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教会を出てすぐノクトの馬に乗せられた。
乗る前に馬の名前をきくとメイヒアだと教えてくれた。
オリバーの馬のグリアより一回り小さいが、それでも元の世界の馬よりは大きい。
乗せてもらうね、お願いね、となで回しながら頼むと甘えてきて可愛い。
昨日の今日で馬に乗った時の距離感を忘れていた。あたふたしてしまって恥ずかしい……
とりあえずあの小高い丘に行きたいといい連れていってもらう。
昨日オリバーと夕飯を食べた場所……2日続けて来ることになるとは……
今日も天気が良く風が気持ちいい。
メイヒアにありがとうとお礼をいいながら撫でると、私の肩に顔を乗せて甘えてくる。甘えかたが可愛い。
ここに着くまでの間、いろいろ考えた。
私はこの世界の事を知らない。
ノクトは王族なのに得体の知れない私の事をおそらくまだ誰にも話していない。
すでにいろいろ見られているけど、私の事を話す代わりにこの世界の事を教えてもらおうと思う。
「私の事をお話します。その代わり私の知りたいことも教えて頂けますか、ノクト殿下」
「……いいだろう。俺の答えられる範囲でなら答えよう。それから二人の時は敬称はいらない」
私も全てを話すつもりはないので期待通りの答えでよかった。
「私は、私と三毛猫さんはこの世界とは異なる世界から来ました。どうやって来たのかはわかりません。気が付いたらこの世界に来ていたので。湖でノクトに会った時、初めてこの世界の人と話をしました」
ノクトは少し驚いた表情を見せた後は黙って聞いていたが
「トーカはあの湖の上を舞っていた。それから大型の魔獣を消していた。その後、トーカも私の前から消えた。あの力は何だ? トーカの世界では皆持っている力か?」
「魔獣もこの力も元の世界には無いものです。この世界に来てから使えるようになった力なので詳しくは私にもわかりません。この世界には魔法のような力はないのですか?」
「魔法は俺が知る限りないな。物語の中でならあるが……トーカにもわからないことが多いのだな。……元の世界に帰る方法はあるのか?」
「それもわかりません。この世界に魔法があるならもしかして……とは思いましたが」
「そうか……」
「大型の魔獣が消えた時、トーカは何をしたのだ」
「ただ……とても苦しんでいたので救いたいと思っただけです」
「我々が魔獣を討伐する際は剣を使い致命傷を与えなければならないが、魔獣は最後まで苦しみの中終わる。トーカが終わらせたあの魔獣は最後救われたように見えた。……貴方も魔獣の苦しみがわかるのだな」
「……彼らが魔獣化するのは人間のせいだというのは本当ですか」
「……あぁ。密猟者がいるのだ。厳しく取り締まり、かなり数は減ったが後を断たない」
貴族や金持ち達が欲しがる動物の親を動けなくなるまで傷つけたり殺したりして赤ちゃんや子供たちを奪い、金に変えるらしい。
「…………」
「トーカはどこかに住む所はあるのか。ないのなら俺が用意するが」
「ありがとうございます。家はあるので大丈夫です」
「場所を聞いても?」
「それはまだ……教えられません」
「そうか。では、トーカに会いたいときはどうすればいい?」
どうしよう? 会いたいとき?
「……教会に手紙を送ってください。時々行って確認しますので……」
「わかった。そうしよう。今回はこの街の近くで大型魔獣が目撃され、討伐のために王都からきたのだが、すでにトーカが救ってくれている。だが、大型魔獣がもういないと皆は知らない」
確かに、街の人にも目撃されているなら不安も大きいだろう。
「トーカのことはまだ誰にも話してはいないが、やはり話しては欲しくないか」
ちゃんと確認してくれている。
「……はい。まだこの世界の事を知らないので話さないで欲しいです」
「では、今回の大型魔獣は私が討伐したことにしていいだろうか。魔獣がもういないとわかれば街の住人も安心するし、騎士団も納得して王都に帰れるだろう」
嘘をつかせてしまってごめんなさい。
「それでお願いします」
「では、そうさせてもらう。トーカ、あの魔獣化してしまった熊を救ってくれて、ありがとう」
……なによ急に………照れるじゃない……でも……ノクトも約束を守ってくれてありがとう。
「あのコのためにしたことなので……」
「これからまた森へいき討伐対象を探す予定だったが、皆に説明をして、討伐の任務を終了とする。我々は明日、王都へ帰るがまた話をする時間を設けよう」
日が傾いてきている。
話はまたできるし私もお家に帰ってご馳走を作らなければ。
ノクトが私の髪のベールを外す。
フワリと髪が風になびく。
「隠すのはもったいないな。湖では黒かったように思うが……」
色を元に戻す。
「驚いたな。そんなことまでできるのか」
「ノクトが私の髪や顔立ちはあまり見かけないと言っていたので……極端には変えられないけど茶色くらいにはできます」
「そうか、いい心掛けだ。トーカの能力があれば滅多なことにはならないと思うが、珍しい見目にかわりはないからな。人攫いには十分注意するのだぞ」
「はい。ありがとうございます。ノクトも気を付けて帰ってください」
「あぁ。ありがとう。家まで送って行きたいところだが……」
「ここで大丈夫です」
「そうか。では、手紙を送る。また会おう」
そう言ってノクトはメイヒアに跨がり街へ帰って行く。
足長いなぁ――
さて、私もお家に帰ろう。




