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さて、王妃様のお茶会がそろそろお開きになりそうだったので、まずはそちらに行ってみよう。
姿を消して庭まで出る。
お茶会の会場のメイドさんが数十人並んでいる列に紛れて結界を解く。
それぞれのお屋敷から数名ずつ連れてきているみたいでなかなかの人数。
お菓子やケーキが美味しそう。皆ほとんど手を付けていない。もったいない。
私が食べられない食べ物に夢中になっているとメイドさん達がソワソワしだした。
そしてそれ以上にご令嬢方が騒がしい。
ひときわ大きな歓声が聞こえてご令嬢方が動き出した方を見ると…………麗しの王子三兄弟。
すごい人気。
三兄弟から私までかなりの距離があるはずなのに、一瞬ノバルトと目があったような気がした。
…………気のせい気のせい…………だよね?
「本日はお越しいただきありがとうございました。楽しんでいただけたのなら幸いです」
ノバルトが笑顔で言うと
「キャ――――――――ッ!!」
ご令嬢方が叫ぶ。
ノクトとノシュカトも微笑むと
「キャ――――――――ッ!!」
ご令嬢方が叫ぶ。
すごい…………まるでアイドル。
挨拶を終えて王妃様と少し言葉を交わして王子達が下がるとご令嬢方の話が再び盛り上がる。
貴方はお三方のうちどの方が……
ノヴァルト殿下の色気が……
ノクト殿下のあのサラサラの美しい髪が……
ノシュカト殿下のあんな柔らかい表情初めて……
どこの世界でもお年頃の女の子達の会話は微笑ましい。
お客様が帰り、会場の後片付けが始まる。皆さんテキパキと動きながら
あのご令嬢のドレスが素敵だった……
あのご令嬢はご立派に成長されて……
あの髪の結い方、素晴らしい侍女がついている……
うちの王子様方もいつみても素敵だわ!
ノシュカト殿下が微笑んでいらしたわ……
段々とご令嬢と同じような会話になってくる。メイドさん達もお年頃の女の子が多いみたい。
それにしてもノシュカト……微笑んだだけで話題になるなんて……今までどれだけ……まぁいろいろあるよね。
パンッパンッ! と手をたたく音がして皆そちらに注目をするとメイド長っぽい人がいる。
「皆さん。王妃様よりこちらの手をつけられていないお料理や、デザートなどはいつものように私達にお任せいただけるそうなので、一度使用人の休憩室へ運び、この後休憩に入る方はいただいて、休憩が後の方は取り分けておいて下さい。もうすぐ就業時間が終わる方はお持ち帰りいただいてけっこうです」
おぉっ! いつもそうしているのか……棄てられていなくて良かった。
私もこれから休憩組に混ざって移動する。ケーキ1つだけでいいから食べた…………聞き込みをするために。
皆それぞれ取り分けて席に着く。
私もデザートを中心に取り分けて座る。
周りの話しに聞き耳を立てていると、ノシュカトの話しになった。
一体いつの間に帰って来ていたのか? おそらく雨が弱まってすぐノクト殿下とオリバー様が山へ行き見つけて連れ帰ったのではないか……
と言う噂になっているみたい。
とにかくご無事で良かった。両陛下も殿下方もお元気になられてようやく心からの笑顔をみることができた。
皆から好かれているんだね。
それから私は気になっている事を聞いてみた。
「この国は王家の方々も素晴らしく暮らしやすいいい国よね」
「そうね、王家の方々は民がいてこその国といつも言っておられるわ。だから貴族が王家に対して何かした場合、罰金や降格処分がほとんどだけれど、貴族や特に領主が領民に対して理不尽な仕打ちをするとあっという間に国外追放や没落させられてしまうの」
国民を大切にしているんだなぁ……でも……
「国外追放や没落させられた元貴族の方はどこへ行くのですか?」
「それは私達にはわからないけれど……ほとんどは山を越えた向こう側の隣国ザイダイバへ移り住んでいると言われているわ…………だからと言うわけでもないかもしれないけれど、あまり国同士の関係は良くなさそうなの」
国外追放とはいわれているけれど、実際は国外追放という罰は無いそう。
そういう元貴族を受け入れている教会が辺境の地にあり、そこでの質素な生活に耐えられなくなった人達が隣国に逃走しているらしい。
心配といえばその事くらいかしら。と彼女が言う。
山の向こう側には更に山が連なっているようでその先に国境があるみたい。
今度明るいうちにお隣の国に飛んでいってみようかな。
さて! ケーキも食……いろいろ聞けたし、そろそろ帰ろうかな……と思っているとあのメイド長っぽい人に、そこの貴方。と呼ばれた……
「休憩が終わったら王妃様のお部屋へ。今いるメイドと交代してください」
「はい!」
思わず元気よくお返事してしまった。何か圧がすごくて……
私の他にもう1人一緒に行くみたい。良かった。王妃様のお部屋の場所がわからない。
お部屋に着くとメイドさん2名と交代したけれど、何をすればいいのかわからない。
王妃様はお茶会でおもてなしをした後にもかかわらず机に向かいお仕事をしている。
先輩メイドさんがお茶を入れている。
王妃様の元に持って行くのを私はただ立ってみている。
ありがとうといい、王妃様がお茶を飲み一息つくと話し始めた。
「貴方達から見て今日のお茶会で気になったご令嬢はいたかしら?」
驚いていると先輩メイドさんが、
「王妃様は外では完璧な王妃様の振る舞いをされるけれど自室だとかなり使用人とお喋りをされる方なのよ。家族のことや困っていることはないか必ず聞いてくれるの」
貴族と使用人の関係はお屋敷によってかなり違うらしい。
「そうですね……皆様素敵にご成長されていてすでにご婚約されている方々の落ち着いたご様子はとても大人びて見えましたわ」
先輩メイドさんが答えている。
「そうねぇ。私が恋愛結婚だったから息子達を急かすこともしなかったけれどそろそろいい出会いがないかしら」
チラリと一瞬視線を感じたような……気のせい気のせい。
それにしても王子様なんて小さい頃から婚約者が決まっているイメージだったけれど……そうか、陛下と王妃様は恋愛結婚だったのか。仲良さそうとは思っていたけれど納得。
「王子様方は皆様素敵ですし、とても人気がおありなので心配ないかと思います」
「ウフフッありがとう。そうだといいけれど。最近新しい出会いもあったようだからこれからは少し頑張って欲しいわ」
へぇ―新しい出会いかぁ。あれだけの人数のご令嬢がいてあの人気だから心配することもないと思うけれど……次期王妃や王族に入るとなるといろいろあるのかなぁ。
しばらくすると、私だけ下がっていいと言われたので失礼してお部屋を後にする。
「王妃様、メイド長に言われて一緒に参りましたが彼女見ない顔でしたけれどどなただったのですか?」
「フフフッさぁ、誰だったのかしら」
こんな会話がされていたことを私は知る由もなかった。




