75 メアリ
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―――― メアリ ――――
私は16歳からお城に勤め始めて4年目になります。王城でメイドとして勤められるのはメイド長のメリッサ様のお陰です。
私の母とメリッサ様は古い友人らしく母が亡くなる前にメリッサ様に私のことを書いた手紙を出していたようです。
父親は私が産まれる前に事故で亡くなったと聞いております。
平民の母と伯爵家の次女であられるメリッサ様がどうして友人なのかは聞いても教えてくれませんでした。
私が15歳になる年に母が病で亡くなるとすぐにメリッサ様が私のことを迎えに来てくれました。
それから1年間メリッサ様はお勉強と礼儀作法を私に教えてくれました。
メリッサ様の教えはとても厳しく私は何度も泣いてしまいましたが全ては私の為を思っての事とわかっていましたので挫ける事はありませんでした。
それに私が寝ていると、時々メリッサ様が私の部屋に来て頭を撫でてくれるのです。寝ている振りをすることもあれば本当に寝ていることもあるので本当は毎晩来てくれていたのかもしれません。
16歳になるとメリッサ様が推薦状を書いてくださり、王城でメイドとして働ける事となりました。
王城で働く使用人の多くは貴族の後継者以外の子息令嬢が多いなか平民出身の私が気後れすることなく働けるのはメリッサ様の教えのお陰です。
同僚や先輩後輩も誰も私を平民だとは思わなかったようです。
貴族の方は18歳の成人の年から働き始めるのが一般的なのに対して平民はもっと早くから働いています。
だから仕事を始めた頃に仲良くなった同僚達に年齢を聞かれて驚かれる事がよくありました。
幸いなことに私が平民だとわかっても態度を変えるような方はいませんでした。
メリッサ様を目標にメイドとしての仕事を頑張ってきました。
失敗をしては学び、自分で考えて工夫をして仕事仲間にも助けられながら勤めて参りました。
3年が経つと王族の私室も任せていただけるようになりまた一歩メリッサ様に近づけたような気がして嬉しくなりました。
そんな私の日常に王妃様のお茶会からちょっとした変化がありました。
メリッサ様に頼まれて1人のメイドと王妃様のお部屋へ行くことになったのですが、とりあえず彼女には何も質問しないようにと言われました。
どういう事でしょう?
よくわからないまま彼女と顔を合わせました。
明るい茶色の髪に茶色い目、あまり見かけないお顔立ち。幼さが残っているけれどお綺麗なお顔とスラリとした身体。子供のようでいて大人。
そんな印象の彼女はやはり初めてみる顔なのにいきなり王妃様のお部屋へ私と行くように言われている。
もしかしたら彼女はかなり身分の高い方のご令嬢なのかもしれないです。
王妃様のお部屋で私がお茶を入れるのをじっと見られていたので少し緊張してしまいました。
その後、王妃様が私達に話しかけてきたことに驚いていましたが、王族の方々はどなたも割りと使用人とお話をされる方ばかりです。
国民を虐げる貴族にはかなり厳しいですが、国民は大切に思ってくれる方々です。
彼女が王妃様のお部屋を出てから王妃様に彼女がどなたかお聞きしましたがはぐらかされてしまいました。
けれど、王妃様がご存知の方なら心配する事はないでしょう。
それから数日間彼女の事は見かけませんでしたが、ある朝また突然現れたのです。
今回はメガネをかけていました。もしかして変装されているつもりなのでしょうか。謎の多い方です。
メリッサ様に彼女の事を頼まれたので、お仕事を教えていきます。
貴族の方ならば爵位を気にするはずですが、彼女もお名前しか名乗らず私の階級も全く気にしていないご様子でした。
王妃様のお知り合いの方ならばかなり位の高い方かもしれませんが、お話をした感じやご一緒に行動しているとどちらかと言うと私達平民に近いような気さえする不思議な方です。
使用人食堂での食事も美味しそうにというより美味しいと声にも出していました。
お仕事も一生懸命で表情も豊かで素直な彼女を可愛い後輩ができたと喜んでも失礼にはならないでしょうか。
使用人棟に彼女のお部屋もできたようなのでしばらくはご一緒にお仕事ができると嬉しいです。
来週からは午後の当番になるので新たに午後のお仕事の流れを覚えてもらわなければなりません。
彼女と仕事をすることが、彼女に仕事を教えることが楽しみになってきている気持ちを悟られないようにしたいところですが表情豊かな彼女の側では難しいことかもしれません。
いつか彼女が何者なのか教えていただけるのでしょうか。
それを知ってしまっても今の関係のまま変わらずにいられるのでしょうか…………
いつもお読みくださりありがとうございます。
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