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異世界転移の……説明なし!  作者: サイカ


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94 シュゼット エリアス


            94



―――― シュゼット ――――



 不思議なメイドが現れたわ。


コリンヌにメイド長のミランダから私付のメイドに平民を入れてもいいか相談されたと言われた。


何を今さら。


昔からいるミランダはいつも身分に関係なく仕事振りをみて選んでくれていた。こだわっているのはコリンヌ。

彼女が来てからミランダにもそうするよう指示しているのを私は知っている。



いつの間にかこの屋敷に入り込んでいてこんなに私の近くにいる。


今までは誰かが側に付いていても感じなかった息苦しさを彼女が私の侍女になってから感じるようになってしまった。


息苦しさと、嫌悪感。


何故かは分からないけれど嫌な感じがする。

そう思い始めて、両親に相談しようとした時にはすでに両親の様子もおかしくなっていた。


兄も同じように感じていたようで私が話すとすぐにエリアス陛下に相談に行ってくれた。


それなのにあんな事になるなんて…………


エリアス陛下が回復されてからお見舞いと兄があの日エリアス陛下に会いに行った理由をお話しようと思いお城に向かった。


エリアス陛下は私と会って下さったけれど毒の後遺症で黒く浮いた血管がお顔に残っていた。

一瞬驚きはしたけれど私はそんなことは気にしない。


生きていてくれて良かった。


エリアス陛下は私のお話を聞いて下さったけれど、少し悲しそうな顔をしてもうここへ来てはいけない、ココを頼んだよと言われ、後日王妃候補のお話も白紙にされた。


訳がわからなかった。どうして? 


それから毎日お手紙を書いているけれどお返事は1度も返ってきてはいない。


両親の様子もおかしいしお兄様はエリアス陛下に毒を盛った容疑をかけられているらしい。


王弟のセオドア殿下もどちらにいらっしゃるかわからない。


一体誰が味方か分からなくて相談も出来ない。

いつも側にいて話を聞いてくれるココももう眠ったままほとんど起きなくなってしまった。


そんな中、屋敷内で身分による差別が広がっていく。


一生懸命働いてくれている方が辛い目にあっているのを見ていられなくて別邸や別荘に移動してもらう。


解雇したと言わなければコリンヌは納得しないと思い表向きはそういうことにした。


お陰で私がわがままで酷い仕打ちをする令嬢だという噂が広まってしまったけれど、コリンヌを欺けたのならそれでいい。



屋敷がこんな状態の時に彼女……ノアは現れた。


始めて挨拶をされた時、メガネをかけた地味な感じの平民であろう女性と隣の貴族であろう女性をみて……ため息が出そうになった。


ノアには申し訳ないけれど酷い仕打ちを受けていたらすぐに解雇を言い渡し移動してもらわなければいけなくなる。


そう思っていると早速ノアがココの部屋へ入っていた。

おそらくティナというメイドに無理を言われて入ったのでしょう。


そもそもこの部屋は出入り禁止になんてしていなかったのにいつからかコリンヌがそう決めていた。


解雇を言い渡すいい機会だと思ったのだけれど私はそうしなかった。


一瞬だけれど、そんなはずはないのだけれどココの声が聞こえたような気がして……


けれど怒っている振りはしなければこの場が収まらない。


皆を部屋から出て行かせた後、ずっとココの側にいたけれど目を覚ますことはなかった…………



コリンヌがお茶会を勝手に開催するといい招待状も出したという。


こんな時に……それも招待客は王妃候補だった方ばかり。

兄について知っている方もいるでしょう。


王妃候補だった彼女達はエリアス陛下が毒を盛られ容姿が変わり呪われていると噂が立ち始めるとすぐに辞退を言い出した。


エリアス陛下が王妃候補の話を白紙にしたのもほぼ同時期だったのでさぞホッとしたことでしょう。


お茶会の間、私は微笑みを絶やさなかった。

負けない。と思っていたけれど疲れてしまった…………


この屋敷はすでに……コリンヌの思うままなのかもしれない。



ある日、仕事が終わったはずのノアが部屋へ来てお茶を入れてくれるという。


人を疑うことに疲れてしまっていてもう好きにすればいいと思いながら彼女を部屋へ入れた。


ノアは私を怖がっているかと思ったけれど意外なことに話しかけてきた。

以前はよくメイド達とお喋りをしていたことを思い出した。


ノアを改めて観察する。私は彼女の事をきちんと見ていなかった事に気が付いた。

綺麗な顔立ちに美しい肌。まるでそれを隠そうとしてかけているメガネ。


違和感を感じる。


いろいろと聞かれ、ココを安全な場所で預かり目覚めさせてくれると言われた時、再び警戒心がわく。


ココをどこかへ連れて行く? 


私がなかなか警戒を解かないと彼女は何もない足元に視線を向けた。次の瞬間……


ネコが現れた。突然現れたことにも驚いたしそのコの毛色の珍しさにも驚いた。


ノアはネコが突然現れた事にも珍しい毛色の事にも触れずにただ自分もネコが好きで一緒に住んでいるのだという。


そしてそのコが私のココを心配してくれているという。


ミケネコサンと呼ばれているそのコに触れると温かい。毛並みもよくて綺麗。大切にされているのがわかる。


ノアに彼女が噂で聞いたことの事実確認をしたいと言われ全て答えた。


彼女は、噂話はどちらが本当かは分からないけれどどちらからも話を聞いて自分で判断すると言っていた。


間違うこともあるかもしれないけれど……と微笑む彼女。


最後にエリアス陛下をどう思っているかと聞かれ素直に答えることができた。



私は昔からずっとずっとエリアスを愛している。



私はようやく長い間感じていた息苦しさから解放され呼吸が出来たような安心感に包まれた気がして涙を流してしまった。


ミケネコサンが慰めてくれてノアがお茶を入れてくれた。


この方たちにならココを預けても大丈夫だと思えた。


いろいろと聞きたい事はあるけれど、全て終わった後に説明してくれると言うので今は何もきかない。



ノアが現れた事で何かが変わりそうな気がした…………



※※※※※※※※※※※※



―――― エリアス ――――



シュゼットの兄アーロンが訪ねて来た日、私は毒を盛られた。


幼い頃から少しずつ毒を含み耐性を付けていたことと、植物を研究しているリュカが毒の種類の特定を早くしてくれたお陰で死には至らなかった。


だが身体のあちこちに所々黒く変色した血管が浮いている。


それをみた者は気味悪がり怯え呪いのようだと囁き始めた。

だからなるべく肌の見えない服を着て顔を布で隠すようにした。


アーロンが犯人だと騒ぎ立てる者もいた。

話を聞こうとすると彼は逃げ出しその日から行方不明らしい。


その頃から私の両親の様子もおかしくなり始めたようだ。


シュゼットが私のお見舞いとアーロンが何を話したかったのかを伝えに来てくれた。

話を聞くと彼女のご両親と私の両親の様子が似ている。


やはり私が毒で寝込んでしまっている間に何かあったのか……



彼女は変わってしまった私の顔を見て一瞬驚いていたがそれだけだった。


他の者達とは違い変わらないシュゼットの態度が嬉しいはずなのに、私は彼女を遠ざける事にした。


王妃を選ぶのなら迷わず彼女を……シュゼットを選ぶ。

選んでもらえるのなら彼女の夫には私を選んで欲しい。


そう思っていたのに周りの貴族達はどうにか王家に入り込もうと必死で勝手に王妃候補を立て公平に皆と会うように言ってきた。

私の気持ちは変わらないがそれで皆の気が済むならと付き合っていたが、私の容姿が変わったとたんに面白いほど誰もいなくなった。


シュゼットを除いて。


彼女だけは私の元を離れずにいてくれた。


だが、それでは駄目だ。


何かが起こり始めている。


彼女が私の特別な存在だと知られると……だから全ての王妃候補の話を白紙にするという事でシュゼットを守ろうと思った。


何が起こっているのか急いで調べなければ。



シュゼットが城に来て数日後、彼女の侍女から手紙が届くようになった。

シュゼットに何かあったのかと思い封を開けるとシュゼットが変わってしまったという内容と愛を囁くような内容だった。


確かにこの侍女はおかしい。


それから毎日のように届く手紙にはいかにシュゼットが悪でどれだけ自分が私を愛しているかが書かれていた。


彼女は私達が積み重ねてきた時間を知らないのだな。


それでも少しでもシュゼットの事が書いてあるならと手紙を読んでしまう。



弟のセオドアからは1度だけ手紙が届き、必ず戻るのでもう少し堪えて欲しいとあった。


末の弟のルシエルはなるべく領地の視察や別荘地へ行ってもらい城と私には近づかないようにした。



しかし……そろそろ限界かもしれない。


毒を盛られてから時々意識が薄れる事がある。

後遺症なのか別の毒を盛られているのか……


見覚えのない書類に書いた覚えのないサイン。

これでは政務もままならない。


周りは嘘ばかりで疑う事にも疲れた。

いや、私が覚えていないだけで皆真実を言っているのかもしれない。



このまま……国を弟達に託すのはあまりにも酷ではないか。


そんな考えが頭をよぎるようになる。


いっそのこと全てを…………全て壊して始めからつくり直した方がいいのではないだろうか。


弟達ならば素晴らしい国をつくってくれるだろう。


それはとてもいい考えのような気がした。


少しだけ心が軽くなり今すぐ全て破壊し尽くしたい衝動に駆られる。


どこかからそんな考えは駄目だと聞こえてくるがその声も小さくなっていく。


私は狂っているのだろうか。



しかし、そんな状態の私を再び正気に戻したのは隣国リアザイア王国第一王子であり友人のノヴァルトからの手紙だった…………




いつもお読みくださりありがとうございます。

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この機能便利ですね。いつも助かっています。

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