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異世界転移の……説明なし!  作者: サイカ


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65/251

65 水曜日


            65



 水曜日。ノシュカトはお昼過ぎに来るみたい。


きっと植物の事をたくさん話すだろうから午前中のうちに庭と温室の手入れと作業部屋の掃除をしておく。


お昼過ぎ、客室のゲートの鍵を開けてしばらくすると


コン コン コン


「はーい。どうぞ」


ノシュカトが入ってきた。


「こんにちは、トーカ」


挨拶をしてキョロキョロと部屋を見回す。


「こんにちは、ここは以前ノシュカトが使っていた部屋とは別の部屋だよ」


「そうなのですね。僕も住めるくらいトーカの家は広いですね」


ニコリと可愛く微笑まれたけれど……お城から来ているのに何を言うの。


いつものように一通り家の中を案内する。いつもと違うのは2階の作業部屋も見せたことかな。


そこにおいてある植物や加工して作ったワセリンやらをみて興奮している可愛いノシュカト。


お茶会でご令嬢方もメイドさんもノシュカトの微笑みに驚いていたけれど……私は初めからこの可愛らしくいつも微笑んでいるイメージしかないから逆に無表情とか想像がつかない。


リライの花に滴が一杯に溜まったので砂糖を溶かしてあめ玉みたいになるようにコーティングしたのも見せた。


「トーカ! これ! これは凄いです! 結界を使わずに僕でも作れる方法はあるのでしょうか!? 考えてみないと」


私を頼ろうとせず自分でも出来る方法を探そうとしている…………いいコだ。


思わず背伸びをして手を伸ばしてヨシヨシと頭を撫でると、頬をピンクに染めたノシュカトがチラリとこちらをみて言う。


「実はずっと考えている事があるのです。まだ誰にも話した事は無いのですが……」


これはちゃんと聞いた方がよさそうと思い、1階のリビングに移動してソファーに座ってもらう。

お茶をいれて私も座ってお互い一口飲むとノシュカトが続きを話し始めた。


「そもそもリライは絶滅していると思われていましたから。リライはトーカが作ってくれたようにこの鈴のような小さな花一杯に滴を溜めて花ごと口に含むと身体の欠損部位も治ると伝えられています」


私も本で読んだ事がある。あんなに小さな花なのに風が吹くと滴は溢れるし採取する時の振動でも溢れてしまう。

自然に溜まることはまず無いのかもしれない。


だからこそ身体の欠損部位も治ると()()()()()()()。なのだろう。


本当に本当はどうなのかわからないのかもしれない。


そんなことより早く滴を小瓶に溜めて売ってしまった方がお金になり、更には滴の溜まっていない花にも何かしら効果があると尾ひれが付き乱獲に繋がったのかもしれない。


「僕も確証が無いから、まずはリライの花を見つけて増やす事から始めようと思いこの山に入ったのです。あんなことになってしまったけれど……」


少し困ったように笑う顔はどこか国王様に似ているような気もする。


「もしリライを見つけることが出来たら、トーカがやっているように花の中に滴を溜めたものをたくさん作る方法も見つけて、それから…………」


? 少し不安そうにけれど真っ直ぐに私をみて


「魔獣化してしまった動物達に与えて元の姿に戻してあげられないか、戻せるように出来ないか研究がしたいのです」



あ…………目から鱗が落ちるってこういうこと……?



私はこの世界にきて使えるようになった力にばかり目が向いていたけれど、この世界にもこの世界にあるもので考えている人はいるんだ。ちゃんとここに。


私は嬉しくなって立ち上がり座っているノシュカトを抱き締めた。


「ありがとう……」


「トーカ? お礼を言うのは僕の方だよ。トーカが助けてくれたからこれからやりたかった事ができるのだから」


うん……うん、それでも嬉いんだよ。嬉しいの。と頭をヨシヨシと撫でる。フワフワの髪が気持ちいい。


それからノシュカトは少し困ったように


「トーカ……僕も男なんだよ?」


「うん。そうだね、男の子だもんね」


そういうと私の腰に腕を回し抱き締めてきた。


ぐぇっ…………このコはまた力の加減を…………


手を離すとノシュカトが私を見上げている。

その顔が何だか……いつものフワフワした感じじゃなくて……少し意地悪な時のノクトの表情にも似ているような……何だか狙われた獲物になったようで落ち着かない。


ノシュカトが私の髪に触れてから手を離すといつもの可愛い微笑みに戻っていた。……気のせいだったのかな……? 


それから外に出て畑と温室を案内すると私も嬉しくなるくらい大喜びしてくれた。可愛い。


お城にある温室でも育てられないか試してみたいけれど、誰かに見られたらそれこそ騒ぎになり今度こそリライは根絶やしにされるだろう。


ということで、研究はここですることになった。


庭にキツネさん達が遊びにきた。ノシュカトの周りをクルクルと回って嬉しそう。

ノシュカトもキツネさん達を撫でたり子キツネさんを抱っこしたりしている。


私はこの状況を見つめながら考える。


リライは本当に希望の花になるかもしれないけれど、密猟をどうにかしなければいけないことに変わりはない。


一瞬でも動物達にあんな思いもあんな姿にもなって欲しくはない。


でも今は、魔獣化してしまった動物達の事を元の姿に戻そうと研究までしてくれるノシュカトに出会えたことに感謝しよう。


彼が振り返り私に微笑む。



あの時あんなところで死んでしまわなくて良かった。助ける事ができて本当に良かった…………



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