70 ノヴァルト ノクト オリバー ノシュカト
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トウカが涙を流している。
声を殺して泣いている様子に胸が張り裂けそうになる。
昔トウカが歌ってくれた歌を思いだしながら歌う。
あの時熱が下がってから忘れないように楽譜におこして何度も練習をしたからあっているはずだ。
「……ん……うぅ……うっ……」
泣きながらトウカが目を覚ました。
「あ、お……母さんは? お父……さんと……雪……と柚……は……?」
元の世界の家族だろう。ここには私しかいない……
「い……ない…………ふぅぅ……ぅ」
あぁ……また泣かせてしまった。トウカ……泣かせたくはないのに。
指でそっと涙を拭うが後から後から溢れてくる。
トウカの孤独を少しでも癒してあげたいのにどうすればいいのかわからない。
トウカの隣に横になり私の腕にトウカの頭を乗せまだ熱いトウカの身体を抱き締める。
泣き続ける彼女の頭を撫で続けているうちにトウカはまた眠りについた。そして私もそのまま眠りについた。
翌朝早くに目が覚めトウカの額に触れるとまだ熱い。
トウカが無意識にかけているクリーンのお陰で服も布団も綺麗になっている。
ミケネコサンも布団の上で寝ている。
私は寝室へ戻り身支度を整える。
トウカにずっと付いていたいが皆気持ちは同じだろう。
それぞれの仕事の空き時間に様子を見に行く事にしよう。
私が寝室にいない時は使用人が入ってしまわないように鍵はかけておき、トウカのところへ行く時に私の執務室まで取りに来てもらおう。
まだ早い時間だったが寝室を出て廊下を歩いていると朝の鍛錬を終えたノクトとオリバーにあった。
トウカの容態を伝えると様子を見に行きたいというのでその場で鍵を渡した。
それから父上と母上、ノシュカトにも同じように話をして皆でそれぞれの仕事の空き時間にトウカの様子を見に行く事にした。
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―――― ノクト ――――
オリバーには先に副団長に午前の予定を伝えに行ってもらい、その後交代でトーカの様子をみてもらう事にした。
部屋に入ると花の香りと森の爽やかな空気……あぁトーカの匂いだ。
「トーカ……」
頬に触れるとまだ熱い。
一度は目を覚まし話しも出来たと聞いた時は安心したがその様子は胸が痛くなるものだった。
トーカの閉じたままの両目から涙が溢れる。
泣きながら寝ている姿は小さく弱々しく見えてそのまま消えてしまいそうだ。
「トーカ……泣くな……」
額に口付けると安心したように少し身体の力が抜けたようだった。
指で髪をすき、頭を撫でているとノックが聞こえてきた。
オリバーが戻ったようだ。
もう一度今度はトーカの頬に口付けをしてから扉を開ける。
鍵を渡し兄上の元へ向かう。
俺達はこのまま見守ることしか出来ないのだろうか…………
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―――― オリバー ――――
新しい氷水とタオルとハンカチと水差しを持って、ノクト殿下と交代でトーカのいる部屋へ入る。
本来なら俺は入ることが許されない部屋だが今は緊急ということで許された。
トーカをみるとまた泣いていたようだ。
頬は桃色に染まり呼吸が少し浅い。トーカの辛そうな様子に胸が痛む。
トーカの小さな手を握る。
「トーカ……元気になったらまた一緒にグリアに乗ろう」
少しだけ握り返してくれたような気がした。
その手に口付けをして祈る。
「トーカ……話したいことも一緒にやりたいこともまだたくさんあるんだ。どうか元気になって……」
ノックが聞こえたので扉を開けるとノシュカト殿下が立っていた。
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―――― ノシュカト ――――
オリバーと交代でトーカの寝ている部屋へ入る。
ノヴァルト兄上から一度意識が戻ったと聞いていたが熱が下がらない。
額に触れると熱く、呼吸も浅い。体力も奪われていくだろう。
トーカの家から持ってきたリライの滴と水をハンカチに含ませ唇を濡らす。
ノヴァルト兄上からはリライは効かないかもしれないと言われていたけれど、何もしないよりはましかもしれない…………いや……これしかできないのだ。
食事ができないからせめて水分は取ってもらわなければと思いもう一度湿らせたハンカチを唇に当てる。
冷たくて気持ちがいいのか、今度は少しハンカチに吸い付く感触が伝わってきた。
「トーカ……」
目を覚ますかと思ったけれど、眠ったままだった。
出来ることがなくてもどかしい。せめて……と思いトーカの家の周りに咲いていた花を数本摘んで花瓶に移しベッドの横のテーブルに飾っておいた。
「トーカ……研究を一緒にやるのでしょう? 2人で考えればきっと研究も早く進みますよ……だから……ちゃんと目を覚まして下さいね……」
トーカの髪に触れる。
ふと見るとミケネコサンもこちらを見ている。
ミケネコサンに手を伸ばすと動かない。そっと撫でる。
「後は頼んだよ……」
もう一度撫でて部屋を後にする。
水差しの水にはリライの滴を混ぜておいた。皆にも様子を見に行った時はなるべく水を口に含ませて欲しいと伝えておこう。意識がなければ唇を濡らすだけでもいいと。
トーカ……ちゃんと目を覚ましてね……




