85 土曜日
85
今日は土曜日だからお城にお邪魔する日。
午前中からいらっしゃいとお手紙を頂いたので朝食を食べて少しゆっくりしてからゲートをくぐる。
三毛猫さんは今日はお家にいるらしい。
ゲートを開けると王妃様。
「いらっしゃい。トーカさん」
あ……なんかホッとしてしまった。
そんなことはないのだけれどすごくお久しぶりな気がする。
「おはようございます。王妃様」
ニコリと微笑む王妃様。
「トーカさん付いてきてちょうだい」
王妃様の後を付いていくと、王妃様のお部屋に着いた。
「まずはこれに着替えてね。こっちの方がいいかしら? 他にもあるけれどトーカさんはどちらがいいかしら」
迷っちゃうわねウフフッと楽しそうな王妃様。と、戸惑う私。
王妃様が用意してくれたのはワンピースとドレスの中間のようなカジュアルドレス? と言えばいいの……?
コルセットは着けなくていい1人で、もしくは背中のホックをとめてもらうかリボンを編み上げて結んでもらうだけで着られるドレス……
とっても素敵だけれどどうして?
疑問が顔に出ていたみたい。
「今日はね、ダンスのレッスンをしようと思うの。この水色のドレスなんてどうかしら」
「あ、はい。素敵だと思います。……ダンスですか? 私踊ったことはないですよ」
「フフフッだからレッスンするのよ。では今日はこの水色のドレスにしましょう。1人で着られないようならお手伝いをするから声をかけてね」
そう言ってつい立ての向こうに行ってしまった。
レッスンならわざわざ着替えなくてもいいような気がするけれど取りあえず着替えてみる。
風魔法を駆使して背中のホックをとめるとサイズがピッタリで意外と着心地がいい。
素敵なドレス……首元は少し広めに開いていてスッキリとしている。
上半身はピタリとしていて刺繍やレースが首周りや袖に控え目についていてシンプルで上品。
スカート部分は布が幾重かになっていてフワリとしている。そして長い。
ヒールを履いて丁度良くなるのかな。と思っていたら靴も用意されていた。
王妃様にみてもらうと恥ずかしいくらい誉められた……
それから髪は王妃様が編み上げて結んでくれた。
お化粧は自分でと思ったけれどこちらのお化粧品の使い方がわからなかった。
王妃様が教えてくれながらお化粧を施してくれたので次は自分でやってみたい。
「トーカさん! とっても素敵よ!」
嬉しい……照れる……ドレスって凄い。本当にお姫様になった気分。
そこから移動してダンスホール……にしては少し狭いダンスレッスンができるお部屋に着いた。
王妃様が教えてくれるのかと思ったらお部屋にはオリバーがいた。
いつもの騎士の制服ではなく貴族な出で立ち。
大きな身体に合わせて作られた服はサイズもピッタリで凄く似合っていて素敵。
「平日にトーカさんと会えなくなる代わりに今日は順番にダンスを教えるわね」
…………きぃ――てないよぉ――――!
これからみんなと踊るの?
本当に踊った事なんてないのに?
ふ、不安しかない……いや……教えてくれるって言うなら……やっぱり不安。
「トーカ、とても綺麗だよ。その……いつも素敵だけれど」
か、顔が熱い! 照れながら言われると余計にっ!
「ありがとうございます。オリバーもとっても素敵だよ」
照れるっ照れるけれど耐えるっ!
マナー教室で誉められたら誉め返すと教えてもらった。
2人でテレテレしていると王妃様がそろそろ始めましょうかと音楽をかける。
オリバーが手を差し出してきたので私の手を重ねるとオリバーの大きな手に包みこまれる。
引き寄せられて身体が密着する。
…………身長差よ。
オリバーを見ようとすると天井を見上げるくらい顔をあげないといけない。
たくましい身体に合わせて作られた服もピッタリで男であることを意識させられてドキドキする。
あとなんかいい匂いがする。
「あのね、オリバー、私ダンスをしたことがなくて……」
「あぁ、大丈夫だ。ちゃんと教えるから」
微笑まれてホッとする。
腰に手をそえられオリバーがステップを踏む。
私はオリバーの足を踏む。
「ご、ごめんなさい! 痛くない!?」
「グリアに踏まれたらさすがに痛いけれどトーカに踏まれるくらいなんともないよ」
フフフッと笑いながら言うオリバーをみて何だか肩の力が抜けた。
「それじゃぁ初めからいくよ」
1、2、3、1、2、3と繰り返しているうちに段々と音楽を聴く余裕も出てきた。
最初はオリバーのリードだけで踊っていたけれどだいぶ様になってきたと思う。
踊っている間にたくさんお話もできた。
グリアの事や三毛猫さんの事、最近食べた美味しいものやオリバーと初めて会ったあの丘の事、それからザイダイバ王国の事。
…………ん? ザイダイバ王国のこと? 何で急に?
「トーカ、俺達騎士団はザイダイバの騎士団と何度か合同演習をしたことがある」
…………そうなんだ
「ザイダイバは良くも悪くも実力主義だから素晴らしい人材が揃っている」
…………確かに実力主義って教えてもらった
「中でも騎士団長のガイル様は思慮深く頼りになるお方だ。何かあったらこのプレートを見せて相談するといい。助けになってくれるはずだから」
そう言って私の首にプレートの着いたネックレスをかけた。
「う……うん。ありがとうオリバー。でもどうしっ……」
ドレスの裾を踏んづけてしまいオリバーにもたれてしまった。
「大丈夫か? 少し疲れたかな」
優しい声…………
なんて油断をしていると横抱きに抱えられた……そう、お姫様抱っこです。
恥ずかしさのあまり両手で顔を覆い隠れたくてオリバーの胸に顔を埋める。
「くすぐったいよトーカ」
フフフッと笑うオリバーの顔を直視してしまった……
あ……顔が熱いっ! きっと真っ赤………………
そんな私達をみて王妃様は少し休憩にしましょうかと楽しそうに微笑んでいた。




