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私の覚悟さえ決まれば、ノシュカトさんをここまで連れてこられるけど……
どう連れてきてもどう説明すればいいのかわからない。
誰にも見られないようにベッドに寝かせておく事も出来るけれど……その後は?
私の事を黙っていてと言えばノバルトとノクトに嘘をつかせてしまう。
どうするにしろ私の存在を明かさないといけないのかな。
この先もこんなことを……私の事を私の都合で口止めして、たくさんの人に嘘をつかせてしまうのかと思うと……
それに私もそんな人付き合いしかできないといつかダメになってしまいそう。
でも私の魔法をみて受け入れてくれるのかどうかもわからない。
この国の宗教とかわからないけれど、国外追放とかもあるかも……最悪魔女狩りみたいなことになりかねない。
もう少しどうするか考える時間が欲しかった。
せっかく落ち着けると思った場所だけど、離れなくちゃいけないかな……熊さんも一緒に来てくれないかな……
考え込んでいると思っていたノバルトに視線を向けるとこちらをみていた。 顔が、いい。
目が合いジッと見つめ合う。
「………………………………」
「……私は、弟を見つけ、ケガを治してくれたトウカを信じるよ。城にいるどの名医にも治せなかっただろう右足をノシュカトは失わずに済んだ。目覚めさせる事が出来るのもおそらくトウカだろう」
「いいのですか?」
「ああ。トウカは自分の事をどう話すか迷っているようだし、こちらが無理に探したりしたら、ノシュカトを城に戻してどこかへ行ってしまいそうだ」
エスパーか。
「お互い少し時間が必要なようだし、とりあえず家族にはトウカの事は伏せてノシュカトの無事を知らせることにするよ。ノシュカトが無事なら捜索隊を危険にさらさずに済むしね」
「……ありがとうございます」
私にはとても都合がいいけど……
「お礼を言うのはこちらの方だよ。本当に、ありがとう。それから……ノシュカトが目覚めたら考えてみて欲しい事があるのだが」
やっぱり何かあるよね。
「私には……出来れば私達家族にはトウカの事を話してはくれないだろうか。トウカが望むなら家族のみで口外はしない。その力の事や不安な事があるのならば私達に力にならせてほしい。私達を頼って…………欲し……い………」
? どうしたのだろう?
「……すまない。泣かせるつもりはなかったのだが……」
「……え?」
頬に触ると濡れている。ポロポロと涙がこぼれる。
どうしよう止まらない。
「あ……ごめんなさい……」
どうしちゃったんだろう……ホームシックかな。
ノバルトが隣に座る。
「トウカが謝ることはない。私の方こそすまなかった」
ノバルトが涙を拭いて頭を撫でて抱きしめてくれる。
トクン トクン と心臓の音が聞こえる。
暖かい。気持ちが落ち着く…………私……寂しかったんだ。
この世界に1人。
三毛猫さんはずっと一緒に居てくれてるし、今は熊さんもキツネさん達も近くにいてくれるから気が付かなかった。
庭をキレイにしても家に部屋がたくさんあっても誰も来ることはない……と時々虚しく思う事はあったけど……
魔獣化してしまった動物達を浄化してあの激しい感情を受け止めて……この先ずっとこういう生活が続いていくのかな…………頭の片隅で 「ずっと1人で」 と思いながら。
こんなに寂しかったかぁ…………
ポロポロと溢れる涙は彼の服を濡らしていくけれど、ノバルトは私が泣き止むまで優しく抱きしめてくれていた。
突然こんなに泣かれて困っているだろうな……チラリと彼の顔を見上げると、優しい顔でこちらをみていた。
なんという破壊力……っ! 急に恥ずかしくなって顔が熱くなる。赤くなる顔を見られたくなくてまた彼の胸に顔を埋める。……が、これも恥ずかしい。
何してるんだろう……は、離れよう……。
ひざ掛けを握り顔まで持ってきて顔を隠しながらゆっくり離れる。
顔を上げられない。
「トウカ……トウカ、ゆっくり一緒に考えよう」
ノバルトの優しい声。また泣いちゃうからやめて。
でもコクリと頷く。
「ほら、紅茶を入れ直したから飲んでごらん。落ち着くから。王子の入れた紅茶はなかなか飲めないのだぞ」
急に子供っぽいことを言うから可笑しくて笑ってしまう。
「フフフッ……ノバルトは優しいね」
ありがとう、といい温かい紅茶を飲む。
飲み終わる頃にはノバルトのいう通りすっかり落ち着きを取り戻していた。




