなかった依頼だ。

 理由は単純で、死ぬ可能性があるから、である。

 加瀬は探索者をやめる決断もできず、しかし以前のような向上心も失い、無気力にダンジョンを探索していた。

 その中途半端な精神は、危険を極端に嫌い、ダンジョン中層に足を踏み入れることすら忌避させていた。


 ポーターならば魔物と戦うこともなく、直接の危険はないかもしない。

 しかし、深層に行くことに変わりはない。深層では何が起きるかわからないのだ。

 依頼主である深層に潜るほどの実力者たちですら敵わない魔物に遭遇する可能性も、ゼロではない。

 そうなったら当然ポーターも死ぬことになる。

 そうでなくとも、ぎりぎりの戦いになった時はポーターが見捨てられる可能性すらある。


 要は、低確率で死ぬ代わりにそれなりのお金が貰える、そんな仕事なのだ。


 しかしどういうわけかその時の加瀬はその依頼書から目が離せなかった。

 このまま腐ったように生きていくか、あるいは探索者をきっぱりやめるのか。

 そう考えた時に、まだ諦めたくないという思いがわずかに残っていることに気づく。


「お待たせしました。こちら、お預かりしていたカードと、それから領主書でございます」


 査定と換金が終わり、受付の者が奥から戻ってくる。


「あそこに張り出されている深層ポーターの依頼なんだが……」


 この依頼の報酬で装備を整えれば、まだ再起できる。

 もう少し、スキルレベルを上げれば自分だって。


 そう思いながら、加瀬はその依頼を受けることに決めたのだった。


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