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異世界転移の……説明なし!  作者: サイカ


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46 冬華 ノシュカト


            46


―――― 冬華 ――――



 家に帰ると三毛猫さんがお出迎えしてくれた。

少し遅くなったから心配してくれたのかな。


「ただいま三毛猫さん、遅くなってごめんね」

「ニャーン」


三毛猫さんを抱き上げて撫でる。

やっぱり家は落ち着くなぁ。


外に出て少し雨にもあたったしもう一度お風呂に入ろう。


お湯に浸かりながらノバルトの言っていたことを思い出す。ノバルトの家族って王族だよね……ノシュカトさんが目覚めたら兄弟3人に私の存在が知られる事になる。


あとは……王様と王妃様か……私が望めば家族以外に口外しないと言っていたけれど……


この世界での人との関わり方に迷いがある。


元の世界に帰れるか帰れないかわからないから決められなかった。



今はどちらでもいいんじゃないかと思えて来た。


私が今いるこの世界でも全力で生きてやろうじゃないか。


そうしていたら、もしまた私の家族に会えた時、胸を張ってただいまと言える。


そう決めた! 


でもやっぱり寂しいから今は少しだけ泣く。




お風呂から出てパジャマを着てノシュカトさんの部屋を覗く。

キツネさん達がかごの中に収まっている……こんな商品があったら言い値で買ってしまう。


ベッドの横に椅子を寄せて座る。


ノシュカトさんはどうして目を覚まさないのかな。


「起きたら可愛いモフモフがいますよ――」


キツネさん達がベッドに登って来た。


「フフフッ 早く起きて欲しいねぇ」


どさくさに紛れて撫でちゃえ。 すっごいモッフモフ!


ついでにノシュカトさんの頭も撫でてみる。


それからノシュカトさんの手を取り、私が小さい頃風邪を引いた時なんかに母がよく歌ってくれた何だか安心する歌を歌う。


また彼の頭を撫でてそっとつぶやく。


「大丈夫 大丈夫。起きても痛くないし1人じゃないよ」



前にもこんなことがあったような気がしたけれど、眠気に負けて思考が飛ぶ。


少しだけのつもりでベッドに上半身を預けると、気持ちよく眠りについてしまった…………



※※※※※※※※※※※※



―――― ノシュカト ――――



 雨が降っている。


ここは暗くてジメジメしている。


目が覚めてしまったのか。幸せな夢だった。

出来れば目覚めたくはなかった。


もうどこも痛くはない。身体の感覚が無くなってしまったようだ。


フワフワと光の粒が空中を漂っている。


身体の感覚は無いのに、手が温かい。


フワリと包まれているような抱きしめられているような安心感がある。


自分がこんな孤独な死を迎えるとは思ってもみなかったが……死とはこんなにも優しいものなのか。


どこからか不思議な歌も聞こえて来て穏やかな気持ちになる。


いつの間にか僕の隣に女性が座っている。


誰だろう。


とても美しいけれどみたことがないくらい深い黒色をまとっていて……どこか人間離れした神秘的な雰囲気をしている。



歌が言葉に変わり何か言っている。


「起きたら可愛いモフモフがいますよ――」


モフモフ………………?


「フフフッ 早く起きて欲しいねぇ」


僕はまだ寝ているのか?


貴方は誰なんだ? どうしてこんなところにいる?


そう問いかけようとしても声が出ない。



もう痛いのも暗いのも1人なのも嫌なんだ。



「大丈夫 大丈夫。目が覚めても痛くないし1人じゃないよ」


本当に?


彼女の言葉を信じたい。


家族に会いたい……城のみんなに会いたい。


それに僕はまだ探したい植物がたくさんある。


特にリライを探し出して増やしたい。そして魔獣化した動物達を殺すのではなく、元の姿に戻せるようにしたい。


この考えは誰にも話していないし何にも記していない。


僕と同じような考えで更に実行出来る者が数日先に現れるか数百年先に現れるかわからない。


僕は死にたくない。


「貴方は死なないよ」


帰りたい。


「うん。一緒に帰ろう」


目が覚めても貴方に会えるだろうか。


「目が覚めたらたくさんお話をしよう。キツネさん達もいるんだよ」


あぁ。みんなに会いたい。


「だから、ほら」


彼女の手を取る。


光の粒が増えていき、目を開けていられない。


「起きるよ。私、お腹空いたから朝ごはんが食べたい」


思わず笑ってしまう。


それは急いで起きないとな。




僕は幸せな気分で目覚めた。


知らない部屋だったけれど、ベッドに上半身を預けて寝ている彼女が見えて安心する。


本当に居る。


僕の手を握ってくれている。


彼女が起こしてくれた。


美しい黒髪をすくい口付けをする。


ありがとう。


彼女の長いまつ毛が揺れる。


ゆっくりと瞬きをして、視線をこちらへ向ける。


ボンヤリとこちらを見ていた黒色の瞳に徐々に光が宿り、少し驚いた表情の彼女もようやく目が覚めたようだ。



「おはよう」



と、僕が言うと彼女のお腹が盛大に鳴った…………



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