96 ノア レオン
※※性的な表現が含まれます。苦手な方はご注意下さい。
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―――― ノア ――――
金曜日の夜、レオンに会いに宿屋へ向かうと受付のお兄さんと何か話している。
私に気がつくとレオンがこちらにきた。
今夜はレオンの部屋へ食事を持っていって食べようということになった。
中々の内容のお話だからちょうど良かったかも。
それぞれ宿の食堂で注文した料理を持って移動する。
何のためらいもなく案内されたレオンの部屋へ入るとき一瞬レオンから残念なコをみるような視線を感じた気がしたけれど気のせいかもしれない。
レオンの部屋は以前私が泊まった部屋よりも広かった。
テーブルに食事を置いて高そうな部屋だなぁなんてのんきに見回していたらいつの間にかすぐ後ろにレオンが立っていた。
少し驚いているとレオンがため息をつく。
「ノア、俺は君が心配だよ」
心配された。
「以前君の部屋に入れてもらった時も思ったけれどね、もう少し男に対して警戒心を持った方がいいかもしれないよ」
私だって人並みには持っているつもりだけど……
「警戒心は持っているつもりだけれど……」
「俺の事は信用してくれているの? 嬉しいなぁ、ありがとう」
言葉とは裏腹に少し困ったような表情でそう言いながら私の髪に触れる。
温泉に一緒に入ってもなんともなかったし、信用というか……やっぱり警戒していなかったのかも……
男性が本気を出せば女性を力ずくでどうにかできてしまう事はわかっている。
けれど、今の私は魔法でそういう男性をどうにかできてしまうからレオンのいう通り警戒心が薄れていたのかも。
「レオン、ありがとう。気を付けるよ」
夕食にしようか、と言い食べながらこれまでの事を報告する。
突然増えた情報量にレオンも驚いている。
……そうだった、とにかく伝えなきゃと全て話してしまったけれどどうやって知ったのか聞かれたら困ることだらけだった。
案の定聞かれた。
「どうやってこんな事まで調べられたの?」
「メイドって偶然耳にしたり見かけたりたまたま拾ったりすることが多いから」
メイドってそういうものだよ。と強めに言っておく。
「とにかく、コリンヌさんとビリーとバリーが何か企んでいるのは確かだよね。それから何かが2週間程で繋がるって言っていたし、どこかに眠らされているコ達がいるみたいなの。リアザイアの孤児院の子供にも何かを無理矢理手伝わせているみたいだし……分からないことだらけだよ」
「けれどわかったこともあるな。コリンヌとビリーとバリーはリアザイア側でも何かをしようとしている。おそらく他にも仲間がいるだろう。リアザイアの孤児院の子供は脅されて利用されている。そしてシュゼット様の手紙はエリアス陛下には届いていない。彼女についての噂も真実ではなかった」
やはり噂は噂だね、とレオンは言い少し考え込んでいる。
「そういえばレオンは1ヶ月後にリアザイア王国の方々がザイダイバに来ることは知っている? 2、3ヵ月程滞在するとか……」
「ん? あぁ、久しぶりの滞在だからね。貴族達……特にご令嬢方が騒いでいるよ」
「ノアはシュゼット様付きメイドだからお城にも行けるだろう? ドレスを着るのかな」
レオンがニコニコと聞いてきたけれどコリンヌさんに言われた事を話して、だからそれはないと思うよと伝える。
「なんだ残念だなぁ。ノアのドレス姿見たかったのに」
見たかったのにってドレスなんて用意できないし……それに
「レオンだってお城には行かないでしょう? どちらにしろお城で私達が会うことはないよね?」
「俺は商売がら時々お城にも行っているよ。中々他国へ行けないお城の方々は俺が持っていく物を喜んでくれるからね。でも……そうだね、リアザイア王国一行が滞在中は警備も厳しくなるだろうし俺も入るのは難しくなるかなぁ」
レオンは私が調べた事を元に更に範囲を広げて探ってみてくれるらしい。
宿にいないことが増えると思うけれどいつも通り宿屋の受付に頼んでおくからそこで手紙のやり取りをしようと言われた。
それから、明日は休みだろう? と美味しそうなお酒をレオンが持ってきて、飲もうと言われたから一杯だけ付き合う事にした。
※※※※※※※※※※※※
―――― レオン ――――
ノア…………まったく君は。
警戒心を持つように言ったそばから俺の部屋で俺が勧めた酒を飲むとは……
これは飲みやすいがかなり強い酒だ。
ノアは一杯だけと言ったがよほど酒に強くなければ一杯で十分に酔える酒だ。
それを進める俺も悪いが……
俺はちゃんと警告したぞ?
目の前で頬を染め、瞳を潤ませ酒に濡れた唇で何とも無防備に微笑む。
俺が今想像していることを君にしても…………同じように微笑んでくれるだろうか……
手を伸ばし熱くなった頬に触れる。
俺の手にすっぽりとおさまってしまう柔らかい頬。
クスクスと笑いながら俺の手に頬を預けるノア。
その可愛らしい様子に思わず指で唇をなぞる。
柔らかい唇から熱い吐息が指に触れ温泉でみたうっすらピンクに染まった肌や濡れたうなじを思い出し身体の一部が熱くなる。
彼女の後ろにあるベッドに目がいく。
ノアをベッドへ運び力の抜けた身体を横たえる。
瞳を潤ませフワリと微笑む彼女の上に覆い被さるとベッドがギシリときしむ。
口付けをしようとすると抵抗のつもりか俺の胸に手を当ててきた。
まったく力の入っていないその手をゆっくりとベッドに縫いつけ口付けをする。
長い口付けに苦しくなった彼女が唇を開くと更に深く口付ける。
くたりと抵抗できなくなったノアの首筋から耳たぶまで唇や舌を這わせながら胸元のボタンを外していく。
花のような甘い香りと吸いつくような滑らかな肌が俺を夢中にさせる。
涙を溢しながらビクビクと俺の愛撫に反応する彼女と目が合う。
非難しているようなもっととねだっているような……
俺は都合よくとらえる事にしてもう一度口付けをしてからボタンを外した胸元に顔を埋めスカートの中の太ももに手を這わせて彼女の…………
…………これ以上考えたらダメだ。
水を一杯飲み思考を元に戻す。
目の前で椅子に座りふわふわと微笑んでいるノアにも水を飲ませて彼女がくれた情報をもう一度思い出す。
侍女のコリンヌとビリーとバリーの兄弟はよほど念入りに情報操作をしたいらしい。
今噂になっている話の出所はほとんどが彼らだろう。
彼らが何か事を起こすとしたらおそらくリアザイア王国一行がこの国に滞在している間だろう。
これは何年も……いや、何十年も前から計画されていた事でたまたまコリンヌ達の時代に実行出来る程進んだのだろう。
あの方の言う通りなら、計画通り実行されると……この国が受ける被害は相当なものになるはずだ。
そしてリアザイア王国もただでは済まないだろう。
思っていたよりも危険な事にノアを巻き込んでしまったようだ。
今さら手を引いて欲しいと言ってもおそらく彼女は引かないだろう。
どちらにしろリアザイア王国にいてもこちらにいても危険な事に変わりはない。
ならば俺の側にいて欲しい。
俺が必ず守るから。




