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異世界転移の……説明なし!  作者: サイカ


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32 ノヴァルト


            32



 空から女神が降ってきたあの夜から、私は王族の極秘任務をこなす、影と呼ばれる者数名に依頼し人捜しを始めた。


説明できる特徴が黒髪黒目の美しい女性ということしかないが、この国では見たことがない程深い黒だったので、十分な手掛かりになるだろう。


彼女はこの国の何処かここからそう遠くはない場所にいる気がする。

あの珍しい色に美しい容姿だ、人目につけば噂になるだろう。

しばらく情報が無いようなら森や山の中を探した方がいいかもしれない。




今日の昼過ぎ、弟のノクトが魔獣討伐を終えカーティス領から戻った。

大型の魔獣と聞いていたのでもう数日かかるかと思ったが

すでに弱っていたらしくノクトが致命傷を与え、終わらせたらしい。


ノクトは剣の腕が立つので一撃でそれ以上苦しめないように終わらせることができる。

それ故いつも辛い役回りになってしまう。

申し訳なく思うがノクトもわかっていて引き受けてくれている。


今日の午後からは休むように言ってあるが、討伐隊員は休ませノクトは仕事をしているようだ。


私は幼い頃より人の機微には敏感でよく大人を驚かせたり嫌われたりしていた。

貴族は表向き笑顔で親しげに近づいてくるが、その実腹の探りあいや値踏みをしている。


それを悟られないようにしているのに私には解ってしまうのだ。


両親には素晴らしい才能だと言われ、言葉にするときは気を付けるようにと教えられた。


うんざりすることも多いが今回は少し違った。


ノクトが帰って来てから様子が少し変わったように思う。

それから騎士団長のオリバーもだ。


ノクトは何故か急ぎでもない仕事も早く終わらせて時間を作ろうとしているようだし、帰ってすぐに何処かへ手紙を出していた。


オリバーはいつも通りあの大きな身体を鍛えていたが、今まで話したこともなかった休みについて聞かれた。


何か変わった事はなかったか聞いてもどちらもないという。

他の者に聞いても特に何もなかったといい、二人ともいつもと変わらないらしい。


私には二人の雰囲気が柔らかくなったように感じるので悪い事ではなさそうだが、少し気になる。が、本人が話してくれるまで待とうと思う。



ノクトが討伐から戻り、森の安全を確認すると今度は末の弟のノシュカトが近衛兵7名と森へ向かった。

今回は山のふもとまで足を伸ばすようだ。


森へは何度か行って植物を採取しているが、やはりあまり人が足を踏み入れない山の方が希少な植物を見つけられると言うことらしい。


あまり危険を冒して欲しくはないが絶滅寸前の薬草などの栽培を成功させ増やすことで助かる者が大勢いる。


ノシュカトは小さい頃から恥ずかしがり屋で、お礼を言われても素っ気ない態度を取ってしまうことがよくあった。


だから、自分の興味のあることをやっているだけだと素っ気なくされても、嬉しく思っていることや照れている事が私にはわかる。

小さな頃から変わらないその表情は大人になった今でも可愛く思えてしまう。


大型の魔獣が居なくなったとはいえ、森や山に潜む危険はそれだけではない。

討伐隊からの報告では、小型の魔獣も森から姿を消したと

いうことだが、これも初めての事だ。

ノシュカトにはその事も伝え、くれぐれも気を付けるようにと言ってある。



どうもあの女神が現れてから今までにない変化が起こり始めているような気がする。


良いことの前触れかそれとも…………


どちらでも構わない。


彼女に会いたいのだ。



幼い頃、原因不明の熱に浮かされ何日も苦しんでいた事があった。

同じ時期に大型の魔獣が立て続けに現れ父の仕事は多忙を極め、母はそんな父を支え、更に幼い弟2人の世話もあり使用人に助けられ何とか日々を過ごしている状況だった。


そんな中、私が熱で寝込んでしまったので母は朝私の様子をみに来て、「一緒に居られなくてごめんね」とあやまる日々が続いた。


本当は寂しかったけれど、私は大丈夫だからとベッドから母を見送っていた。



その頃、夜毎現れ聞いたことのない子守唄を歌ってくれた女性がいた。


いつも夜に現れ、ベッドで一緒に寝ていたはずなのにいつの間にかいなくなっていた。


家族や使用人たちに聞いても、そんな女性はいないと言われ、熱のせいで幻覚を見ているとか夢だとか、最後はいよいよ私が死んでしまうのではないかと母が泣くので

その女性について聞くことはやめた。


熱のせいで食事も取れず、夜も眠れず衰弱していく私の頭を撫で落ち着いた声で歌い、手を握り大丈夫だと言ってくれた。


不思議と彼女が現れるようになってからは夜は眠れるようになり、少しずつ体力も回復して食事も取れるようになっていた。


熱も下がり、食事も取れるようになってくるといつの間にか現れなくなった彼女。


その時の女性にそっくりなのだ。

というか彼女だという確信がある。


どういう訳か当時の姿そのままだったが、空から降ってくるくらいだ。彼女ならあり得るだろう。


何よりあの香り。

あの花のような甘い香りと森のような爽やかな空気。

彼女が現れる夜、私の部屋を満たした香りだ。



だから、彼女に会って確かめたい。




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