69
69
熱い…………お父さんお母さん雪、柚、みんなどこに……いるの?
「冬華」 お母さん?
「冬華」 お父さん?
「「冬華」」 雪? 柚?
「冬華、こんなところで寝ていたら風邪引くわよ! 明日は仕事でしょう?」
「あれ? お母さん? ここは……?」
「なぁに? 寝ぼけているの? あなたが産まれ育った家よ」
やぁねぇ、フフフッと笑うお母さん。
戻って……きた……? 夢だった……?
「今日はみんな揃っているんだから夕飯の準備手伝ってね」
いつもの週末だ。
今夜はお鍋らしい。うちは季節関係なくよく鍋が出る。
お肉も魚も野菜も1つのお鍋でたくさん食べられるから楽でいいそうだ。それから家族団欒という感じがするからと母は言っていた。
お鍋の準備をしながら母と話をしていても、私がいなくなったとかそういう話しは一切出てこなかった。
やっぱり夢だったのかな。
夕飯の準備ができたからみんなを呼びに行こうとしたら父と弟達2人はリビングでアルバムを開いていた。
「わぁ懐かしい!」
私と弟達の小さい頃の写真。
「冬華は弟達が産まれるまでは物凄い甘えん坊だったな」
お父さんが目を細めながら言う。
「そうねぇ。雪と柚が産まれたら急にお姉さんぶって……フフフッたくさん助けられたわ」
お母さん。
「冬華は甘えん坊だったのか。俺たちも大人になったし今度は甘えてもいいんだぞ」
雪、柚。小さい頃はお姉ちゃんと呼んでくれていたのに……
「お父さん、お母さん、雪、柚、あのねもし私が突然いなくなったらどうする? 探しても見つからないような所に行ってしまったら……どうする?」
みんな顔を見合わせている。
「探しても見つからないの?……それは困るわね……でもそうね、探しても見つからないその場所で生きていると信じるわ」
みんなが頷いている。
「そこで精一杯生きて、愛されて、愛して、大好きな大切な人達に囲まれて幸せでいてくれると信じてる」
お母さん……
「そうだな、私達の自慢の娘だ。どこへ行っても……まぁ……たくましく生きて行けるだろう」
お父さん?
「そうだね、冬華はちょっと鈍感で抜けてる所もあるけど妙にたくましいところがあるからな。どこでも生きていけるよ」
弟達よ……
「でも……でも辛いこととか怖い思いとか悪い人に会ったら、どうすればいい?」
「いつも側に居てくれる存在を忘れてはだめだよ。常に側に居なくても寄り添ってくれている人もいるはずだから」
「それから悪い人が本当に悪い人なのかは自分で見極めなさい。どうしてそうなってしまったのか……そうならざるをえなかったのか」
「その人にはその人の正義があって、もしかしたらそちら側からみたら冬華が悪い人だと思われているかもしれないぞ。そんな事は絶対ないし、そんな風に思うなんて許せないけどね」
「とにかく、誰かから聞いただけでその人を知った気になってはだめよ。自分で確かめて判断しなさい。間違う事もあるかもしれないけれど知ることを怖がらないで」
みんな…………
何となくわかってきた……こっちが夢だ……
ポロポロと涙がこぼれる。
私はやっぱり帰れないの? みんなとはもう会えないの?
1人は嫌だよ……みんなに会いたい。
「冬華、1人ではないはずだよ。大丈夫。いつかまた会えるから。それまでみんな精一杯生きてどんなことがあったかたくさん話そう。鍋でも囲みながらね」
でも……でも……と泣き止まない私をみんなが抱き締めてくれる。温かい。
「大丈夫。精一杯生きて幸せになりなさい」
うん……! わかった……うん……
あぁ……目が覚めてしまいそう…………でも……でも最後に……!
「お母さん! 私の銀行口座の暗証番号※※※※だからね!」
「あら! ありがとう、冬華! 助かるわぁ」
意識が浮上していく。
歌が聞こえる……小さい頃風邪をひいた時とかにお母さんが歌ってくれていた、作詞作曲・お母さん の歌。
歌っているのは誰だろう…………知っているのは家族だけのはず…………
「……ん……うぅ……うっ……」
涙で視界がぼやけている。
「トウカ? 目が覚めたのか?」
……だ……れ…………ノバル……ト……?
「あ、お……母さんは? お父……さんと……雪……と柚……は……?」
うぅぅ…………涙が止まらない。
「トウカ、すまない……ここには私しかいないのだよ……」
「い……ない…………ふぅぅ……ぅ」
「トウカ、すまない……」
違う……ノバルトのせいじゃない……と首を振ろうとしたけれど動いたかどうかわからないくらい小さくしか振れなかった。
ノバルトが私の隣に横になり私の頭を腕に乗せて抱き締めてくれた。
涙が止まらなくてノバルトの服を濡らしてしまうけれどどうしようもできない……
ノバルトが抱き締めて頭を撫でてくれている間に私はいつの間にかまた眠りについていた…………




