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猫という生き物はなぜ寝ている人の顔近くにお尻を向けてくるのか……
信頼の証や挨拶など猫ではないから本当の所はわからないけれど、どうやら良いことっぽいから私は大歓迎。
やたらと寝心地のいいベッドに横になりながら三毛猫さんのお尻を眺めながら思い出す。
熱を出してヒールが効かなかったんだ。倒れて……ここはお城の一室かな。どれくらい寝ていたのだろう。
今は誰もいないけれど、皆さんに迷惑掛けちゃったみたい。
家族の夢をみた。みんな相変わらずだったなぁ。思い出すと目頭が熱くなる……また会えると言っていた。精一杯生きてどんなことがあったか話そうって。
でも…………最後の言葉はアレで良かったのかなぁ……いや、でもずっと気になっていたしなぁ……貯金のこと……お母さん助かるって言ってたし良かったんだよね。
暗証番号を伝えられたからか妙にスッキリしている。
いや、熱が下がったからか。
何というか……身体がこの世界に馴染んだようなしっくりときたような気がする……よくわからないけれど……
熱……あの男の子も熱を出していた。何かあの兄弟、色合いが王子三兄弟に似ていたな。可愛いコ達だったなぁ。
懐かしいような初めてみるような不思議な夢だった。
そしてその後の夢? 何だか嫌な感じがした。三毛猫さんが来てくれなかったらどうなっていたか……
三毛猫さん……
「ありがとう」
三毛猫さんの尻尾がパタリと揺れる。
今は何時くらいなんだろう。起き上がろうとしたら節々が変な感じ。ゆっくりと起き上がりベッドからでる。窓の方へ行きカーテンを少し開けて外を見ると真っ暗。この静けさは真夜中かな。
喉が渇いていることに気付き水差しの水を飲む。生き返る。
クリーンをかけて念のためヒールもかけてみる。
心なしか身体が軽くなったような……
そんなことよりお腹空いたぁ……別にキッチンに忍びこんで盗み食いしようって訳じゃないけど、夜のお城って何かワクワクする。
薄暗いなかドアをソッと開ける。あれ? 廊下だと思ったらまた寝室だ。この部屋を通って廊下にでるのかな。
ソロリソロリとドアへ向かおうとしたらベッドに人の気配がするような……誰かいる?
誰だろうと思いソッと近づいてみるけれど暗くてよく見えない。
「誰だっ!」
「きゃぁっ!」
腕を捕まれベッドに押しつけられる。
ギブッギブッ! 力強ぉっ!
「ノ……ノバルト?」
「トウカ!? 目が覚めたのか! 良かった……」
そのまま私の上に覆い被さり抱き締められた。
ノバルトさん上半身裸なんですけど……
「熱は!?」
「下がったみたいです。ご迷惑をおかけしてすみません」
そう言って起き上がろうとしたけれどノバルトが動かない……
「あの……ノバルト? 起き」
「トウカ……本当に良かった。2日間寝たきりだったのだよ。本当にもう大丈夫なのか?」
そう言いながら私の両頬を大きな手で包みこむ。
近いっ近いっ! キ……キスされそぉ……色気がっ凄い。
2日間か。どうやら無意識にクリーンをかけていたみたい。偉いぞ私。
一旦現実逃避をして落ち着きを取り戻す。
「はい。何だかスッキリしました。もう大丈夫です。あの、そろそろ起きて」
「この2日間私達家族とオリバーが交代で様子を見に行っていたのだけれど、トウカのヒールもリライも効かなくて……トウカを失ってしまうのではないかと本当に怖かった……」
そう言ってまた抱き締めてきたノバルトの背中にソッと触れる。
お父さんお母さん、雪、柚、みんなのいう通りだったよ。
私に寄り添ってくれる人達がいる。
「ありがとう……ごめんね?」
いつの間にかノバルトに腕枕をされて抱き込まれていた。
鼻血出そぉ……
少しの間起き上がろうと頑張ってみたけれどびくともしなかった。
そのうちノバルトの体温と心音が心地よくなりいつの間にか眠ってしまっていた。
そして翌朝、久しぶりにぐっすり眠れた私はそんな事をすっかり忘れていて、寝ぼけながら目の前の人肌の心地よさに頭と顔を寄せてスリスリしていた。
すると上の方からクスクスと聞こえてきて私の意識も覚醒する。
恐る恐る見上げるとロイヤルッスマイル…………ッ
目が……目がぁ―――――――!
と、冗談ではないけれど冗談はさておき……
お腹が空いた………………
今度こそベッドから出てノバルトに言う。
「お腹が空きました」
さっきからグゥーグゥーと荒れ狂う私のお腹の音を聞きながらノバルトは微笑む。
恥ずかしいとか言っていられないくらいはらペコだ。
「そのようだね。すぐに何か持ってくるよ」
私を奥の部屋のベッドに寝かせてからノバルトがご飯を持ってきてくれた。
お腹に優しいものを持ってきてくれたけれど正直私はカツ丼とか牛丼とかハンバーガーとポテトなどのジャンキーなものでもいい、ガッツリと食べたい気分だった。
なんとも色気のない話なので口には出さないけれど、出されたものは全ておいしく頂きました。
ご飯を食べたらみんながお見舞いに来てくれた。
みんな本当に心配してくれたみたいで胸が熱くなる。
お父さん、お母さん、雪、柚、みんなの言っていた通りこっちの世界でも大切な人が増えていきそうだよ。




