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いつの間にか寝てしまったみたい。
彼はまだ寝ている。手が温かい。
外は暗くなりはじめている。熊さんはまだいるかな?
様子をみにいくと熊さんもいる。
雨はまだ降っているけれど結界があるから庭は濡れていない。
せっかくだから夜ごはんも外で食べよう。
東屋にご飯を運び、三毛猫さんと熊さんとキツネさん達と一緒に食べる。
「そろそろキレイな星空がみたいねぇ」
食後はまったりと過ごして、熊さんには今夜はここにいたら? と聞いたけれどやっぱり雨の中、自分のお家に帰って行った。
後片付けをしてみんなにクリーンをかけて家に入る。
三毛猫さんはお気に入りのキャットタワーのてっぺんに向かい、キツネさん達は彼の部屋に向かったのでノックをして少しだけドアを開けておく。
私はお風呂!
ゆっくりと浸かる。
さて、眠り続けている彼を私の家で預かっていることをどう伝えよう……ノクトに家は教えないと言ったけれど、弟がいるとなると迎えに行くと言い出しそうだし……
それにケガの事……本人が一番よくわかっていると思うけど、右足を失うようなケガだった。
それがキレイに傷痕も残らずに治ってしまったら…………
お父さん(国王様)お母さん(王妃様)に報告しちゃうよねきっと……息子の言うことだし信じちゃうよねきっと……
そしたら私を探し始めるよねきっと……
まだここに住み始めたばかりなのに……次の候補地も探していないのに……何より熊さんを置いて行けない。
それならば…………いっそのこと王家に後ろ楯になってもらうとか…………?
ノクトは約束を守ってくれているし、金髪のお兄さんもよくわからないけれど私の事を騒ぎ立てないでいてくれている気がする。
お尋ね者になっていないし、街へ行っても変な噂になっていないし。
王様と王妃様は全然わからない。お二人の人柄を知らなければいけない。
夜だけどまだ眠くないしお城に行ってみようかな。
バスローブを羽織り結界を張って姿を消す。
三毛猫さんにお城に行って来るね、と伝え飛んで行く。
雨は止まないなぁ。結界があるから濡れないけど。
お城に着いたけど、どうやって入ろう? 夜だし雨だしどこも閉めきっている。
フヨフヨお城の周りを回っていると、いくつか灯りのついている部屋を見つけた。
そっと窓に近寄ると、そこにはノクトとオリバーがいた。
知ってる顔に少し嬉しくなり声をかけたくなるけど今日は極秘できているから様子を伺うだけにする。
立ち聞きは良くないけど声が窓から漏れ聞こえてくる。
「明日も雨なら俺は1人でも探しにいくぞ」
ノクトの声だ。
「私も同じ気持ちです。ですがノヴァルト殿下の言うようにそれでノクト殿下がケガでもされたらノシュカト殿下が悲しみます」
それに…………とオリバーが続ける。
「わかっておられると思いますが、山が更にぬかるんでいる中ではやはり人数は必要でしょう」
「だがじっとしていられない! この雨の中もう4日だぞ!! 万が一ノシュカトに何かあったら俺はっ…………!」
彼はあの穴の中で2日間くらいあの状態だったのか……よく頑張っていたな……キツネさん達もあんなに必死だった訳だ。
ノクトが泣いている……
「すまない。情けないな。お前に八つ当たりしてしまった。だが今だけは許してくれ。とても落ち着いていられないのだ」
「ノクト殿下がここ数日皆の前では常に前向きで不安を押し殺していることは長い付き合いでわかります。特に王妃様のことは常に励まし、ご家族を不安にさせないよう振る舞われておられる。この部屋でくらい不安を吐き出して下さい。私はお側におります」
その後、BL的な展開になることはなく…………いや、期待していた訳ではなく……
それにしても………早く教えてあげたい。どうしよう。
一旦ノクトの部屋の窓から離れて別の窓へ向かう。
ここは……おそらく王様と王妃様のお部屋だ。
女性がノクトにそっくり。うちで寝ている彼も似ている気がする。
お母さん(王妃様)が泣いている。
可哀想なほどポロポロと……親子だもん……そうだよね。
彼は無事です。とすぐに伝えてあげたい……ごめんなさい……
もう少しだけ時間を下さい。
王様が誰かに呼ばれて部屋を出る。
代わりに使用人さんらしき女性が王妃様に寄り添う。
王妃様は使用人さんにもう休むと言っているようだ。
女性を下がらせて、一人ベッドで泣いている……なんだか物凄く悪い事をしているような気がしてきた…………
移動して別の窓に近づく。
使用人さん達が集まっている。
こういうところで主の評価はわかるものかもしれない。
「王妃様のご様子は……?」
「……泣いておられましたが……私が部屋に入るとすぐに休むからと……私にも早く休みなさいと……私……もう見ていられなくて…………っ……」
「殿下方もきっとこの雨で捜索に行けずもどかしい思いをされている筈なのに気丈に振る舞っておいでです」
「こんな状況なのに使用人に当たり散らす事もなく変わらず私達を家族のように大切に扱ってくださる…………前に働いていた貴族の屋敷では使用人を人として扱ってはくれなかった。不正が明るみになり主が没落後、路頭に迷う所だった我々使用人の再就職先を1人残らず紹介して頂いて、今は皆優しい主の元、楽しく働いている……恩返しがしたいのに……私達には一体何ができる……!?」
「……私達は私達のできる事を……いつも通りきっちりと仕事をして、皆様に気持ちよく過ごして頂きましょう。それから紅茶はなるべくリラックス効果のあるものに替えていきましょう」
どうやら王家は評判がいいみたいだしいい人そうだ。
何より何だか罪悪感がすごい…………




