45 冬華 ノヴァルト
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―――― 冬華 ――――
どうしてバルコニーで私の居場所がわかったのか聞いたのに…………
何か残念なコを見るような目をされた気がする。
…………なぜ。
また今度教えてくれるらしい。
たくさん泣いたらスッキリした。
ノバルトはお兄さんだからかな、包容力があって何か落ち着く。
それに……彼は「一を得て十を知る」みたいな察しがいいというかとても話しやすい。
ノシュカトさんの事をどう伝えるかはノバルトに任せることにした。
ノバルトは私に時間をくれた。
一緒に考えようと言ってくれた。
誰かが寄り添ってくれるというのはこんなにも心強いものなんだなぁ。
入れ直してくれた紅茶を飲んでそろそろ帰ろうかと思っていると、ノバルトが布に包まれた何かを持ってきた。
布を広げると……
「あっ! 私のヘアクリップ!」
お気に入りだったけど初めてこの世界に来た時、お城の屋根の上で壊れて飛んでいっちゃったヘアクリップ。
「やはりトウカのか。あの日トウカが消えるのをみた夜、庭に出て見るとみたことがないものが落ちていたからトウカの物かと思っていたがそうか。直そうと試みたが……まだこの通りだ。代わりにこちらを」
出されたものを手に取ると花の形をした綺麗な髪留めだった。
「わぁ……キレイ………………でも」
高そう……
「受け取ってほしい」
何かどうしても受け取って欲しそう……
「…………ありがとうございます。大切にしますね」
この世界にきて初めてプレゼントをもらった。ジワジワと心が温かくなり嬉しくなる。
「ありがとう」もう一度いい微笑むと……抱き締められた。
…………この世界の人達の距離感が掴めない。
「お礼を言うのはこちらだよ。ありがとう。また来てもらえるだろうか」
そうだった。ノシュカトさんの様子も知りたいよね。
「ノシュカトさんの様子を知らせにまた来ます」
ノバルトが困ったコを見るような目を向けてくる。
…………。
「それでは、帰ります」
窓を開ける。
濡れないように結界を張りフワリと浮かぶ。ノバルトからは姿も見えなくなっているはず。捕まえられたけど……
「トウカ、気を付けて」
「はい。また来ます」
※※※※※※※※※※※※
―――― ノヴァルト ――――
あの夜庭で拾ったものを見せるとやはりトウカの物だった。
壊れているようだったので直そうとした。
誰にも触らせたくなかったから私が……しかしみたことがない作りだったので手間取っている。
念のため代わりの物を用意しようと考えて買い物に出た。
城下町へは幼い頃から弟達と変装をしてよく行っていた。
しかし女性への贈り物を買うために行くのは初めてだった。
知らなかった。買い物がこんなに楽しいとは。
真珠色の肌に艶やかな黒髪を思い出しながら、似合いそうなものがたくさんあるのでいくつか買って選んでもらおうかとも考えたが、私が選んだ物を身に付けてほしいと思い、一つに決めた。
一輪花のデザインで真ん中に真珠が嵌め込んであるものにした。少し地味かと思ったがあの黒髪に一輪の花そして真珠がよく似合うと思った。
トウカに見せると気に入ってくれたようだが受け取ることは躊躇っている……
少し強引に受け取ってもらったが喜んでくれたようだ。
髪留めを見つめた顔が笑顔に変わり、こちらを向く。
とても嬉しそうにお礼を言われ、思わず抱きしめてしまった。
また来てくれるかと問うと
「ノシュカトさんの様子を知らせにまた来ます」
私に会いにと言って欲しかったが、また会えるなら今はそれでもかまわない。
彼女が帰ると言い、私の腕から離れていき窓を開ける。
雨はまだ降っている。一体どうやって帰るのだろう?
トウカが外へ出る直前、姿を消した。
よく見るとバルコニーにあのガラスのドームが見える。
気を付けてと言うと返事は私の背丈よりも高いところから帰って来た。
なるほど彼女は空も飛べるのか。
人の域を遥かに超える力だ……彼女は一体何者でどこから来たのだろう……いずれ話してくれるだろうか……
たとえ話してくれなくとも、彼女の帰る場所が私の元であって欲しいと願うのはおこがましい事だろうか。




