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メアリ、ノア、とお互いそう呼ぶことにしようということになった。
テーブルセットが終わったら朝食を食べるそうなので、張り切ってお仕事をした。
メアリと一緒に使用人用の食堂へ行くと美味しそうな匂いにお腹が鳴る。
パンにベーコンエッグにスープとサラダが基本プレートで、あとはバイキングみたいに好きなおかずを足していく感じらしい。
メアリと一緒に食べていると噂話が聞こえてくる。
「3、4日前から一昨日まで突然次期王妃様がお使いになるお部屋に入れなかったのよね。何だったのかしら?」
「ノヴァルト殿下が廊下側のドアも自室からのドアも鍵を掛けてしまわれたのよね。しばらくはあのお部屋の掃除はしなくていいと言われたわ」
「絶対にどなたかいらっしゃるのかと思ったけれど、陛下と王妃様や弟殿下方や騎士団長のオリバー様まで出入りされていたわ。本当に何だったのかしらね」
噂話を聞きながら顔が熱くなる。ノバルトの上半身裸を思い出した……からではなくて……次期王妃が使う部屋だったのか。
誰もそんなこと言ってなかった。そんな大切なお部屋を使わせてもらっていたなんて……
「私達のご主人様方はいつお相手を見つけられるのかしら?」
「あら、そう急ぐことでもないかもしれないわよ。お隣のザイダイバの国王はノヴァルト殿下と同い年、独身で王位を継いでいらっしゃるわ」
「エリアス国王ね。でもここ数年こちらにもいらっしゃらないし国内でもお見かけすることが減っているそうよ。噂によると毒を盛られてお姿が……その……変わられたとか」
暗殺とか本当にあるんだ……
「ご公務で表に出なければならない時はお顔を布で隠していらっしゃるとか。確かとても綺麗なお顔立ちをされていましたよね。もし本当にそうならお可哀想だわ。ただ……あの国は少々過激なところがあるみたいだからもしかするかもしれないわね」
「本当にそうだとしたらご結婚は難しいのかしら?」
「お相手は国王よ。選ばれたら逆らえる訳がないわ」
だから選ばないのかもしれない……
「……声が大きいわよ……」
メイドさんの1人がシィッと唇の前に人差し指を立てるけれど、少し小声になりそれでも話しは続く。
「でも実際以前はたくさんの貴族やご令嬢方がエリアス国王の周りに付いて回っていたのにいつからかパタリといなくなっているとか」
そういう事があるということは、やっぱり暗殺未遂も本当にあったのではないかと思ってしまう。
「その中でもエリアス国王より、7歳年下で幼少期から王妃教育を受けていらした次期王妃様最有力候補だった公爵令嬢シュゼット・ファル・ベルダッド様は今もエリアス国王へお手紙をお出しになっていると聞いたことがあるわ」
「ロマンチックなお話に聞こえるけれど……シュゼット様もあまりいい噂を聞かないわ。貴族至上主義でお金使いも荒くて、物凄くわがままで気に入らない使用人はすぐクビにするとか。王妃の座にこだわるのもその肩書きを手に入れたいだけだとか」
おぅ……何か悪役令嬢っぽい。
「そうねぇ。お人形のようにお綺麗な方らしいけれど国母になられるのは…………どうなのかしらね……けれどこのままエリアス国王がご結婚されないのならお世継ぎ問題が起こってやっぱり王弟殿下のどちらかを国王にしようと動き出すのではないかしら」
「エリアス国王は以前はノヴァルト殿下と頻繁に交流されていたみたいだしお二人の代も国交がうまくいくと思っていたけれど……一体何があったのかしら」
ノバルトと仲が良かったみたい。
「王弟殿下は何をされているのかしら? 確かノクト殿下と同じお年でしたよね? 」
「セオドア殿下ね。相変わらず他国に姿を現しては噂になっているらしいわよ。派手に遊んでいるのか……美丈夫なお姿は人を惹き付けるのね。セオドア殿下を国王にという声が貴族の中で未だに多くあるらしいわ。それが嫌で外に出られていると言う噂もあるけれどどうかしら?」
「15歳のルシエル殿下の周りには貴族が集まり始めているらしいわ。お兄様方がお二人ともつかみ所がないからかもしれないけれど、今のうちからお近づきになっていずれは…………」
また誰かがシィッという。
「あなた達、滅多な事は言わない方がいいわよ」
お城の使用人さんの情報網が凄い…………
「みんなお喋りが大好きなの。噂話だから適当に聞き流してね」
メアリが少し困ったように笑っている。
それから食べ終わった食器を片付けて、今度は調理場へ行き、お皿洗いと後片付けの手伝いをする。
その間、調理場で働いていた方々が朝食をとる。
調理場が片付いたら今度は寝室を整えに行く。
王族の寝室へはお城で3年以上努めてさらにメリッサメイド長のお許しが出た人だけが入室を許されるそう。
メアリはそんな凄いメイドさんでした。
「今回はメリッサメイド長にノアと行くように言われているから大丈夫よ。一緒に行きましょう」
いいのかな? メアリへのメリッサメイド長の信頼が厚い。
まずは国王様と王妃様のお部屋から始まり、ノバルトのお部屋へ移動して私が使わせていただいたお部屋もキレイにしてからノクトとノシュカトの部屋の掃除も終わらせる。
ちなみにノクトとノシュカトの部屋の奥にも部屋があった。
朝7時くらいに朝食をいただいてその後常に動き回っていたから小腹が空いてきたなぁなんて思っているとメアリが休憩にしましょうと言ってくれた。
今は10時くらいかな。メアリがカップの場所や紅茶の入れ方を教えてくれて、おいしいクッキーも出してくれた。
ホッとするぅ。
お茶を飲みながらメアリがメイドの心得について少し話してくれた。
「お屋敷に勤めている使用人はお屋敷内の事は口外してはいけないの。罰則だけで済めばましな方で下手したらもうどこへ行ってもお屋敷の使用人としては働けなくなるわ」
守秘義務ですね。
「食堂ではたくさんお話をしていたけれど、お城の使用人は特に口が固いのよ。外で何気なく話した使用人の一言が戦争の引き金になってはいけないから気を付けなければならないの」
なるほど。あんなにお喋りしていた先輩方もお城で働けるだけあって優秀なのか。
「覚えることもたくさんあるけれど楽しくお仕事しましょう」
可愛く微笑むメアリにキュンとしながら楽しくお茶を飲む。
その後朝食の時と同じように昼食用にテーブルのセッティングをして私達の今日のお仕事は終わりお昼からお仕事のメイドさん達にバトンタッチする。
昼食は食べて帰ってもいいし持ち帰ってもいいらしい。
お城の使用人さんは社宅みたいに使用人棟があるらしく皆さんそちらに帰って行く。
なんと、メリッサメイド長が私のお部屋も用意してくれていました。下っ端の私にまでそつない仕事をこなすメリッサメイド長。尊敬します。
メアリに案内してもらって早速用意していただいたお部屋へ行ってみる。
部屋は6畳くらいでベッドにワードローブと小さな机と椅子。
ハンガーには替えのメイド服がかかっている。
この部屋にもゲートを作っておこう。結界を張りドアを消す。私の家のゲートは鍵をかけているので、姿を消してから飛んで家に帰った。
程よい疲れ……そうだ、温泉に行こう。
昼間から温泉に行き今日あったことを思い出しながら疲れを癒す。
明日はもう少し早めに起きてメイド長が用意してくれたお部屋から出勤しよう…………




